Attack On Titan


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ラブソングをキミに


Snow White 3


作戦の具体的説明も終わり、エルヴィンさんにその場待機を命じられ、各々古城の中で過ごすこととなった。
早々に自室に行ったリヴァイさんに紅茶でも持っていこうかと調理室へ行ったところで、


「エレン。」
「お姉さん…。」


エレンと会った。
エレンはどこか、困ったような顔で笑った。


「…決まったことを言うのは何だけど、」
「…」
「やるんですよね…、本当に…。」


その言葉に思い出すのは、アニに投げ飛ばされても何度も挑みかかっていたいつかのエレンの姿だった。


「もし、アニが女型じゃなかったら、」
「…」
「こんな疑い、早々に晴らしてあげなきゃいけない。」
「…はい。」
「でも、もし。」
「…」
「…もし、アニが『あの』女型であるなら、絶対に野放しにしてはいけない。…犠牲になった、兵士のためにも。」
「…………」


「犠牲になった兵士」と言う言葉を、今、この子に言うのは酷なことだと思う。
リヴァイさんほどではなくとも、丸々1ヶ月、寝食を共にし、…信頼した仲間のことを、指すだろうから…。
私の言葉に、エレンが泣きそうなほど、顔を歪めた。
直後、あっ、と短く声を発した。


「なに?」
「…昨日、」
「うん。」
「殉死者の、共同火葬があったんです。」


リヴァイさんたちは、古城へ向かう前に、連れて帰ることの出来た遺体の最終確認と、火葬を行っていたはずだ。
エレンはそのことを話始めた。


「すごく、人が死んで…。遺体の状況から、連れて帰って来れなかった人たちも、たくさんいるって聞きました。」
「…うん。」
「火葬される直前、遺体を1体1体見ていったんですが、…どこにもいないんです。」


……あぁ、エレンはぺトラのことを言おうとしているんだ。
そう思い至ったことで、ゆっくりと瞳を閉じて、息を吸い込んだ。


「グンタさんも、エルドさんもいたのに、ぺトラさんとオルオさんがいないんですっ!」
「………え?」


驚いて見上げたエレンは、苦しそうに顔を歪めていた。


「みんな同じような場所で殺されたから、回収出来たはずです。けど、お2人の遺体は、どこにもなかったんですっ!」
「…」
「…アルミンが、途中、巨人に追いつかれそうになった時に何体か遺体を遺棄したって言ってたけど、もしかしてお2人はっ、」


ーいいかフィーナ。俺たちは『繊細なあまりやってしまった同盟』として一蓮托生なんだからな?−


…あぁ…、そうか……。


「ぺトラは、」
「え?」
「ぺトラは、強くて、優しくて、明るくて、ハキハキしてて、…同じ女の私から見ても、カッコいい兵士だった。」
「…はい。」
「でも、それでも『女』だから…。」
「…」
「オルオは、お調子者で、いつもみんなを笑わせてくれてた。」
「はい。」
「…でも、すごく優しい人だから、……ぺトラが寂しい思いをしないように、傍についててくれたのかも、しれないね…。」
「っ、」


あの時連れて帰って来れなかったこと、それはきっと一生、私の、私たちの心に残るだろう。
でも、それでも…。
オルオが、ぺトラを1人にさせなかったんじゃないのか、って…。
とても自分にとって都合の良い解釈だけど、それでもそのことはどこか、私の心を、掬い上げてくれた気がした。


「…れが、」
「うん?」


どこか潤んできた来た視界の先で、エレンが頭を抱えながら苦しそうに吐き出した。


「俺がっ、あの時選択を間違えなければっ、」
「え?」
「俺が正しい選択をして、自分の力を信じていたらっ、今も先輩たちはここにいて、兵長も怪我をしなくてっ…!」
「…違う、」
「俺が、『信じたい』と思ったからっ!!」
「エレン、違うっ!」


思わず掴んだエレンの腕は、少し、震えてる気がした。


「何が正しくて、何が間違っていたのかなんて、そんなの誰にもわからない。」
「…」
「エレンがみんなを信じたから、リヴァイ班のみんなはそれに答えたの。そうでしょう?」
「……」
「そんなに、自分を責めないで…。」
「………」
「…もう、我慢しなくていい。声に出して、泣いていいんだよ…。」
「…っ、」


人が、巨人化出来るという事で、もしかしたら私たちは、…私は、どこか、忘れていたのかもしれない。
私を抱きしめて泣くこの子がまだ、15歳の子供だと言うことを…。




「…あれ?ミカサ、…と、兵長も?どうしたんです?ここ、調理室、ですよ、ね?」
「…………」
「…………」
「(え?なんでこの2人調理室に入らないんだ?)な、何か、あったんです、か?」
「…………」
「…………」
「(なんで何も喋らないんだ!?)そ、そう言えばエレンは?」
「おい、お前はそこの煩ぇ金髪を連れて行け。」
「…アルミン、こっち。」
「え?ち、ちょ、ミカサ何!?て、ミカサ泣いてるの!?」
「泣いてない。…ので、騒がないで。」
「え?で、でも、(て、兵長もいなくなっちゃうし!何があったんだ…?)」




エレンは、泣く。
声を出して、泣く。
だから、例え小さな一歩でも、きっと大丈夫。
この子はきっと、前に進める。
でも…。
私の前で、泣くことの出来なかったあの人は……。
まるで、小さな子供のように泣くエレンに抱きしめられながら、泣けないあの人のことを、思っていた。

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