Attack On Titan


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ラブソングをキミに


Snow White 6


「ミカサ、エレン。」
「お姉さん!」
「…アニが協力してくれることになったから。」


身を潜めて待っていたミカサ、エレンと合流し伝えた言葉に、2人とも、目つきが変わった。


「行こう。『みんな』のために。」
「「…はい。」」


それはアニ自身のためであり、調査兵団、ひいては人類のためであり。
…ディータさんや、リヴァイ班はじめ、亡くなった「同志」のためでもある。
私のその言葉に、2人は強く頷いた。
そして私たちは荷運び人として、憲兵のアニを先頭に、ストへス区内を歩いた。


「ねぇ…。もし私が協力しなかったら、どうやって壁を越えるつもりだったの?」


アニが最初に話を持ちかけた、私とアルミンを交互に見ながら聞いてきた。


「立体機動で、突破するつもりだったんだ。」
「無茶じゃない?そもそもストへス区に入る前に逃げた方が、こんな面倒もかからなくて済んだはずでしょう?なんで?今ここなの?」
「この街の入り組んだ地形が替え玉作戦の成功率をあげると思ったからさ。それに…、真っ向から逆らうよりも、従順に振舞ってからの方が逃走の時間を稼げるしね。」
「そう…。納得したよ。」


アルミンが答えた言葉に、軽く目を伏せそう言ったアニ。
……通りの音が、静かになってきた。
ハンジさんたち先輩兵士が、うまいこと住民を誘導させ、捕獲作戦の準備に入ってると言うことだ。


「…あった、あそこだよ。」


通りを歩いていると見えてきた、エルヴィンさんが指定したポイント。
地下へと通じるその階段の前へ、私たちとアニはたどり着いた。


「…ここ?」
「えぇ。ここを通る。…昔計画されていた、地下都市の廃墟が残っているの。」


心拍数が、上がっていってるのが、自分でもわかる。


「これが外扉の近くまで続いているから。」


そう言って地下へと進む私の後に、アルミン、ミカサ、エレンが続いた。


「アニ…?」


アニが来ないことで、エレンが足を止めた。
どくん、どくん、と心臓が脈打つ。


「なんだお前?まさか暗くて狭いところが怖いとか言うなよ?」
「………そうさ、怖いんだ。」


陽の光を浴びる地上にいるアニの顔が少し、霞んで見えた。


「あんたみたいな勇敢な、死に急ぎ野郎には、きっとか弱い乙女の気持ちなんてわからないだろうさ。」
「大男を空中で一回転させるような乙女はか弱くねぇよ。バカ言ってねぇで急ぐぞ!」


その言葉にエレン、ミカサ、アルミンは再び歩き始めようとする。
…でもアニは……。


「いいや、私は行かない。」


どくん、どくん、と鳴る鼓動に呼応するかのように無意識に、雨具の中に隠れている、ブレードの柄に、触れていた。


「そっちは怖い。地上を行かないんなら、協力しない。」


アニは決して、地下へ踏み込もうとはしなかった。
アニのその一言に、この場にいた全員が歩を止めた。


「何言ってんだ、てめぇはっ!さっさとこっちに来いよっ!ふざけてんじゃねぇっ!!」
「エレン、叫ばないで。」
「大丈夫でしょう、ミカサ。さっきからこの辺には、なぜか…、全く人がいないから。」


この辺に人が「いない」んじゃない。
「その瞬間」に備え、全員が、待機しているだけ。
真正面に見据えるアニの表情は、酷く強ばっていた。


「…ったく。傷つくよ。…いったいいつからあんたは、私をそんな目で見るようになったの?アルミン。」


カタカタと、微かに聞こえるのはきっと、アルミンが持っている信煙弾のトリガーの音。


「アニ、なんで?…なんで、マルコの立体機動装置を持っていたの?」


アニはその言葉に、答えなかった。


「わずかな傷や凹みだって、一緒に整備した思い出だから…。僕には、わかった。」
「…そう、あれは、…拾ったの。」
「じゃあ、生け捕りにした2体の巨人は?アニが、殺したの?」
「さぁね?でも1ヶ月前にそう思ってたんなら、なんでその時に行動しなかったの?」
「今だって信じられないよっ!きっと何か、見間違いだ、って思いたくて…。そのせいで…!!でも、アニだって…!!」


声を搾り出すように、アルミンが言った。


「あの時、僕を、…僕だけじゃない、フィーナさんも殺さなかったから…、今…、こんなことになっているんじゃないか…!」
「…」
「アニ。」


アルミンの言葉を引き継ぐように、私も口を開いた。


「私も、知りたい。…何故、『私だけ』殺さなかったの?」
「…」
「同期のアルミンを殺さなかったのは、わからなくもない。でもあなたがあの時、私を殺してさえいれば、…エルヴィンさんは、アルミンだけの言葉には、耳を傾けなかったかもしれない。」
「……」
「あなたが叩き潰したり踏み潰した多くの兵士たちのように、私を殺していれば、こんなことにはならなかったんじゃないの?」


あたりを風が吹き抜ける。
私たちと、アニを隔てるかのように…。


「あぁ。心底そう思うよ。まさか…、あんたたちにここまで追い詰められるなんてね…。」
「おい、アニ!お前が間の悪いバカで、クソつまんない冗談で適当に話を合わせている可能性がまだ!あるからっ!!とにかくこっちへ来いっ!!この地下へ入るだけで証明できることがあるんだっ!こっちへ来て証明しろっ!!」


エレンの叫び声があたりに響く。


「そっちへは行けない。私は、戦士になり損ねた。」
「だからっ!!つまんねぇって言ってんだろうがっ!!」
「話してよアニ!!僕たちはまだ話し合うことだって、」


ここが限界だ。
私がそう思った時、ミカサが動いた。

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bkm

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