Attack On Titan


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ラブソングをキミに


ただ一言 1


「んじゃーまぁ、遠征までは俺とナナバが交代でお守りしてやるから大船に乗ったつもりで訓練に励め。」


翌日、昨日の「命令」通りゲルガーさんが部屋まで迎えにきた。
…リヴァイの部屋に行っちまったじゃねぇか、とボヤきながら…。
それを横目に朝の支度を済ませていった。




「なぁ…。」
「言うな。」
「…やっぱ機嫌悪ぃんだよな?」
「だから言うな、って!」
「どーすんだよ、アイツ機嫌悪ぃと誰っとも一ッ言も喋らなくなるんだぞ?」
「どうもこうもないよ!昨日なんて部屋に戻ってから寝るまで無言で唯一話したのは『おやすみなさい』だけなんだから!」
「おやすみ言うだけいいじゃねぇかよ!あぁいう状態のフィーナに、俺が場を盛り上げようとギャグ言ったら眉間にシワ寄せて無言で睨んでくるんだぞ!?変なところでリヴァイ化してきやがって…!」
「…それ、あんたが単にくだらなすぎること言ったからなんじゃないの?」
「俺は場の空気を少しでも良くしようとだなぁ、」


「あの…、」


支度が終わりゲルガーさんを見たら、廊下でナナバさんとヒソヒソと小声で話していた。


「…終わりましたが…。」
「あ?あぁ、そうか。じゃあ行くか!」


そう言ったゲルガーさんに背中を押され、訓練すべく中庭に出た。




「あれ?今日フィーナは?」
「……………」
「あ、あー、今日からね、フィーナは通常訓練に戻ることになったんだ!エルヴィンの命令で!ね?リヴァイ?」
「……おい、クソガキはどうした?」
「あ、は、はい、エレンでしたらさっきオルオが、(ハンジ分隊長は、団長の命令とか言ってるけどフィーナの奴、喧嘩して個人的に戻ったんじゃねぇだろうな…)」
「さっさと呼んで来い。昨日の続きだ。」
「はい!(…この人に仕えてきたこの数年で磨かれた俺の感が言ってる。間違いなくフィーナと何かあったな…。どーすんだよ、後少しで遠征だってのに…)」




「ねぇ、エルド、」
「聞くな、ぺトラ。」
「…兵長、フィーナと何かあったの?」
「だから聞くなって!俺も知らねぇんだから!」
「…元々怒ったような顔してることが多い人だけど、明らかに私たちに対してもピリピリしてるよ、ねぇ?」
「………だよなぁ……。」
「団長の命令、って話だけど…、ねぇ?」
「……なぁ、ぺトラ。」
「うん?」
「俺今まで『これ』を1人でどうにかしてきたから、お前がうちに入ってくれて、今猛烈に感謝してる。」
「ははっ。大げさだよ。」




そしてあの日から、時は流れてあと5日で遠征、というところまで差し迫った日。
朝から晩までエレンの実験と称し、他の班とは全くの別行動を取るリヴァイさんに、私が会うことはなかった。
リヴァイさんはあの時、自分を恨めと言った。
…もし…。
もし仮に、今回の遠征でコニーに何かあったら…。
私は………。


「フィーナ、お風呂行こうか。」
「はい。」


エルヴィンさんがナナバさんを私の監視役につけた最大の理由は、きっとコレだろうな、と思う。
本来なら元々同じ班員だったゲルガーさんだけで済むものを、言動が監視の対象となっている私は、入浴中も監視範囲としてみなされるため、同性であるナナバさんをつけた…。
………ほんと、あの人は抜かりがない人だ。


「あ、フィーナ。ナナバさんも。」
「やぁ、ぺトラ。あなたもお風呂?」
「はい。」


脱衣所で偶然、ぺトラに会った。
そのまま3人で浴場に向かう。


「…………」
「…………」
「…………」


「古城」の浴場なだけあって、兵舎のそれよりも格段に広いものの、今現在、私たち3人以外誰もおらず、滴り落ちる水の音だけが、やたらと響いていた。


「あ、のさぁ、」


その空間を打ち破ったのは、ぺトラだった。


「誰もいないみたいだし、聞いちゃうけど…、」
「…」
「フィーナ、兵長と何かあったの?」


前置きからして、そのことだろうとは思ったけど、やっぱりぺトラは、そのことについて触れてきた。


「答えたくないなら別にいいよ?」
「…………」
「ただ、どうしたのかな、って思って…。」
「…ねぇ、ぺトラ。」
「はい?なんですか、ナナバさん。」
「…それって、リヴァイがどうかした、ってこと?」


話に入ってきたナナバさんが、私の代わりにぺトラに尋ねた。


「どうかした、と言うか…。まぁ、ここのところ、兵長、ちょっとピリピリしてるなぁ、と。」
「あぁ…。」
「いつものことでしょ。リヴァイさんが機嫌悪いのなんて。」
「「………」」


ピチャリ、と、水滴がタイルに跳ねた音が響いた。


「ねぇ、フィーナ。」
「…何?」
「良い機会だから言うけど、私、兵長のこと好きだよ。」


金の髪に水滴をつけ、真っ直ぐな瞳でぺトラは私を見つめていた。

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bkm

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