Attack On Titan


≫Clap ≫Top

ラブソングをキミに


the sorrow of parting 4


「今回、ローゼ内に現れた巨人は、ラガコ村の住民である可能性がある。」
「………どう、いう、ことです、か?」


ハンジさんの言葉は、何を指し示しているのか、一瞬、理解することが出来なかった。


「さっきも言ったけど、これはあくまで仮説中の仮説。…でも、ピクシス司令の知るところではある、仮説だ。」


ハンジさんが、申し訳なさそうに言葉を続ける。
…ピクシス司令が知る、と言うのであれば、それはもう、仮説の中においても、証拠がないだけで、可能性としては、高いものなのではないかと、思う。


「まだラガコ村に検証に行けていないからなんとも言えないんだけど…。」
「…」
「巨人が発生し、村に現在捉えられた巨人がいることから、ラガコ村で何かしら巨人関係での問題があったのは間違いない。そのことで住民が逃げた可能性もあるけど、馬に乗らず逃げるだなんて生存の可能性を狭めるようなものだ。いくら動揺していたとは言え、村全体でそんなこと、あり得ないんじゃないかって思う。」
「……」
「これがどういうことなのか、聴取出来る人がいないからなんとも言えないけど…。当事者であるラガコ村の住民の消息が掴めていないんだよ。未だに誰1人ね。」
「……」
「そして報告によると、『家の内側から何かが爆発したような破壊のされ方』をしているらしい。巨人が襲ってきたなら、普通外側から、破壊されているはずだろう?」
「………」
「…さっきも言ったけど、これはあくまで証拠のない仮説。だけどそう言う仮説が出ている、と言うことは、あなたにも知っておいてもらいたい。」


ハンジさんの言葉は、耳を掠めただけで、頭には、残らなかった気がする。


「ラガコ村に行くことは、」
「駄目だ。」


私が言いかけた時、リヴァイさんが話に入ってきた。


「ハンジの班の調査検証が済むまで、村周辺は立ち入り禁止にしてある。見張りの兵士以外無闇に近づくなとのことだ。」


それはリヴァイさんの決定、と言うより、上からの命令、と言う口調で…。
つまり、ピクシス司令のような、例え他兵団であっても、リヴァイさんから見ても上官に当たる兵士からの命令である可能性がある。
………どんどんと、足場がなくなって行くような、そんな感覚に陥った。


「あの、」
「まだ何かあるのか?」


私は、…私の心は、周囲を高い高い、壁に囲まれ、身動きが取れずにいる。


「私、は、ここにいても、大して役には、たちません。」
「…」
「なら、少しだけでいいんです。ウトガルドに行く、許可をください。」
「ウトガルドだと?」
「はい。少し…、忘れ物を、してきたようなので。」


そしてその壁は、どんどんどんどん、私に向かって迫ってくるような感覚に陥った。


「それも駄目だな。今現在どの兵団兵士も1人でローゼ内を歩くことを禁止している。何忘れて来たのか知らねぇが、お前の他に最低でももう1人、ウトガルドに行かせてやれるような人材、うちには残ってねぇよ。」
「………そう、です、よね……」
「行きたきゃもう少し落ち着いてからにしろ。」
「…………」
「話は済んだか?」
「………はい。」
「おい、ハンジ。これから、」


リヴァイさんはその後、ハンジさんと話しながら、忙しそうに食堂を出て行った。




「じゃあそっちはお前に任せたぞ。」
「あぁ、わかってる。……話が一段落したから言うけど、」
「あ?」
「あなたもう少し、気を遣ってあげよう、って思いは、ないの?」
「………」
「ラガコ村のこともあるし…、何よりコニーの話だと、フィーナは目の前で見てたんだよ。…ナナバやゲルガーが食い殺されるところを…。」
「………」
「ミケも未だ戻らない、ってことは…、そういうことだろうし…。あなたらしいと言えば聞こえはいいけど、せめてもう少し、」
「おい、ハンジ。」
「うん?」
「お喋りはそれで終わりか?俺は忙しいんだ。それ以外のネタがねぇならもう行くからな。」
「あ、ちょっ、………ハァ…」



