Attack On Titan


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ラブソングをキミに


the sorrow of parting 6


「…すっかり暗くなっちゃったね。」


リコちゃんと、気が済むまで泣き明かしたら、辺りはもう、すっかり夜の闇に包まれていた…。


「今日中に帰ってくるように言われたんだけどなぁ!」


リコちゃんは泣き明かし、瞼を少し、腫らしていた。
…きっと、私と同じ顔をしているんだと思う。


「リヴァイさんに言われたの?」
「あぁ!あのチビわざっわざうちにやってきて、」


泣くだけ泣いたら、どんな状況下でも、なんだか笑えてくるから不思議だ。


「ねぇ、リコちゃん。」
「んー?」
「…もし、今巨人が現れたら、どうする?」


今、ローゼ内は厳戒態勢が敷かれ、いつどこに巨人が現れるのか、誰にもわからない状況となっている。


「そうだなー、ただ食われてやるのは嫌だけど、」
「けど?」
「…イアン似の巨人になら、食われてやってもいいかもな。」


ポツリ、と、リコちゃんは夜空を見ながら呟いた。


「イアンさん似なら、すっごい大きい気がする。」
「そりゃー、お前。ただでさえデカい奴だったからな。もしアイツが巨人になったらそれこそ30メートル級はあるだろうな。」
「えー?」
「お前は?」
「うん?」
「…もし、今、巨人が現れたら、どうする?」


廃墟の壁に持たれ掛かりながら、私を見遣りリコちゃんが言った。


「どう、する、かなぁ…。」
「あぁ、でもお前はアレか。」
「うん?」
「あのクソチビがすっげぇ勢いで助けに来そう!」


やれやれ、とでも言うように大げさに肩を竦めながらリコちゃんは言った。


「…そ、んな、こと、」
「お前はわかってないねぇ…。あのチビ、お前のためならなんだってすると思うよ?」
「………」
「現に私に『頼みがある』なんて言って来たくらいだし!」


信じられるか?と、リコちゃんはリヴァイさんが来た時のことを話だした。


「ねぇ、リコちゃん。」
「んー?」
「…もし、」
「もし?」
「…本当に、ラガコ村の人が今回の巨人だったのなら、」
「…」
「私もいつか、巨人化するのかもしれないなぁ、って、思うんだけど、」


それまでどこか冗談まじりに笑いながら話していたリコちゃんだけど、すごく真剣な顔で、私を見てきた。


「もし、私が巨人になったら…、その時は、リコちゃんが私を殺しに来てね。」
「…」
「酷いことお願いしてるとは思うけど…、リコちゃん以外は、ちょっと嫌だなぁ、って…。」
「……」
「リヴァイさんに頼めば、きっと確実。…でも、それだけは、したくない。」
「………」
「本当にラガコ村の人が巨人化したかどうか、なんて、わからないんだけど、ね…。」


本当に、ラガコ村の人が巨人化したと言うなら…。
何が原因で、何が…巨人化する引き金になったのか…。
それがわかるまでは、いつ、誰が、どうなるのかなんて…、誰にも、わからないことだ。


「仕方ないなぁ!」
「え?」
「もしお前が巨人になって人を襲うようになったら、その時は私が一撃で項を削ぎ落としてやるよ。」
「…ありがとう、リコちゃん。」


これでも駐屯兵団南部防衛線の精鋭だからな、と、リコちゃんは笑いながら言った。
それから少し、くだらない話をして…。
夜空にうっすらと、光が差してきた頃、トロストに向けて馬を走らせた。


「リコちゃんありがとう。」
「…いいや、」
「うん?」
「それはあのチビに言ってやりな。なんだかんだで、お前のこと、心配してる。」
「………」
「じゃあ、またな。」


調査兵団宿舎まで私を送り届けたリコちゃんは、片手をあげて馬を走らせ去って行った。


ーお前はわかってないねぇ…。あのチビ、お前のためならなんだってすると思うよ?ー


今はまだ、朝の早い時間だと言うのはある。
だけど、それ以上に、静かで、重い廊下を、1人歩いていた。
自室のドアを開けると、


「…リヴァイさん…」


ソファで横になっている、リヴァイさんが目に飛び込んできた。
…これから私たち壁内の人類は、きっと、大きな混乱に陥る。
巨人が現れ、再び人類の活動領域を放棄する危機が迫るとなれば、壁内ではきっと…人同士の争いが始まる。
飢えて死ぬか、奪って生きるか…。
「人として」生きるために、同じ人間を、死に貶めるような行為が始まる…。
その中で私たち調査兵団は、人類の活動領域を守るためにも、鍵となるエレン、そしてヒストリアを死守しなければならない。


ーあのチビ、お前のためならなんだってすると思うよ?ー


「リヴァイさん、そんなところで寝ていたら、風邪ひきます。」
「…」
「みんなが起き出すまでまだ少し時間があるので、ベッドで寝てください。」


私の声に、リヴァイさんはゆっくりと目を開けた。


「…どこ行く気だ?」


リヴァイさんが体を起こしたのを確認して、ドアに向き直った時、そう言葉が響いてきた。


「ナナバさんの部屋に。」
「あ?お前も寝てねぇんだろ?ここで寝ればいいじゃねぇか。」
「いえ…。もうそこでは寝ません。」
「は?なんで?」


リヴァイさんは、少し不機嫌なように見える。
それはそうだろう…。
ローゼに巨人が現れたあの日から、この人はきっと、ろくに寝ずにいるのだろうから…。
そんな人に、こんなこと言うのは、間違ってる。
でも…。
今を逃したら、きっと言えない。
…これから私たち壁内の人類は、きっと、大きな混乱に陥る。
人類はこれから迫られることになるだろう。
飢えて死ぬか、奪って生きるか。
その中で私たち調査兵団は、人類の希望であるエレン、そしてヒストリアを死守しなければならない。


ーあのチビ、お前のためならなんだってすると思うよ?ー


ミケさんがいなくなり、エルヴィンさんがあの状態ならば、その陣頭指揮は間違いなくリヴァイさんがとることになる。
…こんなところで、立ち止まるわけには…私がこの人の、重荷になるわけには、いかない。
誰1人の死も、無意味なものにしないためにも…。


「リヴァイさん、」
「なんだ?」
「もう、終わりにしましょう。」


私のその言葉に、リヴァイさんが少しだけ、目を見開いた。



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bkm

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