Attack On Titan


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ラブソングをキミに


穿つ 6


「フィーナ!」
「…っ、」


突如、壁から飛んできた「何か」


「リーネ、さん、たちは?」
「…2人とも即死だった…。」


それは先ほど壁に向かい歩いて行った獣の巨人が投げつけた岩だった。
それにぶつかり、リーネさん、ヘニングさんが亡くなった。


「…腕をやられたか…。」


咄嗟に「自分だけ」避けてしまった私は、左腕の負傷のみで済んでしまっていた。


「巨人多数接近!!さっきの倍以上の数は…」


コニーの言葉に、外を見渡すと、


「………」


躊躇うことなくこの城跡を目指してくる巨人の群れが月明かりに照らされていた。


「リーネとヘニング、それからフィーナのガスとブレードを、私とゲルガーで分ける。」
「ナナバさん!私も一緒に」
「はっきり言って、その足や腕じゃ使えない。…かと言って新兵を他人の立体機動装置を用いてこの人数の巨人の群れの中に放り込めるほど、非情じゃない。私ら2人でやった方がいい。…だろう、ゲルガー?」
「…あぁ。俺たち2人で少しでも減らしてやるよ!おいフィーナ!リヴァイに会ったら、テメェ、いつ俺に酒寄越すんだ、もう2年も経ってんだから1番高くて美味ぇ酒持って来い、って言っとけよ?」
「ゲルガーさん!?」
「…ねぇ、フィーナ。兵舎戻ったら、私の部屋のチェストの1番下の引き出しに入ってる奴見てよ。アレ、全部あなたにあげる。」
「ナナバさんっ!!」


2人はそれだけ言うと、塔から飛び降りた。
…巨人の群れの中で、「兵士」としての勤めを全うするために…。


「…っ、」


飛び交う2人の姿が、月明かりに照らされる。
…ブレードは、全て2人が持っていった。
私は無能だ。
立体機動装置だけでは、戦えない。
この残酷な世界の、全ての「音」が、消えた気がした。
2人の姿を目に焼けつける。
引きちぎられ、滴り落ちた赤い赤い、血の一滴までも…。


「あぁ…、やられた…」


その言葉に、音のない世界に、音が響き渡った。


−…フィーナ……兵士が、泣くことは、許され、ねぇ…−


「みんな、聞いて。」


大きく息を吸い込んだ。


「夜明けまで、恐らく1時間もない。本来の巨人の力が活性化する時間になる。」
「…」
「でも必ず、ハンジ分隊長率いる兵団の本隊が壁を見渡すことの出来るこの城跡に到着するはずよ。それまでなんとかあなたたちは持ち堪えなさい。」
「…え?姉ちゃんは?」
「例え1人しか生き残らなかったとしても、必ず『誰か』は生き残り、ハンジ分隊長、そしてエルヴィン団長に今日のことを伝えて。」
「ち、ちょっ、何言い出すんだよ!もう武器も何にもねぇじゃねぇかっ!」
「…コニー、」
「何するつもりか知らねぇけど、今の俺たちじゃ助けが来るまで」
「コニー・スプリンガーッ!!」


私の言葉に、コニーはビクッと背筋を伸ばした。


「…巨人が今もこの塔に向かって体をぶつけてきているのがわかるでしょう?この塔は、そう長くは持たない。なら『誰か』が少しでも巨人の注意を引くために飛び出した方がいい。だけど残りのガスは少ない。少量のガスで、より長く注意を引きつけるのは、あなたたちじゃ無理。」
「…姉ちゃん、」
「全滅したくなかったら、必死に考えなさい。その頭で。…そして、必ず1人は生き残って団長にここでの出来事を伝えて。」
「姉ちゃんっ!!」


武器は、先端が折れたブレードが1本、そしてガスはもう、半分も残っていない。
…それでも…。
「今」すべき最善のことを、するだけだ。
それが、調査兵団の、兵士としての姿なのだから…。
そこから先は、よく覚えていない。
巨人を討伐したような気もするし、ただ巨人の気を引きつけるためだけに、飛び回っていたような気もする。
どのくらい、そうしていたのかはわからない。
ガスももう、尽きた音が聞こえた瞬間、


「姉ちゃんっ!!こっちだっ!!!」


何故か、巨人にしがみついているコニーが、私に向かって手を伸ばし、その手を取ったところで、私の意識はなくなった。

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