Attack On Titan


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ラブソングをキミに


特別兵法会議 3


「また、王都に行くんです、か?」


リヴァイさんが戻ってきた翌々日の夜、2人ソファに座り、お酒を傾けながら、再びリヴァイさん、と、言うか、兵団幹部の王都入りを聞かされた。


「…十分あり得る反応だったが、少し厄介なことになってな。」
「やっかい…?」
「基本エルヴィンがなんとかするんだろうが、俺やハンジたちも呼ばれてる。」


リヴァイさんは、「兵士長」としての職務内容について、全てを話さない。
し、聞いても機密事項であれば教えてもらえるわけがない。
…故に、何がどう「厄介」なのかは、追求をしない私にはわからない。
でも、エルヴィンさんがなんとかする、と言うことは、大丈夫なんだろう。と、思う。


「また、しばらく行ってるんです、か?」
「…『それ』自体がどう決着するかにもよるだろうが…、まぁ数日は行ってることになるだろう。」


リヴァイさんが眉間にシワを寄せながらため息と吐いた。


「大丈夫ですか?」
「あ?」
「最近、忙しそうだから…。」


リヴァイさんは元々顔色が良いとは言難い人だけど(寝不足も手伝ってるし…)ここ数日は本当に疲れた顔をしている気がする。


「まぁ…、暇じゃねぇな。」


…………この人はどうしてこういう言い方しか出来ないんだろうか…。
いや、すごくリヴァイさんなんだけど…。


「なんだ?お前が癒してくれるのか?」


うーん、と私が悩んでいたら、リヴァイさんが私の首筋に顔を寄せながら言ってきた。


「ドブ臭ぇ内地の豚野郎共がみんなお前のような人間だったらいいんだけどな。」


ソファに私を押し倒し、首筋にキスしながらリヴァイさんは言う。


「そ、れは、それで、」
「うん?」
「困る、と、思います、よ?」
「…………」


リヴァイさんは体を起こし、無表情に組み敷いた私を見てきた。


「俺は別に困らん。」
「………そう、です、か…?」
「あぁ。」


そう言うとリヴァイさんは私の耳たぶあたりに唇を寄せ動かなくなった。


「リヴァイさん、」
「なんだ?」
「ここで寝ると、疲れが取れませんよ?」
「…ベッドまで行くのがめんどくせぇ…。」


あぁ、この人本当に疲れてるんだな、って。
普段こういうこと言わない人(神経質だからだろうけど寝るのはベッド!ってところがある人)だからか、余計そう思った。


「じゃあ連れて行きます。」
「…何?」


よいしょ、と体を起こした私に、リヴァイさんは信じられないものを見るような目で見返して来た。


「これでも兵士だから、足怪我してた時は無理でしたが、今はもうリヴァイさんくらいここからベッドまで運べる体力あります。」
「………………」
「おんぶがいいですか?抱っこが、あっ!」


私が話している途中でリヴァイさんは無言でムクリ、とソファから起き上がって、スタスタとベッドに歩いて行った。
………………うん、リヴァイさんらしい反応だ。
あのエルドさんがおんぶすることを拒否したくらいだから、いくら誰も見ていないソファからベッドまでの距離とは言え、私からのおんぶも抱っこも嫌がって、絶対に自分から歩いて行く選択をすると思った。
…まぁでも本当にリヴァイさんくらいの体重でこの距離なら普通に運べる。と、思うから、いいんだけど。


「ちゃんと寝てくださいね。」
「……………」


さっきの私の言動にご立腹らしいリヴァイさんは、返事すらせず、私に背を向け横になった。
このなんと言うか…………どこか子供のような態度を取るリヴァイさんが、すごく可愛く思えて、愛しいと思う。


「子守唄、歌いましょうか?」
「黙って寝ろ。」
「はい。」


クスクスと笑いながら言う私に、心底不機嫌そうに背を向けたまま返事をするリヴァイさん。
後ろから抱きついて、リヴァイさんの背中に耳をつけて横になれば、体の前に伸びた私の手を包み込むかのように、リヴァイさんの手が触れたのがわかった。
その手に答えるように握りしめれば、より強く、握り返してくれた。
……エレンが巨人化する、というのは驚きだけど、壁の穴も塞げたし、…多くの駐屯兵団、訓練兵団の兵士の犠牲があったけど、でもきっと、大丈夫。
この時は、本当にそう、思っていた。
翌朝行ってくる、と言ったリヴァイさんを送り出し、私の仕事(現在は崩壊したトロストの復興作業に狩り出されている)に行こうとした時、


