Attack On Titan


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ラブソングをキミに


穿つ 5


「…な、にか…、」
「うん?」
「何か、聞こえません?」


それから交替で来たリーネさんと見張りを代わり、みんなが待機している場所に戻り、壁に寄りかかって、ウトウトとし始めていた時だった。


「…何かって何が?」
「……あり得ないけど、巨人が、それも1体や2体じゃない数の、足音が…」
「え?」
「全員起きろっ!!!」


その違和感に、隣にいたナナバさんに声をかけたら、屋上からリーネさんが大声で叫んできた。


「屋上に来てくれっ!!全員すぐにだっ!!!」


その言葉にその場にいた全員が飛び起きて屋上に向かうと、


「月明かりが出てきて、気づいたら…、」


夜の闇の中でも悠然と闊歩する、巨人の姿が目に飛び込んできた。


「なんでだよ!?なんでまだ動いてんだっ!?日没からかなり時間が経ってるのに!!」


悲鳴に近い声で叫ぶゲルガーさん。
…目視出来るだけで、10体。
でも、重なり合っているこの「音」は、きっとそれ以上…。


「なんで、こんな…」


巨人は夜間、活動を停止する。
それは個体差があれど、どの巨人にも共通することのはずだ。
なのに、日没からこんなにも時間が経っているにも関わらず、比較的小さい巨人も、10メートル以上のものも、一斉にこの城に向かってきていた。


「おい…!あれ見ろよっ!!」


その時、コニーがある場所を指さした。


「でけぇ…、なんだアイツは…」


月明かりに照らされた先には、およそ17メートルはあるんじゃないか、って言うくらいの大きさの巨人…。
いや…、あの体毛は「人」のそれよりも、獣に近い…。
その巨人が壁の方へと歩いて行ったのを目で追っていた最中、


ドォォォォン!!!


私たちがいる塔が、大きく揺れた。
下を見ると比較的小さな巨人が、「人間」が使う入口から、塔の中に入って来ようとしていた。


「ふ、ざけんじゃねぇ…、ふざけんじゃねぇぞっ!酒も飲めねぇじゃねぇか俺は!!てめぇらのためによっ!!」
「ゲルガー!!」


その言葉と共に、ゲルガーさんが塔から飛び降りた。


「新兵、それとフィーナも。下がっているんだよ。ここからは立体機動装置の出番だ。」
「私も行きます!」
「姉ちゃん!?」
「…あんたは足を怪我してるんだろう。」
「補佐くらい出来ます!」
「……オーケー、じゃあフィーナはリーネたちの補佐に回って。」
「はいっ!」
「行くぞっ!!」


ナナバさんの掛け声と共に、ゲルガーさんに続き一斉に塔から飛び降りた。


「…っ、」


知性巨人である、女型を目の当たりにしたからだろうか…。
今この場にいる巨人はどれも動きが鈍く、短絡的な行動しかしないため、この人数ならば、あるいは全て討伐出来るんじゃないか。
そう思った時だった。


「遅かった…!扉がっ!もう壊されたっ!!」


下まで確認に降りたリーネさんが、そう告げてきた。
そのままリーネさんが104期に現状を告げに屋上へと上がった。
その間、ヘニングさんと一緒に塔を上手く使って、一体、また一体と、巨人を討伐していった。
屋上にいる104期に現状を告げ、戻ってきたリーネさんも加わり、討伐速度が少し、あがった気がした。


「これでデカイのはあらかたやったぞ…。」
「この塔とお陰だね。こんな好条件で戦えることなんて滅多にないよ。」
「あぁ…、なんとかしのげそうだな…。」


ゲルガーさんとナナバさんの声が耳を掠める。
その言葉を受け、リーネさんヘニングさんと共に新兵の様子を見に、屋上に上がった。
その時、


ヒュルルルルル ドーーーン!!!


どこから何かが飛んでくるような音、そして物凄い衝撃音が辺りに響いた。


「何だ!?」
「どこからっ!?」
「もう1度来ますっ!!」
「「っ!!?」」


私は無能だ。
ほんの少し、人よりも耳が良いだけで、生き残ってしまう。
この時、咄嗟に「我が身」だけを逃がしていなければ…。
この時、この2人と共に、壁の方から飛んできた「何か」によって一撃で死んでいたのなら、この後起こる悲劇と、そしてそれらの事実を知ることはなく、一瞬で、安らかに死ぬことが出来たんじゃないかと、そしてこの時に死んでいた方が良かったんじゃないかと、心底思った。

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bkm

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