Attack On Titan


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ラブソングをキミに


特別兵法会議 5


「………まだ、か、な…。」


リコちゃんたちと別れて、もうどのくらい経過したのか…。
待てど暮らせど、「調査兵団待機所」として指定された部屋の、私が入ってきたドアとは違う、もう1つのドア…審議所内部に直接通じているドアが開かれることはなかった。
このドアから向こうに、一般兵である私が入ることは許されていない。
だからどうこう出来ないわけだけど、ただ座っているだけと言うのもいたたまれず、立ち上がり、審議所内部の直通ドアではなく、私が入ってきた方のドアを開け、一般兵の立ち入りが許されている通路に出て、リコちゃんたちと別れたあたりをウロウロしていた時、


「フィーナ!」
「…リコちゃん!」


審議所の大きな大きな扉が開きガヤガヤと人が出てきた。
その中に、リコちゃんを見つけることが出来た(ミカサとアルミンとは一緒じゃないようだった)


「ど、どうだった!?」
「…あぁ、エレン・イェーガーは調査兵団預かりと言うことになった。」


リコちゃんは無表情にそう言った。
…リコちゃんはエレンをあまりよく思っていない…。
それが気になるところではあるけど、それでもエレンが憲兵団に引き渡され解剖、抹殺されるなんて自体だけは避けれたようでホッと一息吐いた。


「そう…、とりあえず良かった。」
「最も『リヴァイ兵士長の監視つき、反逆の意思が見えた時点で抹殺』と言う条件の元だがな。」


淡々と言うリコちゃん。
…そうか、リヴァイさんが…。
でもリヴァイさんなら、エレンを悪いようにしない、と、思うし…。


「………にしても、」
「うん?」
「『あの男』心底性格悪いな。」


わかってはいたけど、と、リコちゃんが、これでもかと言うほど眉間にシワを寄せて言った。


「あの男、って、エレン?」
「そっちじゃない。あのクソチビだ。」


リコちゃんが言う「クソチビ」なんて、1人しかいない…。


「な、何かあった、の?」
「…………」


リコちゃんはそれ以上、何も語らなかった。
けど…。
今の審議中に、リヴァイさんが絶対何かしでかしたんだ、とは、思った。


「私もう行くけど、」
「え?あ、うん。」
「お前、」
「うん?」
「…あのクソチビに何かされたらすぐに言うんだよ?」


ほんとーーーーーーに!嫌ってるんだろう表情でリコちゃんは言い放った。
……リヴァイさん、一体何したんです…。


「あぁ、それと。」


立ち去る直前、リコちゃんが私の方を振り向いてもう1度話しかけてきた。


「あの金髪、」
「金髪?エルヴィンさん?」
「…104期の方だ。」
「104期、って、アルミン?」
「…やたら頭の回転早そうだから気をつけな。」
「え?」
「たぶんさっきので気づいたと思うよ。お前とクソチビのこと。」
「……え!?」


一応隠してるんだろう?と言って去っていったリコちゃん。
…………確かに元々頭の良い子ではあったけど、さっきのあの会話だけで勘づくなんて…。
エレンがリヴァイさんの監視下につく、と言うことは、ミカサも当然調査兵団に来るだろうし、アルミンだってそうだろう。
……気をつけよう、うん。
リコちゃんと別れて、すぐさまハンジさんに言われた「待機所」へと向かった。


トントン


「入れ。」
「は!失礼します!」
「あぁ、フィーナか。」
「すみません、少し席を外していて…、」
「いや、構わんよ。」


中に入ると、ドアの正面にエルヴィンさんが立っていて、チラッと室内を見たら、窓際に立っているミケさんと、ソファの前にしゃがんでいるハンジさん。
そして、ソファ奥に座っているリヴァイさんと、


「エレン!ど、どうしたの!?その顔っ!!」
「お姉さん!」


リヴァイさんの手前には、顔(と言わず体中?)がボッコボコな傷だらけのエレンがいた。


「誰かに何かされたのっ!?」
「あ、あー…、いや、」
「何?どうしたの?」


傷だらけのエレンを見て、思わずハンジさんを押しのけソファの前にしゃがみ、エレンの傷口に触れるように手をあてながら聞いたら、エレンはどこか歯切れが悪く、目を泳がせるようにした。


「おい。」


その時、エレンの左頬を触れていた私の右手首をリヴァイさんが掴んだ。


「お前らどういう関係だ?」


この時の私は、エレンの傷を見て、気が少し、動転していたんだと思う。


「友人です!シガンシナ陥落以前から面識があります!」


そう言った私に対して、右手首を掴んでいたリヴァイさんの指がピクリと反応したのがわかった。


「……テメェ、報告書とは随分話が違うじゃねぇか。」


そこでハッと気がついた。
「あの」聴取の時に私は「教官補佐と訓練兵」そして「弟の友人」としか、言わなかった…。
嘘を吐いたわけじゃない。
ただ、話さなければいけないであろう場所で、本当のことを言わなかった…。


「ま、待ってくださいっ!お姉さんは悪くないです!!」
「…あ゛?」


そう言いながら、エレンは私とリヴァイさんの間に割って入ってきた。
…………今現在、私の右手首はリヴァイさんの右手に掴まれているわけで…。


「報告書って、俺の過去を知る人に聴取した、って奴じゃないですか!?」
「………だったらなんだ?」


ソファの前で膝をついている私と、ソファに座っているリヴァイさん。


「どんな内容の報告書なのか知りませんが、お姉さんはきっと『俺のために』そういう報告をあげてくれたんです!」
「……………」


そしてエレンがソファの前にいる私を庇うためにリヴァイさんの前に躍り出たわけで…。


「お姉さん、俺たちなんかにも優しくしてくれる人だから…。」
「……………」


この状況で、はっきりと言えることは1つ。


「お姉さんを責めないでくださいっ!!」
「……………」


今のこの状況は、「この人」には逆効果だ。
それはもう、痛いくらい(と言うか痛みしかない)掴まれた右手首がはっきり主張している。
痛いです、と訴えたいところだけど、仮に今ここで訴えたとしても全く聞き入れてもらえないだろうことを私は知っているし、そもそもの原因を作ってしまったのは私自身だ。
どうしようかと思ったその時、


「まぁ、落ち着け。」


この場の空気を和らげてくれたのはエルヴィンさんだった。

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