「あ!いたいた、フィーナ!」
「ハンジさん。ミケさんも…、どうしたんですか?」


ハンジさんとミケさんに呼び出された。
私はミケさんの班だけど、リヴァイさんの話で分隊長も王都入りすると聞いていたため、この2人がまだここにいるということに少なからず驚いた。


「私たち明日、シーナに行くんだけど、」
「あ、はい。聞きました、リヴァイさんから。」


てっきり一緒に行くものだと思ったら、どうもリヴァイさん(と、たぶんエルヴィンさんも)は先に王都入りして、ハンジさん、ミケさんは後から合流するようだった。


「そう?じゃあ話は早い。フィーナも一緒に行こう。」
「…………え?な、なんでですか?」


リヴァイさんの話だと、王都に招集されているのは各兵団幹部のようだし、明らかに一般兵の私が王都入りするのはおかしい。
そう思いハンジさんに聞き返したら、ハンジさんもきょとん、とした顔をした。


「なんで、って、…シーナで何をするか、リヴァイから聞いてないの?」
「…いえ、そういう話は全く…。ただ、ハンジさんたちとしばらく王都に行く、と、だけ、で…。」
「アイツは肝心のことを言わないな…。」
「まぁ…、それだけ口が堅くて信用できる、ってことじゃないか。」


ハンジさんが苦笑いをしたのがわかった。


「明日、特別兵法会議が開かれる。」
「え…?」


特別兵法会議。
会議とは名ばかりの、兵士・兵属を裁くための刑事裁判のことで、ダリス・ザックレー総統に決定権を一任する裁判…。


「な、」
「うん?」
「何について、開かれるんです、か…?」
「…訓練兵エレン・イェーガーの処遇を決定するために。」


その裁判があると言って来たミケさんに聞き返すと、今度はハンジさんが答えた。


「処遇、って、エレンは調査兵団を希望しているんじゃないんですか?」
「…やっぱり、」
「え?」
「フィーナは聴取で話した以上にエレン・イェーガーについて知ってるんだね?」
「………え、」


いつになく、ハンジさんが真面目な顔で私を見てきた。


「わ、たし、は、」
「あぁ、別にそれについて責めるつもりはないから気にしないで。それより今はエレンだよ!…憲兵団も彼を『欲しい』と言ってきた。」
「え?ど、どうして!?」
「…巨人化する彼を解剖、抹殺するためさ。」


ハンジさんは、冷たく言い放った。
それに対して咄嗟にミケさんを見上げるも、ミケさんも小さく頷くだけだった。


「どうしてそんな、」
「…壁内の人類の安寧のため、ってところじゃないかな?」
「で、でもエレンは、そんな、人をどうこうなんて子じゃ、」
「そこらへんは私たちにはわからないけど、ただ…、」
「ただ?」
「…巨人化する力を持つ彼の協力を得られるのであれば、『私たち』はそれに縋るしかない。」
「…だから、特別兵法会議が…?」
「そうだ。そこで訓練兵エレン・イェーガーと、そして人類の明暗が決まる。」


少し大げさな言い方だがな、と、ミケさんが、まっすぐと私を見て言った。


「…どうして、」
「うん?」
「そんな、大事な会議がある時に、どうして私も同行することに…?」


ハンジさんがチラッとミケさんと目を合わせた後、再び私を見て口を開いた。


「審議される部屋自体には、入れることは出来ないけど、」
「…」
「その後のことを考えたらいてくれた方がいいかなぁ、って。」
「…その後?」
「そう。エレンが『うち』に来ると決まった時、知り合いがいた方がいいだろう?」


ハンジさんはにっこり笑いながら言う。
……私もそこまでバカじゃない。
だからこれは、たぶん嘘、だと、思う。
…ううん、嘘、と言うより、私を王都入り『させていた方が良い』と言うことの本当の理由を言ってない感じに聞こえる。
でもそれは、リヴァイさんがよくすることだ。
『役職を持った兵士』として『一般兵』には言えないこと。
…つまりこれは、エルヴィンさんの命令である可能性が、高い…。


「わ、かりました。」
「そ?じゃあ、後でモブリットから、」


頷いた私に、今後のことを話してくるハンジさんを見て、なんだかとても、胸が締め付けられたような、そんな感覚に陥った。

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bkm

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