Attack On Titan


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ラブソングをキミに


Snow White 4


「な、なん、か、すみません…。」


ひとしきり泣いてすっきりしたのか、エレンは突然、私を抱きしめていた手を離し、謝罪の言葉を述べてきた。


「俺、」
「うん?」
「…今まで、『俺が』泣いちゃいけない、って…。どこか、そう思ってたのかもしれない、って…。溢れてくるものは止められなかったけど、それでも歯食いしばってたところがあって…。」
「…」
「でもお姉さんの『声に出して泣いていいんだ』って言葉聞いたら、なんか、こう…、プツッと行ったというか…。」


目と頬を少し赤くしながらエレンは言う。
ごにょごにょと、徐々に語尾を小さくしながら…。


「すっきりした?」
「え?あ、はい…。」
「なら良かった。」
「………」


エレンには、「巨人化することの出来る人間」として、きっと今まで以上の試練が訪れると思う。
その前に、少しでも心の整理をつけることが出来たなら、それに役立つことが出来たなら、本当に良かったと思う。


「ぺトラさんが、」
「うん?」
「ぺトラさんが、言ってたんです。」
「…何を?」
「『フィーナは本当にカッコいい女兵士だ』って。」
「………」
「俺、今ならそれがすっげぇよくわかる。」


さっきまで私から目を逸していたエレンは、赤い目をしたまま、穏やかに微笑んだ。
…その顔に、今度は私が顔を晒した。


「いろんな話、した?みんなと…。」
「…はい。あ、」
「うん?」
「……あの、」
「うん。」
「話の流れで、聞いちゃったんですが、」
「うん?」
「オルオさんが、お姉さんもその…、撒き散らしたって言ってたんですけど、あれ本当ですか?」
「…………………」


………オルオのバカっ!!!
なんていう置き土産をしていくのっ!!!
信じられないっ!!!




「(黙ちゃった、って、ことは、……ほんとなんだな……)」




「エレン、そのことは、」
「も、もちろん兵長には言いません!!」
「……………なんでリヴァイさん?」
「え?あー、…それもオルオさんが言ってたんですが、」
「うん?」
「『お前はフィーナと無駄に仲が良いから兵長がご気分を害さないように俺が特別に教えてやろう』って、お2人のこと、聞いちゃいました…。」
「……………」


オルオってば、ほんとに…!!


「エレン、そのことも、」
「言いません!誰にも!…エルドさんにもそう、言われてるんで。」
「…そう…。」
「あ、エルドさんて言ったら、」


それからしばらく、エレンと2人、エルドさん、グンタさん、オルオ、ぺトラの話で盛り上がり、2人で笑っていた。
…それがまるで、私たちなりの追悼とでも言うように…。


「アルミンから聞きました。」
「うん?」
「…アルミンとお姉さんの班の班長も、殺されて……連れて帰ってくることも、出来なかった、って…。」


それまでの談笑を断ち切るかのように、エレンが不意に真面目な顔をした。


「正直、俺にはまだ、本当にアニなのか、わかりません…。」
「…」
「でも…、だからこそ、お姉さんも言ったように、アニじゃないなら、それを晴らしてやらないとって思います。」
「…」
「だから、俺はやります。…亡くなった先輩たちのためにも。」


そこには、さっきまでの不安や迷いなんてものは感じられないほど、真っ直ぐと私を見ている、強い意志を持った男の人がいた。


「うん、私たちもできることをする。」
「はい!」


力強く頷くエレンに私も微笑み返した。


「お前はどこまで茶を淹れに行ったんだ?」


紅茶の入ったカップをトレイに乗せ、リヴァイさんの部屋に行くとチクリ、と一言言われた。


「すみません、たまたまエレンに会って、いろいろ話し込んじゃって、」
「………」


どうぞ、と、苦笑いしながらリヴァイさんに紅茶を差し出した。


「お前は、」
「はい?」
「笑うんだな。」
「え?」


リヴァイさんは私を見ずに、そう言った。


「リヴァイさんは、」
「なんだ?」
「…泣かないんですね。」
「………」


それが別に嫌だ、と言うわけでもなんでもない。
きっと、この人にとって泣ける場所がどこかにあるなら、そこでなら、私に見せない涙を、流しているのではないかと、流しているのだろう、と、思う。
それが私の前ではない、と言うだけのことだ。
ただ、それが少し、…もしかしたらとても…、寂しい、と、思うだけで…。


「明後日の作戦、」
「はい。」
「アルミンとお前が女型をおびき寄せるそうだが…。」
「はい。その辺りはエルヴィンさんから一任されてます。」
「…しくじるなよ。」
「気をつけます。」


室内に香る紅茶の匂いに、ゆっくりと夕日が差し込んできていた。

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bkm

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