Attack On Titan


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ラブソングをキミに


Snow White 8


「まさかこの期に及んで、アニが女型の巨人なのは、気のせいかもしれない、って思ってるの?」


ミカサのその言葉に、エレンは押し黙る。
………ミカサはずっと、アニを敵視していた。
それは訓練兵団で再会したばかりの私に対してそうだったように、一重に「エレンに近づく女」だからだったと思う。
そしてミカサにそう思われる程度には、エレンとアニは交流があったはずだ。
だから…、エレンのこの反応は、わからなくも、ない。
だけど…。


「うるせぇなっ!!俺はやってるだろうっ!!?」


ミカサの言葉に、エレンが叫び再び自傷行為を、右手を噛みちぎると言う行為を行った。
でも、


「エレン。もうわかってるんでしょう?女型の巨人が、アニだ、ってこと。…じゃあ、戦わなくちゃでしょ?それとも…、何か特別な感情が、妨げになっているの?」


エレンが巨人化することはなかった。


「話は終わりよ。」
「「「え?」」」


ミカサの話に一区切りついたところで、帯剣していたブレードを引き抜いた。


「もう時間がない。このままここにいたら、全員が踏み潰されるのは時間の問題。だから行動に出よう。…作戦はこう。『私とミカサがあの穴と元の入口から同時に飛び出す』…そうすればアニはどちらかに対応する。その隙にアルミンはエレンを連れてアニのいない方から逃げて!」
「ち、ちょっと待ってください!エレンにはミカサを、」
「それはダメ。この作戦は『より立体機動の扱いに慣れている者』でなければいけない。飛び出した瞬間、アニに殺されては意味がないの。少しでも時間稼ぎが出来る人間でなければいけないでしょう?…それに、ここから出たエレンがどういう行動をとればいいのか、知恵をあげられるのはアルミン、あなたしかいない。」
「…フィーナさん…」
「ミカサはいいよね?」
「はい!」
「じ、じゃあフードを!せめてフードを被って、アニが躊躇う時間を作ってください!」
「フード?」
「一瞬の躊躇だろうと思いますが、地上からの応援が間に合う可能性が上がる…!」
「…わかった。ミカサ、準備して。アルミン、後はよろしくね。」
「はいっ!」


エレンとアルミンから離れ、さっき来た道を戻るべく、駆け出した。


「お姉さんっ!!ミカサッ!!!」


地下通路に、エレンの声が響き渡る。


「なんで、なんで戦えるんだよっ!!!」


引き裂かれるほどの思いが込められた、叫び声が…。


「仕方ないでしょう?世界は残酷なんだから。」


ミカサの声が、崩れかけた地下通路に響いた。
…そう、この世界は、残酷だ。
だからこそ、もう躊躇ってなど、いられない。
ミカサに手を上げ合図をした。
直後、立体機動を使って、一気に地上へと飛び出した。


「エレンッ!!アルミンッ!!!」


直後、エレンのいたあたりを、再びアニが踏み抜いた音がした。
アニはミカサと交戦している。
今の間に、エレンとアルミンの元へと戻った。


「エレン!アルミンッ!!」
「フィーナさん!」
「アルミン、エレンは!?」


崩れてきた瓦礫を運良く逃れたアルミンが、瓦礫の下敷きになって倒れているエレンの側に立っていた。


「今助けるからっ!!」
「…っ、エレン!目を開けてくれっ!!」


自分が戦っている相手がミカサであるとわかったなら、対象がいつこっちを向いてもおかしくない。
急げ、急げと、心ばかりが焦っていた。


「エレン!返事して!!」
「エレンッ!!」


瓦礫をどかし、名前を呼んでも、エレンはピクリとも動かない。
………このままじゃまずい、そう思った時、


「おい!何やってるんだよっ!!」
「「ジャンッ!!」」


エレンの替え玉になっていたジャンが駆けつけてきた。


「エレンがこの下にっ!」
「はぁ!?作戦じゃ巨人になるはずだっただろ!?」
「出来なかったの。たぶん…女型の正体がアニだったことが引っかかって…。」
「なに…?」
「とにかく助け出さないとっ!」


アルミンと交互に、ジャンに状況を伝えたら、


「エレン、お前、ふざっけんなよっ!!?」
「ジャン!?」
「フィーナさん!」


エレンを無理矢理起こそうとジャンは動いた。
それを静止にかかろうとしたら、僅かの差でアルミンが私に、待て、と、腕を伸ばした。


「いつかお前に『頼む』って言ったはずだよなぁ!?お前なんかに、世界や、人類や、俺たちの命を預けなきゃいけない見返りがこれかよっ!!?…マルコは、…マルコはなぁ…!!」


…トロスト攻防戦で命を落とした訓練兵マルコ・ボット。
彼は、ジャンと同室で、本当に、仲が良かった気の優しい兵士だった。
あまり交流のなかった私の目にも、そう、写っていた。
その時、


「アルミン、危ないっ!!きゃあああっ!!?」


女型との交戦で、吹き飛んできた建物の壁が、私たち目掛けて落下してきた。
咄嗟にアルミンを突き飛ばすものの、体勢を立て直せなかった私は、そのまま吹き飛ばされた。


「…っ、」


元々、服が避けていた部分をさらに引きずり、軽く動かすだけで痛みが走った。
…せめて団服なら、まだ違ったのかもしれない。
でも今日は作戦のため、普段着で、兵士用のブーツですら、ない。
それが仇になったようだった。


「…女型が、」


アルミンやジャンをはじめとする兵士が、女型を、アニを、上手く引きつけたようで、女型はこの場から徐々に離れて行った。


「エレン、」
「……」


足を少し引きずりながら、未だ瓦礫に埋もれているエレンに声をかけるものの、反応はない。


「あなたは、このままで、いいの?」
「……」
「アニは、多くの兵士を殺した。今も、きっとそう…。その理由すら聞かないまま、終わらせるの?」
「……」
「何も捨てることが出来ない人には、何も変えることなんて出来ない。…うちの兵士は、みんな『変えよう』と、自らの命すら、捨てる覚悟がある。だけど…、」
「……」
「ねぇ、エレン。」
「……」
「今度は誰を、…犠牲にすればいいの?」


ディータさん、エルドさん、グンタさん、オルオ、ぺトラ、アニに殺された多くの兵士たち。
そして…。


−これから何があろうと、お前だけは、俺より先に死なないでくれ−


その時、


「っあぁぁぁぁ、」
「エレンッ!!」


エレンが、瓦礫の中から起き上がろうと、叫び声をあげた。


「う、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」


エレンのその叫び声と同時に、辺り一面に閃光が走り、爆風が吹き荒れた。

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bkm

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