Attack On Titan


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ラブソングをキミに


穿つ 4


「お互い、いろいろ情報交換は必要だろ?」


新兵には言えないようなことも、と言いながら屋上に出たナナバさん。


「お?なんだお前ら。まだ交替には早ぇぞ?」


私たちの姿を見て、ゲルガーさんがそう言った。


「あぁ。交替には早いけど、あんたが見たこと、言うには早過ぎないと思ってね。」
「………」


ナナバさんの言葉に、何かを察したらしいゲルガーさんの顔つきが変わった。


「フィーナ、私は西から南下してここにたどり着いた。」
「はい。」
「けどゲルガーはコニーと一緒に南から西に上がってきた班だ。」


ナナバさんのその言葉にゲルガーさんを見た。


「つまり、さっきコニーが話したからわかると思うけど、」
「…ラガコ村を見に行った班…です、か?」
「あぁ。」


ゲルガーさんは腕組をして私を見てきた。


「ゲルガー、さっきコニーは『建物は壊されたけど、村人は無事だ』と言ったんだ。」
「………」


ナナバさんの言葉を聞いたゲルガーさんは、眉間に深いシワを刻んだ。


「なぁ、フィーナ。」
「はい?」
「…今ここで、これをお前に伝える必要は、ないと思う。」
「…」
「だが…、どうせいつかお前の耳にも入るなら、俺は今知っとくべきだと思う。」
「…はい。」
「確かに、コニーが言うようにラガコ村に、それらしい血痕はなかった。1つもな。」
「はい。」
「……だが、」


ゲルガーさんはそこまで言うと、私から目を逸らし、まるで睨みつけるかのように、足元に視線を落とした。


「村人の避難が本当に完了していたと言うなら、巨人が誰もいないはずの空き家を、あぁも徹底して壊したことには違和感を覚える。」
「…」
「何より、村の馬小屋には、多くの馬が繋がれたままで、…馬なしで逃げても生存の可能性は低いと思う。」
「………そう、です、か…。」
「…それからお前の家だが…、」


この時もしかしたら私は既に、脳の感覚が、麻痺していたんじゃないかと思う。
ゲルガーさんが伝えてきた言葉は、確かに脳に伝わった。
…だけど、それだけ…。
イコールそれが何を意味するのかまでは、…考えないようにしていたと思う。


「…私も報告があります。」


でもゲルガーさんも、ナナバさんも、私のその態度については何も言わなかった。


「57回壁外調査に現れた女型の巨人はやはり、104期憲兵、アニ・レオンハートでした。」
「捕獲したのか!?」


私の言葉に、ゲルガーさんが少し、前のめりになりながら聞いてきた。


「当初の予定とは違いますが、『身柄の拘束』と言うことでなら、捕獲しました。」
「…どういうこと?」
「……アニは、ストヘス区の東の壁に追い詰められ、巨人化したエレンとの攻防の末、自らを硬い水晶体の中に閉じ込めたんです。」
「「は?」」


ゲルガーさんとナナバさんが同時に、声を裏返して聞いてきた。


「水晶体、って、どういうこと?」
「…言葉通りです。巨人化を解いて、項から引きずり出された女型の本体であるアニは、ハンジさんたちが触れる前に、自らを、ブレードの刃も折るほどの硬い水晶体で覆い…眠りについたと思われます。」
「………それは情報を引き出せなかった、ってことか?」
「…はい。」


私のその短い一言に、ゲルガーさんもナナバさんも、どこかやりきれないような、顔をした。


「それともう1つ。」
「なんだ?」
「……これを、104期が隔離されていた施設のあった建物の近くで見つけました。」


そう言いながら、ポケットにしまっていたあの切れ端を2人に見せた。


「ん?これ兵団ジャケットの切れ端か?えぇー、っと、第1分隊、ミケ・ザカ、リ、アス…」
「…ミケさん本人の姿はありませんでしたが、その切れ端があった辺りに、大量の血痕がありました。」
「……クソッ!!」


ゲルガーさんはその切れ端を握り締め、本当に、悔しそうにそう呟いた。


「………」


ナナバさんは、唇を噛み締め、苦々しげに、どこかを睨みつけていた…。


「フィーナ、ハンジたち本隊の応援は期待できそうか?」
「…わかりません。私はエルミハ区辺りでトーマさんに会ったので、トーマさんがストヘスの本隊にいつたどり着き、その本隊がどう動くかまでは…。」
「なんでエルミハまで来てたの?」
「…アニのことをミケさんに報告する人間が必要だと、リヴァイさんが許可を出してくれたので。」


今頃、シーナ突出区のストヘス区なんて、大混乱だろう…。
ただでさえ女型、そして巨人化したエレンが現れた日だと言うのに…。


「それよりお前、その足血か?」


その足、と言ってゲルガーさんが私の足を指さした。


「あぁ…、馬でずっと駆けてきたんで、傷口がまた開いたんですね…。」
「女型の時に?」
「はい。でもただの擦り傷です。」


塞がったはずの傷口はずっと動いていたせいで、いつの間にか、ズボン越しにも血が滲んでいた。


「けどお前、その足で、しかも伝令が行く前に、立体機動もブレードも装備して出て来たのか?」
「そうしろって、リヴァイさんの命令なんで。」
「はっ!さすがだな、兵士長殿は!」
「その兵士長殿と分隊長殿が救援に来るか、こっちから合流出来るまで、何事もないといいけどね…。」


ナナバさんが見上げた上空には、厚い雲がかかっていた…。

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