Attack On Titan


≫Clap ≫Top

ラブソングをキミに


沈む世界と 1


ウォール・マリア内で生存者を捜索。
滞在していた北区から左右に隊を分け、草の根をわけてでも生存者を捜した。
…だけど私たち調査兵団が合流地点、突出区の南に位置するトロスト区に連れて帰れた生存者は、わずか100人足らずだった。


「…25万分の100、か…。」


自嘲気味に言ったのは、ハンジさん。
トロスト区に入った時には、誰の顔にも、疲労と、そして絶望がありありと浮かんでいた。
そして今回の急で、…1人1人と増える生存者を保護しつつ壁内への帰還と言う、ある種無謀とも取れる作戦変更は、物資調達に参加した調査兵団兵士の7割の命の代償の元終わりを迎えた。


「うちも壊滅状態だね…。」


それなりの人数がいた調査兵団も、ウォール・マリア陥落と、そして今回のことで半分、ううん、3分の1以下にまで減った。
そして、


「退団、です、か…?」


キース団長の退団が発表された。
何故この時期に、と言う声もあったけれど、団長は「この時期だからだ」と答えるに留まった。
何もかもが、様変わりする。
まるで、世界そのものが、沈んでしまったように…。


「フィーナ?」
「はい?」
「…大丈夫かい?」


沈む世界の中でも、沈まない人はもちろんいて。


「大丈夫ですよ?」
「…そう?」


ハンジさんはじめ、調査兵団の先輩兵士も、そういう人たちのようだった。


「でもあなた、目の下にクマが出来てる。」
「…それは私だけじゃないですし。」
「そうかもしれないけど…、眠れてるの?」


ハンジさんが私の頭に手を乗せて尋ねてきた。
それに小さく頷いて答えた。
…本音を言うと、眠れていない。
多少は、寝ているとは思う。
だけど…。


−あ、あぁっ、たっ、助、け、−
−ぎゃああああああああっ!!!−
−どう、か、息子だけは、アルミンだけは、守ってやって、くださ−


目を瞑ると、「記憶の中」の人たちが、話しかけてくる。
彼らは別に、私を恨んでいるわけじゃない。
だけど人類を、恨んでいないわけでも、なかった…。
あの日、あの時、もっと早く、気づいていれば、あの人たちは助かったのかもしれない。
そう思うと、彼らの叫び声は、私の中で消えることなく、息づき続けていた。




「リヴァイ、フィーナのことなんだけど、」
「どうした?」
「…あの子、ちゃんと寝てるのかな?」
「寝てねぇだろうな。」
「寝てない、ってあなた、」
「正確には『眠ることが出来ない』ってところじゃねぇか?」
「…新兵にアレは、キツすぎたよね…。」
「何も新兵に限らねぇだろ。あの現実は受け入れがたかったはずだ。俺たちでも、な。」
「…そう、だね…。…だけど、」
「あぁ…。俺たちは前に進まなければならない。捕食された奴らが無駄死にだったなど、言わせないためにも…。」




西暦846年。
人類の歴史に、暗雲が立ち込めた。
その暗雲は、一向に晴れる気配などなく、世界は、沈み続ける。


「フィーナ!本当に大丈夫なの!?」


私たちがトロスト区に帰還してから1週間が経とうとした時、ハンジさんに腕を掴まれた。


「…はい。」
「はい、じゃないだろう!フラフラしてるじゃないか!きちんと休みなって!!」


帰還してから、…ううん、もしかしたら、壁外からシガンシナに向かうと決めたあの日から、熟睡した気がしない。
奪還作戦後に至っては、眠れても1〜2時間だけ。
ウォール・マリア内にいたうちは、気を張っていたせいかそれでもなんとかなっていたけど、さすがに体が悲鳴を上げ始めているようだった。
だけど…、


−あ、あぁ、たっ、たす、け、−
−ぎゃあああああああああっ!!!!−


寝たら聞こえる、あの声に、「休む」ことなんて、出来ずにいた。


「フィーナ。」


私とハンジさんのやり取りと見ていたのか見ていなかったのか、リヴァイさんに声をかけられた。
振り返ろうとした瞬間、


「寝ろ。」


ドン、と首に衝撃を受け、私は意識を手放した。

.

prev next


bkm

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -