Attack On Titan


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ラブソングをキミに


沈む世界と 2


「ち、ちょっとリヴァイ!何するんだよっ!!」
「休むことを薦めたのはお前だろうが。」
「いやそうだけど気絶させるってあなた、」
「俺の部屋に連れて行くから喚くな。」
「当たり前だろう!ちゃんと部屋で寝かせるんだよ!?……全く、フィーナを寝かせるためだからっていくらなんでも気絶させるなんて、って、うん?リヴァイ、今、俺『の』部屋に連れて行くって言わなかった…?…えっ!!?」




ふわふわと、浮いているような。
重く重く、沈んでいるような…。
不思議な感覚で、目が覚めた。
そう…、「目が覚めた」
あぁ、私寝てしまったんだ…、と、窓の外から響く雨音が耳を掠める中思った。
どうして寝てしまったんだっけ?
ハンジさんに休めって言われて、その後確かリヴァイさんに…、


「…っ…」


ハッと気を失う前のことを思い出し、それまで寝かされていたベッドから飛び起きた。
直後、


「っ!?」
「寝ろ。」


額を鷲掴みされたかと思ったら、ベッドに押し戻された。


「リ、リヴァイ、さん…」


私の額を鷲掴みしたのは、他でもないリヴァイさんの手だった。
リヴァイさんは私の隣でこちらに体を向け、枕に片肘を立てて目を瞑り横になっていた。


「………」


横目で顔をチラッと見ると、頬杖ついて目を閉じているリヴァイさんは本当に「寝ている」ようだった。
リヴァイさんはいつも、不要なことは話さない。
だけど…。
この時ばかりは、なんでもいいから、話してほしかった。


「リヴァイ、さん、は、」
「…」
「眠れるんです、か?」


ここは多分、調査兵団の仮宿舎としてあてがわれた宿の、リヴァイさんの部屋なんだろう。
月明かりが差し込む見慣れない部屋の天井は、冷たくて、でも…。


「寝なきゃもたねぇだろ。お前も寝ろ。」


チラリと横を見るとやっぱりリヴァイさんは目を閉じたままだった。


「…私、は、眠れません…。」
「…」
「寝たら、聞こえるんです…。」
「何が?」
「…助けられなかった人たちの、悲鳴が、」


こちらに向かって、手を差し出していた人だっていた。
でもその手が届いたのは、25万分のたったの100人。


「どうしてっ、もっと早く、気づかなかったんでしょうか…?」


普段はあんなにも煩わしいほど雑音が聞こえてくるのに。
どうしてあの悲鳴に、気づかなかったのだろう。
もっと早く、気づいてさえいたら、その数はもっと、増えていたのかもしれないのに…!


「どうして、私はっ、」
「お前はそればかりだな。」


リヴァイさんが、片肘をついていない方の手でふわりと私の前髪に触れた。


「『あの時』ミケが異変に気づき、そしてお前が叫び声に気づかなければ、俺たちはさらに事態の把握が遅れ、100人どころか生存者はゼロだった可能性もある。」
「…」
「今あの100人の命があるのはミケと、そしてお前の功績だ。」


あの100人の命が私の功績?
そんなこと、あるわけないじゃないですか。
生存者1人1人の顔をちゃんと見ましたか?
誰もが憔悴しきっていて、なのに瞳だけは、無意味に死んでたまるかと、ギラギラと、…まるで獣のように光っていた。
世界が平穏だった、ほんの数ヶ月前までは、普通の、争い方なんて知らない人たちだったのに。


「リヴァイさん、」
「…」
「私はっ、すごく、無力ですっ…、」
「あぁ、そうだな。」
「…」
「無力だ。お前も、…俺もな。」


月明かりが差し込む見慣れないこの部屋の天井は、冷たくて、でもとても優しく温かい。
この日、奪還作戦が終了してから、…ううん、シガンシナを目指し北上をはじめたあの日以降初めて声を出して泣き出した私を、リヴァイさんはずっと抱きしめてくれていた。

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bkm

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