Attack On Titan


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ラブソングをキミに


敗者たち 4


「今朝より数が少なくなってないか?」
「かなり減ってるなぁ…。」
「今回は酷いな…。」
「朝から叫びまわって出て行ったと思ったら、もう帰ってきやがった!何しに行ったんだぁ?」
「さぁな?」


ようやくカラネス区壁門につき、エレンを監視するはずのリヴァイ班の壊滅と、生き残ったリヴァイ兵長自身の怪我を考慮し、今日は一旦全員で兵舎へと戻り、明朝リヴァイ兵長、ハンジ分隊長率いるエレンを監視保護する班が旧調査兵団本部のある古城へと向かうこととなった。
兵舎へと向かうべく街の中央通りを通り一歩、また一歩と歩を進めていた。
………こういう時に、私の耳は、厄介だと思う。
嫌でも入ってくる、この喧騒。
それはほんのつけ焼刃だけど、普段は耳にかけている髪を、無意識で下ろし、少しでも喧騒から逃れようとした。


「フィーナ。」
「はい、ミケさん。」


恐らく先頭であるエルヴィンさんが中央通りを抜けのか、喧騒も聞こえなくなってき始めた頃、前方にいたはずのミケさんがいつの間にか後方にいた私の隣に来て声をかけた。


「エルヴィンからの伝言だ。」
「はい。」
「『例の件で明朝私の執務室に来るように』だそうだ。」
「…明朝、です、か?」
「どうした?」
「あ、いえ…。」


エルヴィンさんのことだ。
私が言った情報、すぐにでも詳細を聞きたいに違いない。
そう、思っていたのに、明朝…?


「それともう1つ。」
「はい?」
「『大事な場面で使い物にならなかった自分を責めているようだ。君がなんとかしろ』とのことだ。」
「……それ、って、」
「確かに『アイツ』が使い物にならないと、うちには大打撃だ。まぁ、自分でどうにかするしどうにか出来る奴だが、今はエルヴィンの『好意』に甘えておけ。」
「…………」
「俺からも頼む。」


そう言って、ミケさんは私の元から去っていった。
…………つまりエルヴィンさんは、2年、エルドさんに至っては3年、共に戦ってきた班員を失って消沈しているリヴァイさんを、私が慰めろ、とある種「命令」してきているわけだ。
ミケさんも言うように、エルヴィンさんだって本当のところは思っているだろうに。
リヴァイさんなら「自分でどうにかする」って……。
………あんな顔をしたリヴァイさん、私なんかじゃ……。


「あ、あの、スミマセン、」
「はい?」


隊列後方の端を歩いていた私に、1人の男の人が声をかけてきた。


「む、娘の、娘の姿が、見えないんですがっ、」
「…娘さん、です、か?」
「ぺトラです。ぺトラ・ラルですっ!」
「っ!?」


目の前の男の人は、縋るような目で、私を見てきた。
………その瞳は、確かに「彼女」を彷彿とさせる、そんな瞳だった。


「………お嬢さん、は……、」
「…っ…」


軽く首を横に振りながら言ったその言葉に、…ぺトラのお父さんは、息を飲み込んだ。


「せめてっ、せめて体だけでもいいんですっ!」
「…申し訳、ありません。私、たちの…、力が、足りなかったばかりに、」


遺体を連れて帰ることは出来ませんでした。
と、最後まで言うことは、どうしても、できなかった……。


「…あぁ…、あぁ…!」


ぺトラのお父さんは、頭を抱えながら短く何度かそう呟くように言った。


「そんな気はしたんだっ!『あの人』のあの態度でっ、そんな気はしたっ…!!」
「…『あの人』?」
「リヴァイ兵長だっ!」


まるで睨むように、ぺトラのお父さんは私を見てきた。


「…リヴァイ兵長に、お会い、したん、です、か?」
「あぁ…。あの人は……。」


ぺトラのお父さんは、苦々しい顔をしたかと思ったら、それきり押し黙った。


「……あ、の…?」
「いや、やめよう。」
「え?」
「……娘が惚れ込んだ男だ。今更俺が何言っても、変わるわけでもない…。」


アイツはそれすら承知の上だった、と。
目に涙を溜めながら、ぺトラのお父さんは言った。


「…私は、」


どうして、こんなこと言おうと思ったのか、わからない。
だけど…。


「ぺトラ・ラルと言う女性ほど、素晴らしい女性を、知りません。」
「………」
「兵士としても、…1人の女性としても。」


どうしても、伝えたかった。


「彼女ほど、輝いている人、いないと思ってます。」
「…………」


それはもしかしたら…、


−兵長もだけど、フィーナも、兵士としてもカッコいいと思うし、人としても好きだよ−


ただの一言も、返すことのできなかった「彼女」への、懺悔なのかも、しれない。


「フィーナ!置いていくよ!」
「あ、はい。今行きます!」
「…『フィーナ』?」
「え?」
「……女兵士さん、あんたが『フィーナ』さん?」


それまで目に涙を溜め俯いていたぺトラのお父さんは、驚いた顔をして私を見ていた。


「…フィーナ、は、確かに私、です、が…?」


私の言葉に、ぺトラのお父さんは、あっ、と言う顔で、手で口元を隠した。


「あの…?」
「………あんたが『フィーナ』さんなら、これをあんたに…。」
「え?」


ぺトラのお父さんはそう言いながら、1通の、少し古くなった封筒を私に差し出してきた。


「これ、」
「…ぺトラが『あの男』の班員になったと、…班員に指名された日の夜書き上げた、私に宛てた手紙だ。」


その言葉に今度は私が驚いて、ぺトラのお父さんの顔を見ると、


「…あんたにも、読んでもらいたい…。」


悲しいほど泣きそうな顔で、笑っていた。

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bkm

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