Attack On Titan


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ラブソングをキミに


Snow White 1


「失礼します!」
「来たか。」


部屋を出て、エルヴィンさんの執務室に向かうと、エルヴィンさんの班員である先輩兵士2人がそのまま会議が出来るようにと、テーブルやイスを用意しているところだった。


「どうだ?『アレ』の様子は。」


エルヴィンさんは、固有名詞をあげなかったけど、それが何を指しているかは明白だった。


「少し、痛むようですが、大丈夫だと思います。」
「そうか。助かる。」
「失礼します!104期アルミン・アルレルト、ミカサ・アッカーマンを連れて参りました!」
「入れ。」


私たちの会話が終わった直後、ノック音と共に、声が響いた。
…アルミンと、ミカサ、が…?


「彼らに状況整理をさせ、君の意見を踏まえた上で、直接話を聞こうと思ってね。」


そうエルヴィンさんは言った。
あぁ…。
「だから」昨夜帰還直後に、ではなく、「明朝」だったのか…。
本当に、ぬかりのない人だ…。


「アルミンとミカサだね。君たちに聞きたいことがある。そこに座りなさい。」
「「はい。」」


アルミンは一瞬、何故ここに私がいるのか、と驚いた顔をしたけど、それもすぐに結論づけたのか、エルヴィンさんに従い、腰を下ろした。
エルヴィンさんは、この部屋の入り口に1人、兵士を立たせ誰も近寄らせないようにし、席についた。


「まず、アルミン。」
「はい。」
「フィーナから大方の話しは聞いたが、君の口からもう1度確認の意味を込めて聞きたい。」
「はい。」
「君は何故、女型が104期にいると思ったんだ?」
「それは…、」


アルミンは私に話したこと、それ以上のことを直接エルヴィンさんに伝えていく。
女型がフードを被っていたアルミンの顔を確認したこと。
それはつまり「エレンの顔」を知っている人間であると言うこと。
そこに可能性を見出し投げかけた言葉「死に急ぎ野郎」
それは104期の間ではエレン・イェーガーを指す言葉だと言うこと。
そして…。


「ですが僕が何よりそう思ったのは、2体の被検体、ソニーとビーンを殺したと思われる犯人が、104期の中にいるからです。」


アルミンは、私にも言わなかったことをこの場で述べた。


「それは誰だ?」
「それは…、」


大きく、大きく息を吸い込んで、アルミンは口を開いた。


「104期憲兵、アニ・レオンハートではないかと…。」


……あぁ……。


「…決まり、だな。」
「え?」
「君と同意見を述べた者がいる。」
「…まさか、」


エルヴィンさんの言葉を聞いたアルミンが、私の方を見た。


「ミカサ。念のため104期であり、女型と直接対峙した君の意見も聞くが、君は『その可能性』についてどう思う?」
「………確かに、女型は、アニによく、似てると思います。」
「そうか。」


−アンタ、向いてないよ兵士−


アニが…。
まだ、どこか、信じられない…。
けど…。


−死ぬよ、アンタ−
−忠告はしたからね−


あれは、もしかしたら、「私に殺され」死ぬよ、と言う、意味だったのかも、しれない…。
言葉は受け止め方によってはどうとでも取れるものだ。
そして1度そうだと思ってしまったら、決定的に払拭されるまで、その可能性を、考え続けるだろう。


「で、でも、あくまで可能性の話しなので、本当にこの作戦をやるとなる、と、」


エルヴィンさんがどうやってアニ本人に不審がられず、捕獲が出来るか、と言った時、アルミンが1つの作戦を提案した。
アニを騙す、作戦を…。


「だが、やらねばエレンは間違いなく中央に連行され殺されるだろう。」
「……そう、ですが、」
「アルミン。」


自分で作戦立案を出していながらも、まだ躊躇うアルミンの名前を呼んだ。


「1度かかった疑いは、何かで決定的に払拭されるまで、きっとずっと、ついて回る。」
「…」
「私もアニが1番、可能性が高いと思った。だからこそ、この作戦を、やらなければいけない。と、思う。」
「フィーナさん…。」
「違ったらアニの疑いが晴れるだけ。」
「…」
「でもそれはとても重要なことだよ。アニにとっても、…私たちにとっても。」
「…………」


アルミンは軽く俯き、考え込むような仕草をした後で、そうですね、と小さく呟いた。


「…では、アルミンの作戦立案を採用する。具体的には、この作戦にはエレンの影武者となり得る人物が必要なわけだが、」
「あ、それなら、ジャン、はどうでしょうか?」
「ジャン?」
「はい。104期のジャン・キルシュタインです。背格好もエレンと似ているし、…彼は『信用できます』」
「…………」


この時のアルミンのこの言葉の意味が、私にわかるのは、もう少し、後のことだ。
でも、この時点で、エルヴィンさんには、それが何を意味するのか、十分すぎるほどわかっていたんだと思う。
少しの沈黙の後、


「わかった。エレンの影武者はジャン・キルシュタインになってもらおう。」


エルヴィンさんはアルミンの意見を採用した。


「団長、失礼します!中央より遣いが来てます!」
「来たか…。すまんが一旦席を外す。君たちは具体的にどう計画を進めるかもう少し話しを詰めていてくれ。」
「はい。」


エルヴィンさんが呼びに来た兵士と共に部屋を出て行った。


「…中央の遣い、って、」
「あぁ…。団長とエレンの王都招集が決まったんだろうな。」


そう答えたのは、エルヴィンさんの班の班員である先輩兵士。


「そういうわけだから、これがきっと、最後のチャンスだ。」
「…」
「アルミン、君は団長からも信頼されるほど頭が切れるようだ。君がこの計画に必要だと思うことを言ってくれ。我々がその準備をする。」
「…はい。」


これが、調査兵団に与えられた最後のチャンス…。
エレンと…、そしてエルヴィンさんはじめ調査兵団の行く末が決まる。

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