Attack On Titan


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ラブソングをキミに


特別兵法会議 4


「じゃあ、そういう事だからよろしくね!」
「はい。」


今後のことを簡単に説明され(と言っても詳細は後でモブリットさんに聞いてくれってことだったけど)去っていくハンジさんとミケさんに頭を下げ別れた。




「…………ハンジ。」
「…わかってるよ…。」
「本当に連れて行くのか?」
「だから、あなたが言いたいこと、わかってる、って!…これはエルヴィンの命令。そうでしょう?」
「…」
「エレン・イェーガーは『うち』を希望している。でも…、必ずしも『従順な兵士』になるとは限らない。」
「…だから元より懇意にしていたであろうフィーナを盾にする、か…。」
「盾にじゃないよ!もしもの時はフィーナに間に入ってもらおう、ってことだろう!?」
「…フィーナに間に入ってもらい、常に3人一緒にいたと言う、エレン・イェーガーの幼馴染で恐らくエレン同様フィーナが懇意にしていたであろうミカサ・アッカーマン、アルミン・アルレルト両名も取り込んで3人まとめて懐柔させようと言うことだろう?特にミカサ・アッカーマンの才能は目を見張るようだからな。」
「…」
「フィーナのあの口ぶりだとやはりエルヴィンが言ったように、報告書にあった『教官補佐と訓練兵』や『弟の友人』よりも個人的に懇意にしていた可能性が高い。」
「……」
「…そこに目をつけたエルヴィンに利用されるとは思ってもいないだろうな…。」
「…もうやめて。ただでさえ今はいたるところでピリピリしてるのに、ミケまでそんな言い方しないでよ。」
「…あぁ、悪かった。ただ、な…、」
「ただ?」
「ゲルガーも以前そんなようなこと言ってたが、」
「うん?」
「フィーナのあの性格がそうさせるんだろうが、長いこと同じ班員として行動を共にしていたら、『共に戦う同志、部下』と言うより『年の離れた妹』のような感情を抱くようになってな、」
「……………」
「どうも他の兵士より目をかけてしまって…。」
「ぶはっ!」
「…」
「あははははは!!そうなの?ミケとゲルガー、妹みたいに思っちゃってるんだ?」
「言っておくが、俺はまだいい方だ。ゲルガーに至ってはリヴァイと何かあろうものならイチイチ騒ぎ立てる煩い舅と化してる。」
「あー、ゲルガーっぽいね!」
「だからまぁ…、エルヴィンの決定でどうにも出来ないとは思うものの、…心配は心配だ。」
「ミケが言うと、妹よりも娘の心配って感じじゃない?」
「止せ。」
「…でもまぁ…、あまり不穏なことにならないといいよね。万が一憲兵に委ねられたら、エレンが処刑されるために連行されるところを、その目で見なければいけなくなるんだろうから…。」
「…そうだな…。」




「モブリットさんも行くんですか?」
「…俺は分隊長のストッパーとして、分隊長が王都入りする際は常に同行しろって団長に言われてるから…。」


私に詳細を伝えに来たモブリットさんが、ため息混じりに言った。


「…大変、です、ね…。」
「あぁ…、いや、大変なのは暴走したあの人を止めた当時の兵士だろ?」
「…当時?」
「過去、シーナ招集の時に巨人について聞かれ大暴走を起こしたと聞いている。」


だから常に同行しろとの団長命令だ、とモブリットさんは言った。
………なんだかすごく、ハンジさんらしい…。
じゃあ明日は俺も行くから、と言ってモブリットさんは去っていった。
モブリットさんの話によると、今回の特別兵法会議は3兵団の幹部立ち会いの下行われるらしい。
ハンジさんが言っていたように、裁かれるのは訓練兵エレン・イェーガー。
その存在の意義について…。
人類にとって悪害か、有益となり得るのか…。
結果次第では、エレンは解剖され、殺される…。


「そんな子じゃ、ないのに…。」


私の知っているエレンは、キラキラと、輝く瞳で『外の世界』を語る男の子。
…シガンシナ陥落以降はその思いが、より強くなってエレン自身の機動力となっているように思う。
それは良い意味でも、…悪い、意味でも…。
その点では、やや心配は、心配。
だけど、人を襲ったり、ましてや捕食対象とするだなんて、考えられない。
………そもそもエレンが巨人化する、と言うこと自体、今だ信じられないんだけど、ね…。
悶々とする思いを抱え、1人眠れるぬ夜を過ごした。


「リコちゃん?」
「…フィーナ!なんでお前がここに、」
「フィーナさん!」
「フィーナ、さん…。」
「…アルミン、ミカサも…。」


翌日、分隊長であるミケさんの同行者として無事シーナ入りを果たした私。
そのまま午後から始まる特別兵法会議のため、審議所に向かった私たちは、現地でリコちゃんとアルミン、ミカサに会った。


「私、は、ミケさんの同行で…。リコちゃんたちは?」
「私たちは証人として呼ばれている。」
「…証人、て、」
「エレン・イェーガーの行動についての証人だ。」


…リコちゃんとは、結局まだゆっくりと時間を作れずにいた。
だけど…。
この間の言葉といい、今のリコちゃんのこの口ぶりといい、エレンを、よく思っていないと言うことは明白だった。


「お2人は、知り合いだったんですか?」


私とリコちゃんの顔を見比べながらアルミンが口を開いた。


「あ、うん。同期、だから…。」


そうなんですね、とアルミンが言う。


「話の途中にごめんね。フィーナ、この先の右端の部屋がうちの待機所だからそこにいて?」
「あ、はい。ハンジさんたちは…?」
「私たちもそろそろ準備しなきゃね。」


ね、と言ってミケさんの肩を叩きハンジさんたちは去っていった。


「今の、調査兵団のハンジ・ゾエ分隊長とミケ・ザカリアス分隊長ですよね?」


去っていった2人の後ろ姿を見ていると再びアルミンが声をかけてきた。


「よく知ってるね。コニーはリヴァイさんやエルヴィンさんのことすら知らなかったのに。」


さすがアルミンだな、と思った。


「そう言えば、」
「うん?」
「…トロストでリヴァイ兵長がコニーを捜していたんですが…。」
「あぁ…。」
「どうしてですか?」
「え?どう、して、って………、私の弟だから?」


アルミンの言わんとしていることがわからず、そのまま答えた。


「お喋りは終わりだ。私たちも行くぞ。」


私の言葉を受けて何かを言おうとしたアルミンを、まるで遮るかのようにリコちゃんが言ってきた。
私に背を向ける直前、一瞬だけ目が合ったリコちゃんが何かを言いたそうにしていたのが見えた。
でもそれが音になることはなくリコちゃんは私に背を向け歩き出した。
それを受けて、アルミンとミカサが私にペコリ、と頭を下げ、リコちゃんに遅れないようにと歩き去っていった。
みんながいなくなり、冷たく長い廊下に1人、取り残される。
知らず知らずに、大きなため息を吐いた。
これから、エレン・イェーガーの処遇が決定する裁判が行われる…。

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bkm

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