Attack On Titan


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ラブソングをキミに


the sorrow of parting 2


「フィーナ!目が覚めたのか!」


兵舎に戻ると、モブリットさんに出迎えられた。


「ここに来るように言われたんですが…。」
「あぁ!お前がいるなら助かる。」


こっちに来てくれ、と、モブリットさんに背中を押され、部屋の中に通された。


「ニック、紹介しよう、フィーナだ。フィーナ、ニックだ。」


部屋の中には、どう見てもただのおじさん、にしか見えない人が立っていた。


「フィーナ、これは他言無用だが、ニックは…いろいろ事情があって、ちょっと世間から身を隠さなければいけないんだ。そこで、今うちの兵舎で身柄を預かることになった。表向きは分隊長の知人で、家を失くしたことになっているがな。」
「身を隠す、です、か…?」
「あぁ。この兵舎へなんとか連れて来れたはいいが、お前もわかる通り、今こういう状況で、人手が足りない。別につきっきりじゃなくていいんだが、ニックに不便がないように、……あまり人目につかないよう、お前が世話をしてやってほしい。」


俺は分隊長と合流しなきゃなんだ、と、モブリットさんは言った。
モブリットさんの言葉。
…それはつまり、遠まわしに私に前線から外れろ、と言っているようなもので…。


「それがリヴァイさんの『命令』ですか?」
「…正確には、その間に怪我を治しておくように、だけどな。」


頼むよ、と、言って、モブリットさんは慌ただしく部屋を出て行った。
……リヴァイさんは、結局のところ……。


「すみません、怪我をされているなら、あなたの自室で休んでいてください。」


『ニック』と紹介された、書面上椅子職人のおじさんは、私にそう言ってきた。
………世間から身を隠さなければいけないような人、職業はもとより、これが本名かどうかも怪しいと思う。


「私の自室はここの上の階です。…でも、あまり人目につかないようにした方がいいなら、数時間に1度、私からこの部屋に来た方がいいでしょうか?」
「あぁ…、そうですね、そうしていただけると…。」


ニックさんとの話し合いの結果、3時間に1度、この部屋を訪れると言うことで話がまとまった(ずっといても、共通の話題がない上、包帯を巻いている私にいてほしくないようだったし)
また3時間後に来る、と言い、ニックさんと別れ自室のある…幹部階へと向かった。
今はみんな出払っているせいか…、余計静かだ。
自室に向かう前に、フッ、と、足が止まった。


−兵舎戻ったら、私の部屋のチェストの1番下の引き出しに入ってる奴見てよ。アレ、全部あなたにあげる−


そこはニックさんの部屋の真上、…ナナバさんがいた部屋だ…。


コンコン


誰もいないと分かっていても、つい癖で、ドアをノックした。
もちろん、返事なんてない。
ギィ、と、ドアを開け、すでに夜の闇と化している部屋に、持っていたランプの灯りをあてると、


「………」


淡い光が、部屋を映し出した。


−私のチェストの1番下の引き出しに入ってる奴見てよ−


その揺れる灯りの中、ナナバさんのチェストの、1番下の引き出し開けた。


「スケッチブック…?」


そのチェストの中には、数冊のスケッチブックがしまわれていた。
1冊取り出してページを捲ると、


「これ…、」


ミケさんの、ディータさんの、エルドさん、グンタさん、オルオ、ぺトラ…。
「私たち」の仲間の顔が、たくさん描かれていた。


「………」


ナナバさんに、こういう趣味があったなんて、知らなかった…。
1枚1枚、捲るページには、どれも生き生きしている、みんなの顔があって…。


「あ…」


何枚か、ページを捲った時。
一体いつ、見られていたのか…。
団服を着て、木に寄りかかり気持ちよさそうに昼寝している私の絵が、描かれていた。
その次のページには、眉間にシワを寄せ、機嫌が悪そうな顔をしているリヴァイさんと、それを困った顔で見ている私の絵があった。


「………」


…私はきっと、あの場所に、感情を、置き忘れてきたんじゃないかと思う…。


「………」


スー、っと、思い切り吸い込んだ息は、どこか湿り気を帯びていて…。
パタン、と、小さく音を立てて、ナナバさんのスケッチブックを、元の位置に戻した。

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bkm

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