Attack On Titan


≫Clap ≫Top

ラブソングをキミに


the sorrow of parting 3


「なんだか明け方頃から周囲が騒がしかったですね…。」


私たちの兵舎に、エレン・イェーガー奪還の報せが舞い込んだのは、黎明の時刻。


「エルヴィン団長が、負傷して意識不明の重体なんだそうです。」


エレン奪還の報せと同時に、団長重体の報せが舞い込んだ。
…この窮地に、エルヴィン団長を欠くわけにはいかない。
救護班が、皆必死に今もエルヴィン団長の治療に当たっていると思う。
巨人化出来る人間が次々に現れた104期も、ミカサが怪我をしたようだけど、コニー始め、…巨人化出来ない子たちは全員、帰還出来たそうだ。


「…どのくらいの兵士が、殉職されたんでしょうか…。」


朝食を部屋に運んだ時、ニックさんはポツリ、と、呟いた。


「私にはわかりません。」
「…」
「でも、」
「でも?」
「皆その覚悟があり、兵士としての使命を全うすることに命を燃やした結果だと思います。」


だから、悲しんではいけない。
あれだけ必死に、それこそ人生の、全てを捧げた「彼ら」の、「彼女ら」の死を悲しむことは、その生を、否定してしまうような気すら、してくるのは、もしかしたら既に、私の心は麻痺しているからなのかもしれない…。


「…そうですか…。」


ニックさんは多くは語らない。
ご馳走様でした、と言われ、綺麗に平らげたお皿の乗ったトレイを片づけた。


「フィーナ!」
「…モブリットさん。今ニックさんにご飯を、」
「集合だ。」
「え?」
「兵長と分隊長が今後の方針を話す。」


トレイを持って食堂に向かっていたら、モブリットさんに出くわした。
リヴァイさんも、ハンジさんも、どこに行っていたのか…、少なくともリヴァイさんは、自室には、戻ってこなかった。


「全員来たか。エルヴィンが目覚ますまでの間、俺とハンジで兵団の方針を決める。ハンジ、」


私たちが食堂に入ると、すぐにリヴァイさんが話始め、その言葉を引き継ぐように、ハンジさんを促した。


「みんなも聞いている通り、一昨日ローゼ内に現れた巨人は、」


2人は恐らく、一睡もしていないのか、酷い顔をしていた。
それでも「兵長」と「分隊長」として、今、ここにいる。


「今はこれ以上のことは言えないけど、とにかくエレンと、104期クリスタ・レンズ、本名ヒストリア・レイスを我々は全力で守る必要がある。彼らはリヴァイを中心に、しばらくここから離れ、身を隠してもらうことになった。」
「それはリヴァイ班を作るってことですか?」
「あぁ、それは」
「俺の班員はもう決めた。生き残った104期の連中で構成する。奴ら全員すでに隠れ家に連れていってある。俺たちの指示がない限り、こっちには来ない。お前たちもアイツ等は『いないもの』だと思え。」


質問を投げかけた兵士に対して、リヴァイさんは淡々と言う。
新生リヴァイ班は既に構成され、動き出している、と。


「だからってここに残っている兵士に仕事がないわけじゃない。今後我々は、」


ハンジさんが具体的に兵士の名を挙げ、指示を飛ばす。
そして一通り指示を出し終えた後、各々仕事を始めるべく、解散となった。
けど…。


「あの、」


そこに私の名前はなかった。


「私は何をすれば?」
「お前はニックのお守りだ。ここにいろ。」
「………」


この時に何を思ったのか…。
具体的にはわからない。
ただ「あぁ、やっぱり私は…」そんなことを、思っていた。


「お前、左腕が上がらないらしいじゃないか。」
「…」
「足は足で引きずってやがるし。今の状態じゃ『使えない』ニックのお守りでもして、早く怪我を治せ。」


私の思いを知ってか知らずか、リヴァイさんがそう言ってきた。
握り締めた拳に、深く爪が食い込んでいった…。


「フィーナ、」


そんな私に、ハンジさんが声をかけてきた。


「あなたの『耳』は、私たちにとっては本当に貴重な戦力だ。少しでも早く怪我を治して復帰してもらいたい。」


リヴァイさんの言葉に対するフォローを入れようとするハンジさんに、苦笑いが出た。


「……怪我をして動けない今のあなたに、これは言うべきじゃないかもしれないけど、」


珍しくハンジさんが言い淀みながら、言葉を繋ぐ。


「あくまでこれは仮説中の仮説。とんでも話の1つだよ。…けど、あなたにはその仮説を知っておく、権利があると思う。」


見上げたハンジさんは、酷く、言いにくそうな顔をした後で、スーっと、息を吸い込んだ。


「今回、ローゼ内に現れた巨人は、ラガコ村の住民である可能性がある。」


私たちの兵舎に、エレン奪還の報せが舞い込んだのは、黎明の時刻。
そう、それは、…世界が最も暗くなる、夜明け前のことだった。

.

prev next


bkm

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -