Attack On Titan


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ラブソングをキミに


Snow White 2


「3日後、です、か…。」


席を外したエルヴィンさんがいつになく険しい顔をして戻ってきた。
エレンと、そしてエルヴィンさんの王都招集が3日後に決まった。


「言い換えれば3日の猶予が与えられた。その間で女型捕獲作戦の計画を実行出来るまでに話を詰め、今度こそ女型の中の人物を生け捕りにする。」


エルヴィンさんの声に、辺りの空気が張り詰めた気がした。
そこからは、作業が一転した。
殉死者の共同火葬に出ていた兵士らも、今回の捕獲作戦についてエルヴィンさん直々に伝達があった。


「あの、エルヴィンさん。」


この作戦に参加する全兵士への通達が終わった後で、エルヴィンさんの元へ行った。


「なんだ?」
「…104期は、」
「…」
「104期は、参加、させないんですか?」


エルヴィンさんが「今回の計画」を伝えたのは、103期以前の兵士だけ。
つまり、新兵である104期は、この計画に参加せない、と言うこと。


「あぁ。今回は彼らには遠慮してもらうつもりだ。」


それは=コニーの危険が減ると言うことで喜ばしいことだ。
だけど…。
この人が「理由もなく」ただ計画に参加させない、などと言うこと、今の今まで1度もなかった。
つまりそれは、104期を参加せない方が、エルヴィンさんにとって、何かしらの都合が良いというわけで…。
今回はコニーが安全だからと言っても、一概に喜べない自体であった。


「…私と補佐に1名、そしてアルミン、ミカサ、ジャンで明日エレンのいる古城へ向かう。」
「はい。」
「そこでリヴァイとエレンにも今回のこの計画について話すつもりだ。」
「…」
「この計画では、君も重要になってくる。君も一緒に来たまえ。」
「…はい。」


明日の午前中にもう少し、計画に必要な準備や作戦の見直しをし、午後、古城へと向かうことでこの日は解散となった。
自室に向かうものの、…リヴァイさんは、エレンと共にもう古城へ行っていて、この部屋には、誰もいない。
静かな、静かな空間が広がっていた。
…あるいは、今日、1ヶ月「彼ら」と過ごしたあの場所で1人、泣いているのかもしれない。
昨日、私の前では泣けなかった分、涙を流しているのかも、しれない。
涙を流すことで、人は少し、心が軽くなるものだ。
涙を流すことで、人は少し、前に進めるものだ。
もし、本当に、今この空の下で、1人、悲しみに暮れているのだとしたら、どうか、泣いていてほしいと、思う。
私の前で、泣くことが出来なかった分、泣いていてほしいと、心から、思う。


「では、これより古城へ向かう。」


翌日午後、エルヴィンさんを先頭に古城へと向かった。
昨日エルヴィンさんが言っていた通り、エルヴィンさんとその班員1名、アルミン、ミカサ、ジャンそして私の6名で向かった。
エルヴィンさんの班員は、古城と兵舎の伝達係としての同行らしく、兵団の中でも足の早い馬で古城へと向かっていた。


「遅れて申し訳ない。」


古城に到着後、ゾロゾロと城の中の一室へ進むと、同行していたはずのハンジさんたちはおらず、リヴァイさんとエレンだけがそこで待っていた。


「女型の巨人と思わしき人物を見つけた。」


みんなが席についてから、エルヴィンさんはリヴァイさんとエレンに向けて話始めた。


「目標は普段ストへス区中で憲兵団に所属している。」


アニ・レオンハートは、普段ストへス区で憲兵として任務についている。
アルミンの作戦は、そこを逆手に取り、アニを捕獲する、と言うものだった。
決行日は明後日。
その日に、エルヴィンさんはじめ数名の兵士と、エレンの王都招集がある。
エレンが中央に引き渡される、つまり、巨人化出来る力を持つ者が抹殺されるということは、エルヴィンさん曰く、「壁の破壊を企む連中」をおびき出すことが困難になるということ。
ひいては、人類滅亡の色が濃くなっていくことに繋がる…。
これらを打開するために、私たち調査兵団は、この日、この作戦に全てを賭ける必要があった。


「大まかに説明すれば我々が憲兵団に護送される際にストへス区中でエレンが抜け出し、目標をおびき寄せて可能なら地下で巨人化させることなく捕獲するのが目的だ。エレンを囮にして壁を壊す巨人の輩が捕らえられるのであれば当然召集の話はなくなる。王都の意識も壁の防衛に傾くはずだ。」


エルヴィンさんのその言葉に、エレンがやったな、とアルミンたちに小さく呟いたのが聞こえた。
…でも、アルミンもミカサもその言葉に同意は決して、しなかった。


「女型の正体だが…、その可能性を最初に伝えてきたのはフィーナだ。彼女の推察をより肯定する判断材料を我々に提供してくれたのがアルミンだ。この作戦を立案したのもアルミンで私がそれを採用した。女型と接触したアルミンの推察によるところでは、いわく女型は君たち104期訓練兵である可能性があり生け捕りにした2体の巨人を殺した犯人とも思われる。」
「え?」


エルヴィンさんの言葉に、エレンは思わず言葉を漏らした。


「彼女の名はアニ・レオンハート。」
「……アニ、が…?」


エレンは、声を絞り出すかのように、そう呟いた。


「女型の巨人?なんで…そう思うんだよ…アルミン。」


信じられない。
体全体でそう言っているように聞こえるエレンの声は、どこか震えていた。
……あぁ、そう言えばエレンはアニから対人格闘術を教わっていたくらい、仲が良かったんだっけ…。


「女型の巨人はエレンの顔を知っているばかりか、同期でしか知り得ないエレンのあだ名『死に急ぎ野郎』に反応を見せた。…何より大きいのは、2体の巨人を殺したと思われるのが、アニだからだ…。あの2体の殺害には高度な技術が必要だから使い慣れた自分の立体機動装置を使って、検査時にはマルコのものを使って追求を逃れたと思われる。」
「は…?どうして…マルコが出てくる?」
「わからない。僕の見間違いかもしれない…。」
「は?」


同じように動揺している声を出すエレンとアルミンの会話を聞きながら、今となってはなんだかひどく、昔にすら感じる訓練兵団にいた頃のことを思い出していた。


「おい、ガキ。さっきから女型と『思われる』だとか言ってるが他に根拠は無いのか?」


エレンとアルミンの会話を聞いていたリヴァイさんが、おもむろに口を開いた。


「はい」
「アニは、女型と顔が似てると、私は思いました。」


アルミンの助け舟とでも言うように、ミカサが答える。


「は!?何言ってんだ!そんな根拠で、」
「つまり…、証拠はねぇがやるんだな…。」
「証拠が…ない…?なんだそれ…?なんでやるんだ?」
「証拠はありません。」


会話に割って入るように口を開いた私を、リヴァイさんとエレンは驚いたような顔で見てきた。


「でも、『私を殺さないと言う選択肢を取る104期の金髪の少女』は、彼女しか考えられません。」
「………そうか。」
「そうか、って、兵長、何納得してるんです!お姉さんも何言ってるんですかっ!もしアニじゃなかったらっ、」
「アニじゃなかったら、アニの疑いが晴れるだけ。」


そう言ったのはミカサだった。


「そうなったらアニには悪いと思うよ…。でも…だからって何もしなければエレンが中央のヤツの生贄になるだけだ。」


アルミンのその言葉に、エレンはついに、押し黙った…。


「では、具体的な作戦内容についてだが…、」


エルヴィンさんが作戦の説明に入る間、チラッと覗き見たエレンは、血の気が引いたような、未だ信じられないと言う顔をしながら、俯いていた。

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