Attack On Titan


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ラブソングをキミに


第57回壁外調査 1


「リヴァイさん、」
「…」
「おはようございます。」


私の声に、1度強く、私を抱きしめた後、大きく息を吐いて、リヴァイさんは起き上がった。
窓から差し込む光が、1日の始まりを告げる。


「フィーナ。」
「はい。」
「…死ぬなよ。」


支度を終え、部屋を出ようとした時、リヴァイさんがそう口にした。
今までの遠征で、リヴァイさんが私にそんなこと、言ったことはなかった。
だからやっぱり今回は、今までのそれとは異なるんだと思う。


「リヴァイさんも、」
「…」
「死なないでくださいね。」
「……お前、俺の言葉に対して返事はねぇのか?」
「…リヴァイさんも、私の言葉に対して返事、ないじゃないですか。」
「…………行くぞ。」
「はい。」


リヴァイさんは1度目を閉じ、大きく息を吐いて、この部屋を後にした。
1度壁外に出ると、何が起こるかわからない。
まして、私程度の戦闘能力の兵士「死にません」なんて、上辺だけの約束、出来るわけがなかった。
恐らくそれを感じ取っているんであろうリヴァイさんもまた、約束はせずに出ていった。


「ゲルガーさん!」
「んあ?」
「姉ちゃん!」


出発前、どうしても、と、ディータさんにわがままを言ってゲルガーさんに会いに来た。
すでにコニーもミカサも、ゲルガーさんの側に控えていた。


「あのっ、弟を、よろしくお願いします…!」
「………」


ゲルガーさんは深々と頭を下げる私を、黙って見遣った後、


「…任せておけって!こっちには歴史的逸材ミカサ・アッカーマンがいる!」


いつものようにニヤリ、と、笑った。


「…ゲルガーさん、ミカサもコニー同様新兵で、」
「コイツ下手したら俺やお前よりすげぇって!」
「いや、私よりはすごいと思いますが、」
「だろ!?だから大丈夫だって!なぁ、ミカサ?」
「………………」
「ま、コイツはこういう奴みてぇだから気にすんな!」


ばんばん、と、ゲルガーさんは私の背中を叩きながら言った。
……………今朝のリヴァイさんと比べて、なんて緊張感のない人なんだろう…。
それがすごくゲルガーさんらしいけど…。


「ゲルガーさんはあんなこと言ってるけど、初めての壁外なんだし、無理しないで気をつけてね。」
「…はい。」


ミカサは赤いマフラーを握り締めながら頷いた。
それを見て、私も1度頷いてから、コニーに目をやった。


「姉ちゃん、」
「コニー…!無茶しないでね。」


どこか達観としているようなミカサとは違い、明らかに不安を隠せずにいるコニー。
そのコニーを見ていたら泣きそうになってきて、思わず抱きついた。


−この計画はここにいる兵士のみで行う。例外はなく、ここにいる兵士以外には口外することを禁ずる−


「コニー。」
「うん?」
「…ゲルガーさんの言うこと、ちゃんと聞くんだよ?」
「え?」
「あぁ見えても、頼りになる人だから。」
「フィーナ、時間だ。」
「はい。…じゃあコニー、『また』ね。」


いくらミカサが強いと言っても、計画内容は知らされていない。
そしてもう1人の班員のトーマさんもマリア陥落後うちに来た人で、あの場には、いなかった。
だから、この班で計画全てを知っているのは、ゲルガーさんだけ。
そのことを少しでもコニーに伝えたくて、口にした私を見計らったかのように、ディータさんが声をかけてきた。
コニーに「また」と告げ、ディータさんの後に続き、準備に取り掛かった。
……各班、馬の準備も済み、エルヴィンさんを先頭に、カラネス区外門前へと向かう。
少しずつ、少しずつ、『その時』が近づいてくる。


「団長!全班準備完了しましたっ!」


…100人に満たない兵士にしか知らされていない、計画が…。


「付近の巨人はあらかた遠ざけた!開門30秒前っ!!」


無謀とも思える、…何より、本当にいるかどうかも定かではない「巨人化する諜報員捕獲作戦」が…。


「第57回壁外調査を開始するっ!前進せよっ!!」


エルヴィン・スミス団長の下、決行される…。

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