Attack On Titan


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ラブソングをキミに


穿つ 2


リヴァイさんが教えてくれたミケさんの分隊…104期が隔離されている施設の、私が現在いるストヘス区からエルミハ区南西までの道は、軽くだけど整備されている大きな道は1本しかない。
だからその施設から早馬が来れば必然的にこの道でかち合うようになっていた。
どのくらい馬を走らせていたのかわからない。
ただ黙々と、104期が隔離されている施設へと向かった。


「フィーナか!?」
「…トーマさんっ!?」


どのくらい走ったのか、自分ではもう、わからないくらいひたすらに馬を走らせている時、同じ分隊のトーマさんと会った。


「あの、今ミケさんのところに、」
「巨人だっ!!」


ミケさんのところに向かおうとして、と言おうとしたところで、遮るようにトーマさんが叫んだ。


「ローゼ内に巨人があらわれたっ!!」


トーマさんの表情は、嘘をついているなんて思えないほど鬼気迫るもので…。


「壁に穴が空いた可能性があるっ!!今ミケ分隊長始め待機命令のあった兵士全員で対処に当たってる!!」


「あの」恐怖が、「あの」地獄絵図が、一瞬で脳裏に蘇ってきた。


「ひ、104期は!?全員装備無しで待機命令が出ていたんですよね!?」
「…俺は伝令に先に出てきたから詳しいことはわからんが、恐らく丸腰で状況確認に当たっていると思う。」
「…そんな…」


104期の中に、内通者が、共犯者がいる可能性があるのであれば、それは仕方がないことだ。
だけど…。
巨人が現れた中に丸腰でなんて、それじゃあまるで…。


「フィーナ。」


私が状況整理をしていたら、トーマさんが声をかけてきた。


「俺はこのままエルミハ、そして団長がいるストヘスへ向かってこのことを伝える。」
「はい。」
「お前はどうする?」


もしここで、トーマさんと行動を共にする、と言う選択をしていたのであれば、また、違っていたんだろう。
でも…。


「ミケさんたちのところに向かいます。…本当に、巨人に壁を壊されたのであれば、きっと私の耳は役に立つと思うので。」
「そうか…。」


ローゼが突破された、と言うことは…。
それもエルミハ区南西地点から見て南から巨人が攻めてきた、と言うことは…。
ローゼ南端に位置する、ラガコ村が、襲われている可能性が、ある…。


「ストヘスに行ってもすぐにはエルヴィんさんには会えないかも知れません。でもリヴァイさんたちはきっと、」


トーマさんが的確にリヴァイさんたちに現状を伝えられるように、リヴァイさんがいるであろう場所を、…アニが連れて行かれた施設の場所を告げた。


「そうか、助かる。」
「いえ。伝令、お願いします。」
「あぁ。フィーナ。」
「はい?」
「気を抜くなよ。」


そう言って、再び馬で駆け出したトーマさんを目の端に捉え、私も馬で駆け出した。
…ローゼが突破されたのかもしれない。
しかもエルミハ区の南西から…。
そうなると、エルミハの南に位置するラガコ村は…。
巨人が現れた地域に丸腰で投げ出されたコニーだけじゃない。
ラガコ村のパパやママだって今頃どうなっているのかわからない。
早く、早くと、焦る気持ちで馬を走らせていた。


「………」


トーマさんの話では104期が隔離されている施設から、どう行動したのかがわからない。
…なら、行くしかない。
「兵士」である以上、「私」を、両親の安否確認を優先することなど、許されないのだから…。


「………」


トーマさんとの先ほどの会話から、どれほどの被害が出ているのかまではわからない。
どこに穴が開き、そして今現在、何体巨人がローゼ内にいるのか…。
それをいち早く把握するためにも、ミケさんか…、ミケさんの分隊の本隊と合流する必要があった。


「…これ、は…」


私が104期を隔離していた施設に到着したのは、既に陽が壁の向こうへと落ちようとしていた頃だった。
夜の帳が下り始めた世界でもはっきりと、わかる。


「…巨人が、ここに…。」


施設があった建物は、「大きな衝撃を受けた」ような破壊のされ方…、恐らく、ここで、巨人と戦闘になったであろう痕跡が残っていた。


「…誰か、生存者は…、」


もうこの周囲には、巨人がいる音はしない。
…そして、これだけ破壊されているのであれば、生存者の可能性も…。
それでももしかしたら、と、馬から下りて施設内を回った。
やっぱり生存者はいない。
でも…、


「血の痕も、ない…。」


人が捕食されたような痕跡はなかった。
そのことに、ホッと息を吐いた。
ここから逃げたんだ、伝令で早馬を飛ばしたトーマさんのように…。
そこまで思い至り、じゃあ私はどうしようか、と、指笛で馬を呼び寄せた時、


「あれは…、」


草の生えた地面に、不自然な人工色が目に映った。
近づいてみると


「…兵団、ジャケット…?」


見慣れた兵団ジャケットの一部が、ハラリと落ちていた。
ドクン、と、1度、大きく心臓が跳ねたような気がした。


「…あ、名前の部分が残ってる…。えぇ、っと、第1分隊、ミケ」


−俺も聞いてるぜ?ずいぶん『個性的』な耳をしてるらしいな?−


どうして、


−お前は有能だな−


どうして人は…私は、


−お前らもそれくらいのこといつまでも気にすることはない−


何か、有事が起こると、それまでのことがまるで…まるで走馬灯のように、思い溢れてきてしまうのだろうか…。


「………」


周囲を見ても、生きている人影なんて、どこにもない。
…ただ…。
確かに、このジャケットの切れ端が落ちていた周囲には、…人1人分はあるのではないかと思われるほどの量の、血痕が広がっていた…。

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bkm

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