Attack On Titan


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ラブソングをキミに


104期入団歓迎式 4


コンコン


「入れ。」


トレイに紅茶が入っているソーサーを乗せ、持ってリヴァイさんがいるであろう部屋のドアを叩いた。


「し、つれい、します…。」
「…………」


ドアを開け室内に入った私をリヴァイさんは一瞥した。


「なんだ?エルドの差し金か?」


………………わかってるなら聞かないでください…。
どうぞ、と差し出した紅茶に対して、リヴァイさんは短く答えた。


「おい。」
「はい?」
「どこへ行く気だ?」
「……エレンが、ハンジさんに捕まっているので戻るつもりですが?」
「……………」


その言葉にリヴァイさんは何も答えない。
…なら、行っていいのか、と後ろを向いて、ドアを開けようとした瞬間、


「誰が出て行っていいと言った?」


リヴァイさんがドアに手をついてそれを阻んだ。


「……や、私、モブリットさんにハンジさんを止めるように、って、」
「違うな。」
「え?」
「モブリットはこう言ったんじゃないか?『ハンジが暴走して俺がキレた場合俺を止めろ』と。」


……………あなた、どこかで見てたんですか?
と、思うほど言い当てたリヴァイさんは、アイツが言いそうなことだとそのままドアに寄りかかった。


「かつ、お前はエルドからも頼まれた。『俺の機嫌をどうにかしてこい』と。」


…………この人、実は私の耳が良いとか言う以上に自分の耳が良いんじゃ…。


「俺の機嫌は直ってないぞ。欠片もな。」
「………」
「どうする?2人から頼まれてるんだろう?このまま帰るのか?」


……すごく悔しいと思うのは、この人は私がこのまま帰れないというのを理解した上でこういう言い方をしている、ということだ。
誰かに頼まれた、ということ自体、あまり無下に出来ないというのに、頼んできた人物は例え班が違えど「副班長」というポジションにいる私から見たら「上位」に位置する兵士なわけで。
それはつまり、半強制、みたいなところがある、と、捉えてしまう私としては、何の成果もないまま帰れるはずもなく…。


「お前に聞きたいことがある。」


あぁ、どうしよう、と思っていた時、リヴァイさんが口を開いた。


「お前とエレンの関係だ。」
「え?」
「何故アイツはお前を『お姉さん』などと言う?」
「え…、………私が年上だから?」
「馬鹿かお前?」


グッサリと何かが突き刺さった気がした。
人から呼ばれる呼び方に対してなんで?なんて聞かれても、そんなの呼んでる本人以外でわかるわけ、ないじゃないですか。
それに対して馬鹿、って…。


「お前とは縁もゆかりもねぇだろ?」
「…血が、って意味なら、まぁ、そう、です、が。」
「じゃあ姉ちゃんじゃねぇじゃねぇか。」
「…いや、エレンはそういう意味で言ってるんじゃなくて、」
「大体お前もお前だ。」
「え?」
「エレンエレンと馬鹿の一つ覚えに煩ぇ。」


目を閉じながら眉間にシワを寄せそう言うリヴァイさん。
…………これは、もしかして、もしかしなくても…、


「エレンは、コニーと同じ15歳の子供ですよ?」
「だが男だ。」


…………この人、エレンに嫉妬してるんだ…。


「でも、」
「あ゛?」
「コニーと同い年の男の子、弟にしか見えません。」
「…………」
「若い子よりも、おじさんの方が私は落ち着くのかもしれませんね。」
「お、じさんだと!?」
「だって、ゲルガーさんが『三十路なら十分おっさん』って言ってましたよ?」
「…あんのクソがっ!」


チッ!と盛大に舌打ちしたリヴァイさんに、思わず笑みが溢れた。
その直後、リヴァイさんが私を抱き上げた。
いつもとは違い、少しだけリヴァイさんより高い目線になる。


「お前も明日はエレンの実験に立ち会うんだよな?」
「…たぶん。リヴァイさん、は、」
「なんだ?」
「……庭掃除ですか?」


私が持っていたトレイを手に持ち、テーブルに投げるように置き、そのままどさり、と私をベッドに下ろした。
……長い間、誰も使っていなかったはずなのに、ここのスプリング死んでないようで、兵舎のベッドよりも格段に寝心地が良さそうな弾力があった。


「馬鹿言え。アイツの監視が任務なんだ。俺だって実験に立ち会う。」
「そう、ですよ、ね…。」


じゃあ庭掃除誰がするんだろう、なんて。
どうでもいいことを考えていた。
リヴァイさんの触れる指が、手が、唇が。
全てが優しく、温かくて、狂おしいほど愛しい時間だった。
眠る直前、今日は少し暑い、と言って窓を開けたリヴァイさん。
心地よい夜風が室内に流れ込んできたのを感じながら、眠りについた。
………それからどのくらい時間が流れたのかわからないけど…。
うっすらと聞こえた「何か」の物音に、意識が覚醒した。


「…どうした?」
「…今、」
「あ?」
「…聞こえませんでし、た?」
「何が?」
「『何か』が、」
「はぁ?」


何言ってんだ?とでも言いそうなリヴァイさん。
「何が」?と問われたら、「何かが」としか、言いようが、ない。
だけど今、微かにだけど、遠くで何か…、そう、まるで大きなものが、倒れるかのような音が、聞こえた気が…。


「お前、今何時だと思ってる?まだ陽も昇ってねぇぞ。」
「す、みま、せん…。」
「寝ろ。」


そう言ってリヴァイさんは私を抱きしめなおすと、再び目を閉じた。
…もしかしたらこの時、この聞こえたものがなんだったのか調べていたら、何かが変わっていたのかも、しれない。
だけどこの時の私は、気だるそうに、眠そうにしているリヴァイさんから離れてまで、その「何か」が「なんなのか」まで、探ろうと言う気は、起きず、そのままリヴァイさんの胸に顔をつけて、目を閉じた。

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bkm

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