Attack On Titan


≫Clap ≫Top

ラブソングをキミに


104期入団歓迎式 2


「フィーナ!来たね!」
「よろしくお願いします。」
「うんうん。じゃあ早速行こうか!」


リヴァイさんが兵舎に荷物を取りに来た翌日。
正式にエルヴィンさんからハンジさんの班での活動を言い渡された(だからってハンジさんの班員、というわけではなく臨時でハンジさんの班に入ったような形式だ)
その後すぐ、ハンジさんのところに行った私にハンジさんは、リヴァイさんたちのいる古城に行こうと言ってきた。


「い、行こうか、って、今からですか!?」
「当たり前じゃないか!この先に人類初の巨人化に成功したエレンがいるんだよ!これが急がずにいられないだろう!」
「で、でも今から行ったら古城に着くのはきっと真夜中じゃ、」
「気にしない気にしない!」
「だ、だけど、リヴァイさんが怒りますよ?こんな時間に、」
「フィーナがいればそれも問題ない!」
「い、いや、問題ないわけないじゃないですか!て、ハンジさんっ!!」


陽気に笑いながらハンジさんはスタスタ歩いて行く。


「フィーナ、無駄な抵抗はヤメろ。」
「モブリットさん、」
「この場合は『野放し』が正しい選択だ。」
「…野放し、って…。」
「こうなった場合、野放しにしてある程度分隊長の意思を尊重しておくことで、仮に暴走の危機が生じても先にエネルギーが分散されている分、抑えこみやすい。」


……どういう班なんですか、この班は……。
行くぞ、とモブリットさんに言われ、すごく納得いかないまま、ハンジさんの後について行った。


「フィーナもさー、乗馬うまくなったよねー!」
「ありがとうございます。」
「モブリット知ってる?初めて会った時、フィーナってば馬の乗り方も知らなかったんだよ!」
「それ何年前の話っすか。俺が知るわけないじゃないですか…。」


トロスト壁門に大穴が開けられ、エレンが巨人化してから、壁内は全体的に…ピリピリしているような、そんな空気があったけど…。
ハンジさんだけは、変わらずにいてくれて、どこかホッとした。


「よし、じゃあ行こう!」


馬から降り、手綱をもブリットさんに渡しながらそう言ったかと思ったら、ハンジさんは全速力でどこかに駆け出した。


「フィーナ。」
「はい?」
「あとは任せたぞ。」
「……えっ!?私ですかっ!?」


モブリットさんは私の馬の手綱も手に取りながら言った。


「お前この先で何が待ってると思う?」
「え?…ハンジさん風に言うなら『人類初の巨人化に成功したエレン』です、か?」
「違う違う!」


モブリットさんは大げさなほど手を振り否定した。


「この先で待ってるのは暴走した分隊長とそれにキレる兵長だ。」
「…………それって、」
「今回はお前がいる。キレる兵長を止めてくれ。」
「…い、嫌ですよ!機嫌が悪いリヴァイさんがどんなに怖いかって、」
「お前なら止められる!むしろお前に止められないなら他の兵士は死ぬ!!被害を最小限に抑えろ!いいな!?」


じゃあ馬は任せて、と、モブリットさんは去っていった…。
…………何それ、すっごい嫌な役回り…。
もしかして私エレンの暴走どうこうの前にこの役回りのためにここにいるんじゃ…。
でも臨時とは言えハンジさんの班員の私はこの班の副班長であるモブリットさんの無茶ぶりを一概に拒否出来るはずもなく…。
大きくため息を吐き、古城の中へと入っていった。


「ハンジさん?何やってるんですか?」
「あー、フィーナー!みんなどこにいると思う?とりあえず手当たり次第扉開けてるんだけどさぁ。」


…目的地がわかって駆け出していたわけじゃ、ないんですね…。
モブリットさん…。
毎回どうしてたんですか…。
なんて思ったとき、遠くでカタン、と、物音が聞こえた。


「あ、」
「あ?」
「あっち、で、今、物音が聞こえました、よ?」
「あっち!?あっちだね!?よし、行くよ!!」
「え?ち、ちょっ、引っ張らないでくださいっ!!」


私が指さしながら言うと、私の腕を掴み、再び駆け出したハンジさん。
…………これ、今回の遠征が終わるまで続くんだろうか……。
しばらく駆けていると、扉の隙間から灯りが漏れている部屋が目に入った。


「お!あそこだね!よしっ!」


ドンドンドンドンドンドンドン!!!!


その部屋の前に来た、と、思った瞬間、物凄い勢いで扉を叩き出したハンジさん…。
モブリットさん…、お願いです、すぐ来てください…。
ゆっくりとその扉が開かれると、


「こんばんはー、リヴァイ班の皆さん!お城の住み心地はどうかなぁ?」


はるばる来てあげたよ、っていう勢いで陽気に話し始めたハンジさん。
の、正面には、明らかに煩ぇのが来やがったって体全体で表現しているであろうリヴァイさんが座っていた…。
…………モブリットさん、早く…!


「ハンジ分隊長…、フィーナも。」
「ぺトラ…、遅くにごめんね。」


扉を開けてくれたのはぺトラで、私が謝罪の言葉を入れていると、


「お姉さん!」
「エレン!」


エレンが声をかけてくれた。


「大丈夫?怪我とか、してない?」
「あ、それはぜんぜん大丈夫です。お姉さんは…?」
「私、は、付き添い、と、言うか…。」
「…早かったな。」
「いてもたってもいられないよ!」


チラリ、とハンジさんの方を見遣った私に気づいたように(実際は背を向けててわかるわけもないけど)リヴァイさんがハンジさんに声をかけた。


「お待たせ、エレン。」


そう言いながら、エレンの傍にやってきたハンジさん。
…………きっとここにモブリットさんがいたら、誰も待ってないじゃないですか、とか言うんだろうか…。
…早くミケさんの班に帰りたい…。


「私は今、街で捕らえた2体の巨人の生態調査を担当してるんだけど、明日の実験にはエレンにも協力してもらいたい。その許可をもらいにきた。」


………そういう趣旨があったの?
そんなこと一言も言わないから、ただ「人類初の巨人化に成功したエレン」に会いたいんだとばっかり…。
でもまぁ…、そうだよね、ハンジさん分隊長だもん…。
そういう仕事はちゃんとするよね…。


「実験、です、か?オレが何を…?」
「それはもう!最高に!滾るヤツをだよ!」


………モブリットさん、明日の実験、エレンは本当に大丈夫なんですか?
頬を紅潮させ目をありえないくらいキラッキラに輝かせて話すハンジさんを見て、明日行われるらしい「実験」に一抹の不安を覚えた…。

.

prev next


bkm

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -