Attack On Titan


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ラブソングをキミに


Snow White 7


「もういい。これ以上聞いてられない。不毛。もう1度ズタズタに削いでやる!女型の巨人っ!!」


そう言って、雨具を脱ぎ捨てたミカサはブレードを引き抜いた。


「……ふ、ふふふ、」


ミカサの言葉に、アニは顔を伏せた。
でもそれはほんの一瞬のことで…。


「あははっ!あはははははっ!!」


笑うその顔は、本当に、まだ15歳の、少女と女性の狭間にいる女の子の顔をしていた。


「あんたを殺さなかった理由?そんなの、1つしかない。」
「え?」
「大して強くもないくせに、こんな私を『可愛い女の子』だなんて言う馬鹿な兵士、後にも先にも、あんたしかいないからだよ。」


アニが体を動かしたことで、逆光で見えづらくなり、その表情までは、読み取ることができなかった。


「ねぇ、アルミン。私があんたの、良い人で良かったね。…一先ずあんたは賭けに勝った。でも…、」


アニがその目を、見開いた気がした。


「私が賭けたのは、ここからだからっ!」
「アルミン、撃ってっ!!」
「はいっ!!!」


それはほんの一瞬のこと。
アニが、自分の手を口に持って行こうとした直後、私の言葉に反応したアルミンが、信煙弾を地上に向けて放った。
その数秒後、身を潜めていた調査兵たちが一斉にアニを取り押さえにかかった。


「っ!?フィーナさん逃げてっ!!」
「ミカサ!」


その直後、ミカサがエレンとアルミンの服を引っ張り、地下通路へと飛び降りた。
ミカサの言葉に咄嗟に体が反応して、後に続くように通路へと飛び降りた。
瞬間、


ドォォォォォォン!!


「っ!?」


地上からの爆風が地下通路へと流れ込んできた。
ほんの数秒の差。


「きゃあああっ!!?」


でも、上手く逃げれたミカサたちと、地下通路に叩きつけられるように吹き飛ばされた私とは、その数秒で明暗がわかれた気がした。


「フィーナさん!」
「お姉さんっ!!」


地下通路に叩きつけられるように吹き飛ばされ、そのまま爆風で引きずられるように地べたを這った私の体は、


「…ちょっと、足が擦れちゃっただけだよ…。」


服を引き裂き、足から血が流れていた。
…この服、そんな薄い布で出来てないはずなのに、それでも破れたとなると、体全体が巨人化する時の爆風は、以前エレンが片手だけを巨人化させた時の爆風とは比べ物にならないくらい大きなものだ…。


「あ…」


爆風に飲まれた兵士が、崩れた壁の下敷きになり息絶えていた。
それを横目に、体勢を立て直した直後、女型が地下通路に手の伸ばしてきたのが見えた。


「しまった…!」
「フィーナさん、走れますか!?」
「えぇっ!」


避けるように、走り出す。
足の切り傷は、大した怪我ではないけど、それでも走るたびに、ズキッ、と痛みを訴えていた。


「くっそぉ!あの指輪…!やっぱり僕の嘘は最初から気づかれていたんだ…!」


…だとしても、アニは、アルミンにとっての「悪い人」には、ならなかった…。
それは私にとっても同じことが言えるわけで……。
そもそもアニは、


−大して強くもないくせに、こんな私を『可愛い女の子』だなんて言う馬鹿な兵士、後にも先にも、あんたしかいないからだよ−


本当に……。


「私たちはこれからどうすればいい?」
「………とりあえず、3班と合流して地上に出て、後は2次作戦の通りにアニと…、女型の巨人と戦うっ!エレンは予定通り巨人になって、捕獲に協力してもらう!いいよねっ!?」
「…あぁっ!」


アルミンの言葉にそう言ったけど、隣を走るエレンの顔は、現状を納得できていないのは明白で…。


「おーいっ!」
「あ!3班だっ!!」


その時、先に地下通路に待機していた3班の姿が見えた。


「1次捕獲は、失敗したのか!?」
「失敗しました!次の作戦に移行してくださいっ!!あっ、」
「ぐあぁぁっ!!?」


アルミンが、3班の兵士に声をあげた直後、地上から物凄い音と共に、女型が自らの足で3班の兵士を踏み潰した。


「踏み抜いたっ!?」


……57回壁外調査に現れた女型の正体だと、私たちに発覚してしまった以上、壁内にアニの居場所は、ない。
だからなりふりかまっていられない、というのもわかる。
…だからってこんな…!


−大して強くもないくせに、こんな私を『可愛い女の子』だなんて言う馬鹿な兵士、後にも先にも、あんたしかいないからだよ−


アニ、あなたはいったい…。


「助けないとっ!!」
「だめよっ!!」


エレンの声に、思わず反応した。


「今あなたが出て行ったら全てが無駄になる!」
「…けどっ!!」
「アルミン、次はどうすればいい?」
「…こうなったら手ごわいですよ…!アニは、死に物狂いでエレンを奪うつもりだからっ!」


実戦経験は確かに私の方がある。
でもアルミンは、「あの」エルヴィンさんが…ううん、「団長」が、その作戦を採用したほどの頭脳を持っている。


「…退路を塞がれた。立体機動で素早く出たとしても、その瞬間を狙われる。かと言って、っ!!?」


アルミンが今後の対策を口にしていた時、アニが再び、地上から踏み抜いた。


「ずっとここにいても、いつ踏み潰されるかわからないっ!」
「俺がなんとかするっ!…あの時、大砲を防いだみたいにっ!こっちに来いっ!!」


そう言って、エレンは私たちを自分の方へと抱きかかるようにした後、巨人への変化…右手を噛むと言う自傷行為を行った。
……だけど、


「またかよっ!?そんなっ、」


その行為でエレンが巨人化することはなかった。
………ハンジさんの話だと、エレンの目的意識が巨人化への鍵となるってことだった。
つまり、


−正直、俺にはまだ、本当にアニかはわかりません…。でも…、だからこそ、お姉さんも言ったように、アニじゃないなら、それを晴らしてやらないとって思います−


エレンの心の中では、まだ迷っている可能性が、高い…。


「くっそ!!こんな時にっ!!…いってぇぇっ!!!」


エレンの右手からは、血ばかりが溢れ出し、巨人化なんてする兆候すらみせない。


「本当に?」
「え?」
「まだアニと戦うことを、躊躇してるんじゃないの?」


口からも血を流すエレンにそう言ったのは、ミカサだった。

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bkm

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