Attack On Titan


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ラブソングをキミに


敗者たち 7


翌朝。


「おはようございます。」
「…………あぁ…。」


いつも通り、夜は明ける。
リヴァイさんは結局、眠れなかったように、思う。
私の鎖骨辺りに額をつけ、ずっと、…縋るようにしがみついて、それでも、泣けずにいる夜だった……。


「………」
「………」


いつも通り、朝の準備を始めた時、…肩に、痛みを感じた。
昨日は気が張りつめ過ぎてて感じず、怪我でもしていたのかもしれないと、鏡の前で1枚服を脱ぎ、痛みの元を見ると、


「…あぁ…」


左の肩甲骨あたりにくっきりと、深く深い、爪痕がつけられていた。
その痕はまるで……。


「………悪かった……」


同じくいつものように黙って準備をしていたはずのリヴァイさんが、私の背中の爪痕に気づいたらしく、そう口にした。


「大丈夫です。」
「…」
「爪痕くらいでどうにかなるような体じゃないですから。」
「……」


リヴァイさんは、昨夜から私と目を合わせようとしない。
それが無意識なのか、意識的なことなのかは、わからないけど…。
押し黙ったリヴァイさんに背を向け、そのまま着替えを続けようとした時、


「っ!」
「………」


リヴァイさんが、後ろから抱きしめてきた。


「…………」
「…………」


キャミソール1枚の体にリヴァイさんが抱きついたことで、背中の爪痕が、ズキリ、と痛んだ。


「お前に頼みがある。」


リヴァイさんは、そのままの状態でゆっくり言葉を紡いでいく。


「これから何があろうと、お前だけは、俺より先に死なないでくれ。」


背中の爪痕が、ズキリ、ズキリ、と音をたてる。


「その約束は、出来ません。」
「…」
「でも、」
「…」
「そうなるよう、努力します。」
「………そうか。」
「はい。」


リヴァイさんは、決して涙を見せない。
だから…。
私の背中の爪痕が、まるで泣けないリヴァイさんの変わりに、血の涙を、流したんだと思った。


「これからすぐ古城に向かうんですか?」
「あぁ。お前は?」
「エルヴィンさんに呼ばれてます。」
「そうか。」


再び私たちは、いつものように、朝の準備を始める。


「足、」
「…」
「大丈夫、ですか?」
「…まぁ…それなりに、な。」


足を引きずる、と言うところまでは行かずとも、それでもしばらくリヴァイさんは戦線から外されるそうだ。


「ちゃんと、寝てくださいね。」
「…」
「じゃないと、いつまで経っても治らない。」
「………あぁ……。」


支度も終わり、部屋を出ようとした時、


「フィーナ。」


リヴァイさんが私の名前を呼んだ。


「お前は、泣かないのか?」


リヴァイさんがどういうつもりでこの言葉を言ってきたのか、私にはわからない。
だけどそう言ったリヴァイさんは半日ぶりに…それでもすごく久しぶりにすら思えるほどに、真っ直ぐ私の目を見て聞いてきた。


「はい、泣きません。」
「……そうか。」
「はい、そうです。」
「………」
「じゃあ、いってきます。」
「…あぁ…。」


それだけ言って、リヴァイさんを部屋に残し、パタン、と、ドアを閉めた。


−お前は、泣かないのか?−


…どうしてあなたが、それを言うんですか?


−私を兵長に推薦してくれたフィーナのためにも、絶対に立派な兵士になってみせます−


ねぇ、ぺトラ。
もしここに、あなたがいたら…。
今の私たちを見て、どう、思うんだろう…。
私はちっとも、立派でもなければ、尊敬されるような人間でも、ないのに…。


「……」


深く深く、息を吸い込み、一歩、足を踏み出した。

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