Attack On Titan


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ラブソングをキミに


穿つ 1


「ハンジさん、」
「ん?どうした?」


憲兵からの聴取も終わり(エレンが寝ていたこと、何よりエルヴィンさんが既に連行されていたこともあり、私への聴取は予想していたものよりとても早く終わった)他の調査兵と合流した。
聴取前に、モブリットさんが用意してくれた服に着替えたので(団服ではない)曰く「見苦しい足」を見せ続けることなく済んでいる。


「ミケさんの姿が、見えないんですが…。」


聴取が終わり、リヴァイさんやハンジさんの姿はあれど、私の隊の…、ミケさんを分隊長として立てている隊の姿が、どこにも見当たらなかった。


「あ、あぁ…、ミケは、ね、」
「はい?」
「…………」


おかしいとは思った。
ハンジさんがひどく気まずそうに言葉を濁したから…。
ハンジさんの顔を覗き込むように見上げた直後、


「ミケならローゼ内にある施設で見張り待機中だ。」


答えたのはリヴァイさんだった。


「ちょ、リヴァイ!」
「こうなった以上、隠してても仕方ねぇだろ。」


口を開いたリヴァイさんを、ハンジさんは静止しようとした。
でもリヴァイさんはそれを片手で遮った。


「見張り、って?」
「女型の共犯者をあぶり出す作戦だ。」


リヴァイさんは、しっかりと私の目を見据えて言った。


「共犯者、って、共犯の可能性を持った人物がいるんですか?」
「断定は出来ていない。だが時期を考えれば納得行く。」
「時期?」
「あぁ。女型が訓練終了直後の憲兵だったことから、共犯者は同じく訓練終了直後の者の可能性がある。」
「それ、って…、」
「対象者はうちに入団した104期新兵全員だ。」


−今回は彼らには遠慮してもらうつもりだ−


いつかのエルヴィンさんの言葉が脳裏に過ぎった。


「ち、ちょっと待ってくださいっ!だって104期って、」
「ねぇ、フィーナ、ちょっと落ち着こう、ね?1回深呼吸しようか。」


リヴァイさんの言葉に一瞬頭を抱えたハンジさんが、すかさず私の肩を掴み、落ち着くよう促してきた。


「落ち着いた?…話を続けるけど、いいかな?」
「…はい。」


私に深呼吸させ、リヴァイさんの変わりにハンジさんが口を開いた。


「アニが104期である以上、104期の中に共犯者、共謀者がいると思われるのは、ある種仕方がないこと。これは理解してくれるよね?」
「…はい。」
「でも104期の中でも例外はいる。エレンがそうだろう?」


わかるよね?と繰り返し私に念を押すように言ってくるハンジさん。


「それにアルミン、ミカサもエルヴィンから『信用できる』と断言された。」


その言葉を聞いた直後、


−104期のジャン・キルシュタインです。背格好もエレンと似ているし、…彼は『信用できます』−


あの日、エルヴィンさんに「提案」したアルミンの言葉を思い出した。


「そのアルミンが『信用できる』と断言したジャンも、外された?」
「…うん、そうなるね。」


つまり、あの日から既に、104期に対するこの計画は進められていた、と言うことだ…。


「じゃあやっぱり、コニーはまだ兵団の仲間としては信用されていないんですね。」
「…で、でもさぁ!今回これで疑惑が晴れたら、きっとエルヴィンも、」
「今、」
「うん?」
「…ミケさんたちは、今どこにいるんです?」


フォローを入れようとしているらしいハンジさんの顔を見遣りながら尋ねた。


「そ、れは、」
「ミケたちはエルミハ区から南西に」
「ちょっと、リヴァイ!」
「こっちの用は済んだ。首の皮一枚でなんとか繋がったようなクソみてぇな状況だがな。ミケにそれを報告に行く人間が必要だ。行きたいなら行かせてやれ。」
「そう、かも、しれないけど、」
「おい、フィーナ。」


私とハンジさんの間に入るように、リヴァイさんが一歩前に出て言う。


「仮にコニーが共犯者であるならば、お前も内通者として疑われる。それはわかっているな?」
「…はい。」
「だが俺はそれはまずあり得ないと思っている。」


リヴァイさんは淡々と、それでもしっかりと私の目を見据えて言った。


「俺はお前の弟だから疑っていないんじゃない。利用されていたのなら話は別だが、そうでもない限り、あの馬鹿に俺たちを騙せるような頭はないと思ってるからお前を行かせるんだ。」
「…はい、ありがとうございます。」
「その足じゃ大して役に立たねぇだろうが、立体機動装置もつけていけ。ガスとブレードの補充も忘れるなよ?」
「……そ、れは、」
「あ?」
「…行った先で『何か』が起こる、と、思っている、と言うことです、か?」
「備えあれば、だ。104期から既に2人、巨人化する人間が出てるんだ。誰がどうなって、いつ戦闘になるかわからねぇだろ。用意しておけ。」
「…はい。」


リヴァイさんのこの言葉は、調査兵として私よりもずっと多くの経験を積んで来たから生まれた物なのか、それとも…これから起こるさらなる悲劇の予兆のようなものを、感じ取っていたからなのかは、私にはわからない。


「じゃあ、」
「あぁ。」
「気をつけるんだよ。」
「はい!」


ただわかるのは、この時もし、この場に止まると言う選択をしていたのであれば、違った未来が待っていたのではないか、と言うことだ。



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章タイトル:穿つ「うがつ」
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