「リヴァイ兵長!どうされたんです?」
「少し人を、………あぁ、いたか。おい!リコ!」
「……ここは任せて、お前たちはあっちを見張って。」
「「はっ!」」
「…………何?」
「お前暇だろう?」
「…は?」
「お前に頼みがある。難しいことじゃない。ウトガルドに行って帰ってくるだけのことだ。」
「はぁ!?なんでそんなこと私に頼むんだよ!その意味がまずわからないだろ!?」
「別に何かしに行くわけじゃない。行って帰って来るだけでいい。半日あれば十分だろ。頼めるよな?」
「お前ねぇ、今うちが24時間体制でローゼ内の各地を見張りしてるのわかって言ってるよな!?ウトガルドって報告があった『あの』ウトガルドのことだよな?そんな廃墟跡に行けるような時間誰にあるって」
「今回のローゼ内に現れた巨人だが、」
「おい、人の話を聞けって、」
「ラガコ村の住民じゃねぇかという馬鹿げた仮説が出ている。」
「……え?」
「一部の兵士しか知らねぇ情報だがな。」
「…」
「その話を聞いた直後にウトガルドに行きたいと言い出した。」
「……」
「だが俺にはそんな時間ねぇし、かと言ってこの状況の中で1人で行かせるわけにはいかねぇだろ。」
「………」
「適任者はお前しかいない。あのじぃさんには俺から言っておく。頼めるか?」
「……お前から見て『その可能性』はあるのか?」
「…さぁな。俺にはハンジの頭がイカレたとしか思えん。いや、元々イカレていたがな。」
「…」
「だが、だからと言って全てを否定するだけの根拠もない。」
「え?」
「昨日まで『普通』に同じ釜のメシ食っていた奴らが次々に巨人化出来ると言う事実までは判明してる。ならば村ごと巨人化するなど言われても、一概に否定は出来ないだろうが。」
「……」
「それに壁のどこにも、穴が開いたような場所はない。ならば内部から発生したと考えるのは、妥当と言えば、妥当だ。」
「………怪我は?どうなんだ?」
「医者の話だと左腕が上がらんらしいな。足も少し引きずってるようだ。当面は立体機動を用いて何かするなど無理な話だ。」
「司令にはちゃんと話を通してくれるんだろうね?」
「あぁ。この後会うからな。」
「じゃあ早ければ明日にでも、」
「今からだ。」
「…………は?」
「今から行け。兵舎に寄って合流した後、壁の上から回り込んで行けば今日中に行って帰って来れるだろう。」
「……私一応班長なんだけど」
「だからそこらへんは俺からじぃさんに言っておくと言ってるだろうが。さっさと行け。」
「(このクソチビッ……!)」



「リヴァイ兵長、いらっしゃったんですか。」
「あぁ。じぃさんは?」
「司令ならあちらに、」
「おぉ、どうした?エルヴィンがついに力尽きたか?」
「笑えねぇな。酒が足りねぇんじゃねぇか?」
「この状況で飲んでる暇あるかい。…で?なんじゃ?何か用なんじゃろう?」
「あぁ…。トロストで防衛に当たってる、リコ・プレツェンスカだが、」
「リコ…あぁ!あのメガネの、」
「今日1日、任務に穴を開ける。」
「うん?何かあったのか?」
「……………クソが詰まってうちの兵舎に駆け込んだ。出し切るまで出て来ねぇんじゃねぇか?」
「「(絶対違うだろう…)」」





「ニックさん、どうですか?」
「あぁ、問題ありません。」


私は壁に追い込まれる。
高い高い、壁に追い込まれ、身動きが、取れなくなってゆく…。

.

prev next


bkm

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -