Attack On Titan


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ラブソングをキミに


沈む世界と 3


泣くだけ泣いたらすっきりしたのか、


「…目、重た…。」


翌朝、腫れぼったい目とは対照的に、随分と頭も心も軽くなったような、そんな気分だった。


「…」


いつもよりも腫れている目で室内を見渡すと、リヴァイさんの姿はどこにもなく、


お前は今日休みだ。寝てろ。


と書かれたメモが、サイドテーブルに置かれていた。
…私「は」と言うことは、他の人たちは、何かしら仕事がある、と言うことだろう。
室内を見渡しても、リヴァイさんの制服はどこにもない。
…たぶんきっと、リヴァイさんは…。


「フィーナ!今日休みだろ?」
「…でも、部屋に1人でいても暇なので、」
「…」
「ミケさん、どうか、しました?」
「…いや…。」


案の定、外に出たらハンジさんやミケさんたち先輩兵士は制服を着て、後始末に追われていた。
…調査兵団壊滅危機にある今、その立て直しを図るための巨人侵攻の後始末は、最重要課題になっている。


「本当に休んでなくていいのかい?」
「…なんで私1人だけ特別扱いなんですか?まだ新兵なのに、」
「そう、だけど、さ…、」
「…エルヴィンさんはどこです?」
「あ、あぁ、エルヴィンなら確か、」


辛いのも、悲しいのも、そして…、


−無力だ。お前も、…俺もな−


己の非力さを感じているのは、みんな同じだ…。




「あーあー。フィーナもリヴァイに急に大人の階段昇らされちゃって、なんだか一気に遠くの人になった気がするよ…。」
「…それなんだが、」
「なにー?」
「ハンジによると『リヴァイの部屋で朝まで2人きり』って話だったが、」
「あー、うん、そうそう。リヴァイってばこんな時にちゃっかり、」
「でも何もなかったんじゃないのか?」
「…………えっ!?」
「臭いに変化がない。」
「なにそれ!あり得ないだろ!リヴァイあんな顔と態度でもしかして奥手とか言わないよねっ!?」
「…さぁ?」
「だっておかしいだろう!普通自分の部屋に弱りまくってる若い子を連れ込んだらあんなことやこんなことだってするんじゃないのかい!?するよね!!?するだろう!!?私だったらするよっ!!!」
「…お前が言うと単なる生態実験にしか聞こえないのはなんでだろうな…。」
「じゃあミケはしないのかいっ!!?」
「俺はそもそも『弱りまくってる若い子』を連れ込まないからなぁ…。」
「わからない!リヴァイが本当にわからないっ!!」
「…むしろお前に理解される方が問題だと思うんだが…。」




人間にとって「寝る」と言う行為は大切なようで、いつになく体が軽い気がした。


「エルヴィンさん。リヴァイさんも、」
「フィーナ!…キミは今日休みのはずだが?」
「…そう、なん、ですが、私だけ休むわけには…。」


そう言った私をリヴァイさんは見て…いや、睨んでいた。


「テメェ、俺のメモ気づかなかったのか?」
「……気づきました、けど、」
「かなり簡単な言葉で書いてやったつもりだが読めなかったのか?このバカが。」


リヴァイさんがものすごく不機嫌そうに言った。


「読めました、よ?」
「理解出来なかったか、クソガキ。」
「……………」


不機嫌「そう」ではなく、不機嫌の塊らしいリヴァイさんはいつになく鋭い目つきで睨んできていた。


「まぁまぁ…。フィーナ。」
「はい。」


そんなリヴァイさんを軽く諌めたエルヴィンさん。


「今は人数が人数だからね。数人ずつ交替で休暇を入れることになったんだ。」
「…はい。」
「だからまずフィーナ、キミから、ということになった。」


エルヴィンさんは、今のこの、沈んだこの世界からは生み出すことが難しいと思われるほど、穏やかに優しく微笑んだ。
そういうわけだから今日はゆっくりしてくれ、とエルヴィンさんは言って作業に戻った。


「…だ、そうだからわかったらさっさと部屋に戻って寝ろ。」


リヴァイさんはジロリ、ともう1度私を睨んでから作業に戻った。
誰もいなくなったこの場所で、空を見上げると、昨夜の雨が嘘のように青く青く、澄んだ空が、…籠の中いっぱいに、広がっていた。

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