Attack On Titan


≫Clap ≫Top

ラブソングをキミに


「エルヴィン・スミス」 1


「…ハンジさんて、」
「あぁ、まだ少し、ソニーとビーンの事件のショックがな…。」


104期が入団した翌日、再びハンジさんの班と合流した私は、未だがっくりと肩を落としたハンジさんを目の当たりにした…。


「だって!!フィーナだって落ち込むだろう!?可愛がっていた巨人が殺されたんだよ!!?」


そう言うハンジさんに、そもそも巨人を可愛がることなんてありませんから、と、言っていいものなのか真剣に悩んだ(結果、曖昧に笑っておくことにした)


「なんだろうねぇ、こう…、胸にぽっかり穴が開いたような…、すきま風が吹いてると言うかね…。私はきっとモブリットが死んでもこうはならないと思うんだけどね!」
「………あんたにこれだけ尽くしてやってるってのに、俺は巨人以下ですか?」


珍しく恨み節を言うモブリットさんに、少しだけ同情した。


「あぁ、そうだ。新兵の教育係にネス班長が指名されたそうだ。」


気になってたんじゃないか、と、モブリットさんが言ってきた。


「ネス、って、ディータさん、ですか?」
「あぁ。ディータ・ネス班長だ。」


…そう、か。
新兵の教育をディータさんがしてくれるのか…。
ディータさんはあぁ見えて面倒見が良いし、頼れる。
遠征までの間、細かいところまでコニーたちの面倒を見てくれるだろう…。
そんなことを思いながら、私たちはエレンを監視しているリヴァイ班と合流した。


「お前を半殺しに留める方法を思いついた。」


合流した時、リヴァイさんはエレンにそう言い放っていた。
…………もっとこう、言い方ないんですかね…。
いや、この人にはない、ってのは、とっくに知ってるけど…。
それでも、


「手足の先っちょを切り取っちまうが、どうせまたトカゲみてぇに生えてくんだろ?気持ち悪ぃ。」


リヴァイさんのこの言い方に、眉をひそめずにはいられなかった。




「(珍しい…。フィーナが兵長の言葉にあからさまにムッとした…)」
「(お前が怒るのは構わんが、頼むから兵長を怒らせないでくれ…)」
「(怒っちゃう?いっちゃう?ここでどかーん!と!!おっきいエレンにいっちゃう!?)」
「(分隊長が明らかに違うことを考えているのが、手に取るようにわかる…)」




「ま、待ってください!どうやったら生えてくるとか、わからないんです…。何か他に方法はないんですか?」
「確証もなく切り取るなんて危険です!エレンに何かあったら、」
「……………」


いつになく、鋭い目つきで睨んでくるリヴァイさんに、それ以上言葉を続けることが出来なかった。


「何の危険も侵さず、何の犠牲も払いたくありません、と?」
「い、いえ、」
「なら腹を括れ。俺たちも同じだ。お前に殺される危険がある。だから安心しろ。」
「…はい。わかりました。」


自分たちも死の危険がある、と言うリヴァイさんの言葉に、エレンは納得したようだった。
だけど…。


「じゃあ、実験していいよね?」
「リスクは大きい。かと言ってコイツを検証しないわけにはいかないからな。」
「計画は私がやっていいよね?エレン。わからないことがあるならわかればいい。自分らの命を賭ける価値は十分ある。」


そう言ってハンジさん筆頭に、エレンへの「実験」準備に取り掛かるため屋外に出ることになった。


「……不満そうだな。」
「べ、つに…、そういうわけじゃ、」
「『エレン』が心配か?」
「…………そうですね、自分のこと『気持ち悪い』なんて言う人が、直属の『上官』で『エレン』が精神的苦痛を受けてるんじゃないかって心配です。」
「………………」
「もっと言い方ありますよね?…この実験のことだって、もっと言い方を変えてちゃんと説明すれば『エレン』だって不安にならずに、」
「エレンエレンエレンエレン煩ぇ女だな!」
「ちょ、まだ話しが、」


フン!と私に背を向け、スタスタと屋外へと向かうリヴァイさんに、小さくため息が漏れた。


「そろそろいいかなー?エレン。」


ハンジさんが考えたエレン巨人化実験は、エレンを井戸の中に入れてそこで巨人化させる、と言うものだった。


「準備ができたら信煙弾で合図するから、それ以降の判断は任せたよ!」
「了解です!」


仮に今ここで巨人化したエレンの自我がなかったとしても、井戸の中なら拘束が可能だと言う理由から、エレンは井戸の底に下ろされた(それも確証のないことだけど)
…………わかってはいたけど……、本当に、「実験」なんだなぁ…って。
どこか胸に、痛みが走った気がした。
その場にいる全員に騎乗指示が出され、全員の騎乗を確認したところで、ハンジさんが緑の煙弾を空に向け撃ち上げた。
だけど…。


「………な、にも、起きません、ね?」
「…合図が伝わらなかったのかな?」
「いいや…。そんな確実性の高い代物でもねぇだろ。……おい、エレン!一旦中止だっ!」


そう言い、エレンが入った井戸に向かうリヴァイさんとハンジさんについていく。


「何かあったのー?」


ハンジさんが井戸から身を乗り出したことで、私も少し、井戸の中を覗いた。


「ハンジさん……。」
「…エレンッ!!」
「巨人に、なれません…。」


思わずエレンの名を呼び、口元を手で覆った。
井戸の中のエレンは巨人になるために自傷行為を繰り返したんだろう痕跡が…。
手も、口も、赤い赤い、血を滴らせて呆然と立ち尽くしていた…。

.

prev next


bkm

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -