Attack On Titan


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ラブソングをキミに


104期入団歓迎式 6


「所属兵団を選択する本日、私が話すのは、率直に言えば調査兵団への勧誘だ。今回の巨人の襲撃により、諸君らは既に巨人の恐怖も、己の力の限界も知ってしまったことだろう。しかしだ!この戦いで人類はこれまでにないほどの勝利へと前進した。エレン・イェーガーの存在だ。彼が間違いなく我々の味方であることは、彼の命懸けの働きが証明している。…さらに我々は、彼によって巨人の侵攻を阻止するのみならず、巨人の正体にたどり着く術を獲得した!」


その言葉に、恐らく訓練兵同様、私も壇中央に立つエルヴィンさんの顔を見遣った。


「彼の生家があるシガンシナ区の地下室には、彼も知らない巨人の謎があるとされている。」


確かにそれは次にある第57回壁外調査計画書での目的、備考欄に書かれていたこと。
いち早く、エレン・イェーガーの生家に辿り着くこと、と。
そしてそのためにマリアの大穴を塞ぐと言うことが必須である、と言うことが書かれていた。
………けど、今それを、ここで言う必要が、あるんです、か…?
1人でも多くの訓練兵確保のため?
…ううん、エルヴィンさんは絶対にそんなことしない。
なら…、


−君には何が見える?いや、違うな。…君には何が『聞こえる』?−


エルヴィンさんには、「何か」が、見えていて、私には聞こえない「何か」を、聞いているんだ…。
根拠なんて言うものはない。
ただ漠然と、そう思った。


「その地下室にたどり着けさえすれば、我々はこの100年に渡る巨人の支配から脱却できる機会を作ることが出来るだろう!我々はシガンシナ区の地下室を目指す。ただそのためにはウォール・マリアの奪還が必須となる。つまり、目標は今まで通りだが、トロスト区の扉が使えなくなってしまった今、東のカラネス区から遠回りするしかなくなった。」


その言葉に、ミケさんとぺトラが、壁内の地図を104期にも見えるように広げた。


「4年かけて作った大部隊の行路、全てが無駄になったのだ。…その4年間で調査兵団の6割以上が死んだ。4年で6割だ。正気の沙汰でない数字だ。今期の新兵にも1ヶ月後の壁外調査に参加してもらうが、死亡する確率は3割と行ったところか。」


エルヴィンさんの言葉に、ゆっくりと目を瞑り、過去を振り返る。
………初めての遠征で、…私を助けるため亡くなった、あの人。
自分の命と引き換えに、仲間を守ってくれた多くの兵士たち。
そして…、たった1人、壁を目指し、その願いが亡くなった1年後、ようやく叶えられた、イルゼ・ラングナーさん…。
数多くの犠牲の上でなりたっている、兵団…。


「この惨状を知った上で、自分の命を賭してやるという者は、この場に残ってくれ。自分に聞いてみてくれ。人類のために、心臓を捧げることが出来るのかを!」


その声に、今度はゆっくりと、目を開けた。
………人類のために心臓を、……そして「人として当たり前の行動」すらも、捧げなければいけない…。
他の兵団志願者は解散してくれ、と言ったエルヴィンさんの声に、整列していた新兵が一気に動き出す。
…当然だ。
「あの後」で、うちを志願するなんて、それこそとんだ「死に急ぎ野郎」なのだから。
動き出す人の並みを見るとはなしに、目の端に移した時だった。


「……うそ……」
「ん?どうかしたか?」


私の呟きに反応したゲルガーさんの声が耳を掠めた。
……なんで?
どうして動かないの?
憲兵団に行くんでしょう?
そのために頑張ってきたんでしょう?
ねぇ、そこにいちゃダメ…!
お願い、ここから立ち去って…!!
コニー!!


「…どうしてっ…!!」


止まることのない人の流れの中に、コニーは歯を食いしばりながら佇んでいた…。
そして人の流れがなくなり、数十名の新兵が、壇上正面に、整列していた。


「君たちは、死ねと言われたら死ねるのか?」
「死にたくありませんっ!」
「…そうか。みんな良い表情だ。…では、今!ここにいる者を、新たな調査兵団として迎え入れるっ!!これが本物の敬礼だ!心臓を捧げよっ!!」
「「「「はっ!!」」」」


エルヴィン団長を正面に、右手を左胸に当て、心臓を捧げたまだ若く、幼い兵士の中に、コニーの姿があった。


「コニー!!」
「姉ちゃん、」


解散、の号令の後、壇上の影から飛び降り、コニーに駆け寄った。


「何やってるの!?なんで残るのっ!!何考えてるのよっ!!」
「俺だって嫌だよっ!…実際に巨人を見て、どうやって奴らが人を喰うかってのも見ちまったんだっ!」
「だったらどうして…!!」
「だけど仕方ねぇだろっ!!………誰の骨かもわからない『殉死者』って言葉で片付けられた仲間もいるのに、俺ばっか安全な憲兵になんかなれっかよっ!今もどっかで頑張ってるエレンだけに任せて後は知らねぇなんて言えるわけねぇだろっ!!」
「…コニー…」
「それに姉ちゃんだって…、」
「うん?」
「姉ちゃんだって、『ここ』にいるのに、俺だけ内地行って巨人も何もかも、見なかったことになんて、できるわけ、ねぇだろ…。」


そう言って地面は睨みつけるコニーの目には、涙が浮かんでいた。


「…バカコニーッ!!!」
「………」
「壁外がどんなに大変かなんて、死んでからじゃ遅いんだよっ!?」
「………」
「もうほんとにっ!!………ほんとに、バカなんだから…!」


そこからはもう、声に出してしまったら、大泣きするんじゃないかって、歯を食いしばっていた。


「姉ちゃん、ごめんな…。」
「………」
「でも俺、…ちょっと自分のこと、好きになれた。」
「…コニーのバカ…」
「姉ちゃんにバカバカ言われるとすっげぇ傷つくんだけど…。」


コニーはエレンと同じ、15歳のまだ子供だ。
曰く、うちの家系で背の低い男の子だ。
だけどいつの間にか私より大きくなって、自分の未来をしっかり決めれる「男の人」に、なろうとしていた。


「ママたち泣いても知らないんだから。」
「え?…姉ちゃん、言ってくんない?」
「絶対嫌!」
「うっそ、どうしよう!俺憲兵なるまで帰って来ねぇとか言って家出てきたんだけど!今更調査兵になったとか言えなくね?」
「自業自得でしょ!」
「スプリンガー姉弟、話しはまとまったか?」
「ミケさん…。」


私とコニーが話していたら、ミケさんがやってきた。


「見て分かる通り、他の新兵は兵舎に連れて行かれた。」
「え!?…す、すみません、私っ、」
「コニーは俺が連れていく。フィーナ、お前はハンジたちに合流だそうだ。コニー行くぞ。」
「はい!…じゃあ、姉ちゃん、またな!」


そう言って去っていくコニーとミケさんを見送って、ハンジさんと合流した。

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