Attack On Titan


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ラブソングをキミに


穿つ 3


これだけでは、まだわからない。
兵団2、リヴァイさんの次に実力のある人だ。
怪我をしていても、この近くで身を潜めて仲間が来るのを待っているに違いない。
きっと、大丈夫。
…………少し前の私なら、そう思い、そう…縋って、そして、この辺りをくまなく捜索していたかも、しれない。
だけど…。


−…フィーナ……兵士が、泣くことは、許され、ねぇ…早く、行け…−


それは、つまり、立ち止まることを意味していて…。
それは兵士として、許されないことだ。
そう、「彼ら」に…「彼女」に、教えられた。


「この辺の地図があるかもしれない…。」


あと数十分もしないうちに、この壁内は闇に包まれるだろう。
そうなる前に、今後の私自身の動向を決めなければいけない。
兵団ジャケットの切れ端をポケットにしまい、崩れかけた施設の中に入っていった。


「…あった…」


施設の崩れていない壁に、大まかだけどローゼ内の地図が貼られていた。
……ここからは自分自身で、考えなければいけない。
これ以上、被害を拡大させないためにも必死に考えなければいけない。
…この場所で、巨人が「南から北上」してきたと確認されたのであれば、危険があっても、必ず南に行く班が出てくるはずだ。
そこから突出区に駐留するとは考えにくい。
ローゼ内の…、恐らく、穴が空いたとされる場所近くのどこか安全そうな建物で一夜を過ごすんじゃないかと思う。
なら…、


「…ウトガルド城跡…」


それが合致する場所は、1つしかない。
辺りはもう、松明の灯りがなければ馬を走らせることなんて不可能だ。
だけど、


「…行くしかない…。」


立ち止まることなんて、出来ない。
松明の灯りを頼りに、ウトガルド城に向け馬を走らせる直前に、もう1度、ポケットにしまった切れ端が落ちていた辺りを見た。
そこはもう、闇に飲まれて、誰もいない、何も聞こえない、静かな空間だった。


「………」


大きく1つ、息を吸い込んで、馬を走らせた。
通常、巨人がいると思われる場所で夜間(しかも日が暮れて間もない時に)馬を走らせるなんてリスクが大きすぎて絶対に避けるだろうことだ。
でも…。
私には、この耳がある。
人が立てる音であれば小さすぎて聞き漏らすことがあっても、巨人のそれならば、きっと聞き取ることが出来る。
それはとても神経を研ぎ澄まさなければいけないことで、疲労は測りしないけど…。
でも地図にあったウトガルド城までなら、どうとでもなる。
そう思い、慎重に、でも迅速に、馬を進めた。


「…見えてきた…」


どのくらい走らせたのかわからないけど、大きな古城が姿を現した。
……しかも松明の灯りが漏れている!
誰かいる!
逸る気持ちを抑えて、一気に馬を走らせた。


「誰だ!?…って、フィーナか!?」
「ゲルガーさん!」
「フィーナ!1人で来たの!?」
「ナナバさんも…、無事だったんですね…。」


突然の私の登場に、当然ながら驚いたナナバさんたち。


「姉ちゃん!?」
「コニー!良かった、コニーも無事で、」
「俺は、無事だけど…、」
「うん?」


そこまで言うと、コニーは押し黙った。


「…と、とにかく、城の中に入ろうぜ!お前の事情も聞きたい。」


そう言うゲルガーさんに背中を押されながら、ウトガルド城跡に足を踏み入れた。


「よく見たらフィーナ、団服じゃないね。」


城内に入り、灯りの下改めて私を見たナナバさんがそう言ってきた。


「…まさかこういう事態になるとは思っていなかったので…。」


城内にいる兵士はナナバさん、ゲルガーさん、リーネさん、ヘニングさん。
そして104期はコニー、ライナー、ベルトルト、ユミル、クリスタの5人。
つまり、半分が丸腰の、装備を何もしていない兵士、と言うことだ。


「もしかしたら、当初想定した程のことになっていないんじゃ…、ないでしょうか…。」


ゲルガーさんが交替で見張りを立てると言い、まず先に屋上で見張りをすることになった。
1つのところで休息している私たちの中で、真っ先にクリスタが口を開いた。


「あぁ…、確かに巨人が少ないようだ。壁が本当に壊されたにしちゃあな。」
「私たちが巨人を見たのは、最初に発見した時だけだ。」


クリスタの言葉に、ヘニングさんとナナバさんが答えた。


「コニー…、お前の村はどうだった?」
「………」


そうコニーに向かってユミルが尋ねた。
その言葉に、コニーは一瞬、私の方を見た。


「壊滅した。巨人に踏み潰された後だった…。」


淡い、松明の灯りの中、顔面蒼白で、コニーがそう言った。


「でも誰も食われてない。みんなうまく逃げたみたいで…、それだけは良かったんだけど…。」
「…村は壊滅したって言わなかった?」


コニーの言葉の矛盾に、思わず聞き返していた。


「家とかは壊されていたけど、村の人とかに被害はなかったんだ。もし食われていたら、その…、血とかの痕が残るもんだろう?それがないってことは、つまりそういうことだろ?」


私の顔を見ながら言うコニーを目の前に、先ほど、104期を隔離していた施設の近くにあった大量の血の痕が、脳内に蘇ってきた。


「だはははははっ!お前の母ちゃん、巨人だったのかよ、コニー!」


その後コニーが言った「自分の家にいた巨人がママに似ていた」発言を聞いたユミルが、その発言を笑い飛ばし、その場のやや緊迫した雰囲気は一気に流れた。
その流れを黙って見ていたナナバさんが私と目が合うと、クィ、と、顎でゲルガーさんが行った屋上を指した。


「さぁ、新兵。お喋りはお終いだ。休めるうちに休みな。リーネ、ヘニング、ここは任せたよ。」
「ナナバさんはどうするんです?」
「私とフィーナはゲルガーと交替!」


よ、と言いながら立ち上がったナナバさん。
…それはつまり、私も屋上へ来い、と言うことで…。
コニーをチラッと見遣ったら、先ほどユミルに笑い飛ばされたことがよほど不愉快だったのか、ムスッとむくれていた。
それに1つ、ため息を吐き、リーネさん、ヘニングさんに一礼し、ナナバさんの後に続いて屋上へと出た。

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