Attack On Titan


≫Clap ≫Top

ラブソングをキミに


特別兵法会議 1


翌日。
夜明け前に全兵士が招集され、巨人の動きが鈍っている今、一斉にトロスト区内へ入り巨人掃討作戦が開始された。


「…っし!こっちは終わったな?」
「はい。」


昨日に引き続き、ゲルガーさんと共にトロスト区内の巨人掃討作戦を遂行していた。
ちょうど、私たちが任された地域にいる目ぼしい巨人は一掃された、と言う時。


「フィーナ。」
「はい、なんですかミケさん。」
「エルヴィンが呼んでる。」


ミケさんに声をかけられた。


「エルヴィンさん、が、です、か?」
「あぁ。上にいる。」


上、と言いながらトロスト壁門の上の方を親指でさしながらミケさんは言った。


「じ、じゃあ、ちょっと、」
「あぁ。」
「行ってきます。」
「まだ掃討作戦終了の合図が出ていない。気を抜くなよ。」
「はい。」


ミケさんの言葉に、立体機動を用いてエルヴィンさんのいる壁の上を目指した。




「…相っ変わらず、早ぇよな、アイツ!もう見えなくなったぜ!」
「純粋なスピードだけなら、リヴァイにすら引けをとらないだろうな。」
「あれで後もう少し、戦闘能力っつーのがあったら、あ!っと言う間に分隊長クラスだよな?」
「まぁ…、個々の能力は一定以上到達したらその先は、なぁ…。」
「後どうせならもう少し、背高かったらなぁ?」
「身長はどうしようも出来ないからなぁ…。」
「欲を言えば、胸ももっと欲しいところだよなぁ?」
「…いや、そこはもう本当にどうしようも…。」
「それでもっと自信持てばそれなりにイイ女だと思うんだけどな?」
「…………お前は何の話をしてるんだ?」
「だってミケもそう思わねぇか?戦闘能力あって、背高くて胸もあって自分に自信持てば、」
「まるで、」
「あ?」
「ナナバのことを言ってるように聞こえるんだが。」
「…誰も、んなこと言ってねぇじゃねぇか…。」
「そうか。」
「あぁ、そうだ!」




「エルヴィンさん、」
「あぁ、フィーナ。わざわざすまない。」
「いえ…。」


壁の上はなんと言うか…、調査兵団にしろ、駐屯兵団にしろ、幹部クラスの人間がいて、こう…、どこかピリピリとしているような空間だった。


「来てもらったのは他でもない。君も尋問対象者として名前が上がったためだ。」
「…尋問、です、か…?」
「あぁ。」


エルヴィンさんが、壁に開いた穴を塞いだ大岩を指さしながら口を開いた。


「あの岩。どうやって持ち上げたか聞いたかな?」
「…巨人化に成功した人が、持ち上げたと、聞きました、が?」
「……その巨人化した人物の過去について知る人間を例外なく聴取している。」
「え?過去を知る、って、…私の知り合いなんですか!?」


エルヴィンさんが私を見据えた後、ゆっくり話始めた。


「巨人化した『彼』の名は、エレン・イェーガー。」
「え、」
「104期訓練兵だそうだ。」


エルヴィンさんの、ガラス玉のような青い瞳に映る、私が見えた。


「面識はあるかい?」
「…コニー、の、友人で…、私、も、交流は、あります。」
「そうか。」


エルヴィンさんは1度軽く頷いた。


「あ、あの、」
「うん?」
「ほ、本当に、エレンが、巨人に…?」


私の言葉に、エルヴィンさんはもう1度大岩を見つめた。


「私自身が実際にこの目で確認したわけではないが、そう聞いている。」
「…はい。」
「その話をしたピクシス司令や他の駐屯兵が嘘をつくメリットもないことから、人が巨人化したこと、その人間は104期訓練兵エレン・イェーガーであることは間違いないだろう。」
「…そう、です、か…。」
「失礼します!訓練兵エレン・イェーガーの件で調査兵フィーナ・スプリンガーを呼びに参りました!」
「来たか。…行こう、ピクシス司令が待っている。」


エルヴィンさんに背中を押されて行った先は、ピクシス司令の他、駐屯兵団の団服を着た人数名と、憲兵団の団服を着た人数名がいた。


「調査兵フィーナ・スプリンガーじゃな?」
「はい。」
「お主に、エレン・イェーガーについて問う。」


聴取内容は至って明確。
「エレン・イェーガーと言う人物について述べよ」と言うものだった。
エルヴィンさんに話したように、弟の友人で私自身も彼と交流があること。
104期訓練兵団教官補佐として働いていた時に、教官補佐と訓練兵と言う間柄であったことを伝えた。
ただ…。


「他の訓練兵と比べてどうだった?」
「…特に、変わった様子は…。」
「隠しだてしても無意味だぞ。正直に答えろ。」
「まぁまぁ、そうせっつくな。」


あの日、シガンシナで出逢い、訓練兵になったエレンと再会し、他の訓練兵より目をかけていた、という私の主観的要素だけは言えずにいた。


「ふむ…。結構、戻りたまえ。」
「は!失礼します!」


ピクシス司令の言葉に、敬礼をしその場を後にした。
立ち去る間際、チラッとエルヴィンさんを見たら、真剣な顔で憲兵団の兵士と何かを話していた。


「フィーナ、お前ここで何してる?」


とりあえずミケさんのところに戻ろうと歩いていた時、リヴァイさんがやってきた。


「…少し、エルヴィンさんに呼ばれたので…。」
「そうか。エルヴィンはどこだ?」
「あ、今そっちにピクシス司令と、」


リヴァイさんは私が指した方を見て、わかったとでも言うように軽く頷いた。


「あぁ、そうだ。」
「はい?」
「今しがた掃討作戦が終了した合図があった。これからお前たち一般兵は殉死者の確認、回収作業へ移れ。」
「はい。」
「二次被害が起こる前に回収しろとのことだ。」


遺体が腐敗し、そこから感染症が蔓延し二次被害が起こる前に、ということだ。
「上」のその決定は至極当然のことだと思う。
だけど…。


「リコ、ちゃん?」


リヴァイさんと別れ、ミケさんのところに戻ったら、ミケさんも上に呼ばれているようでこの場を離れると言った。
その時に「遺体が集中していると思われる穴を塞いだ大岩付近を手伝ってくれ」と言われ、口をマスクで覆い大岩付近に向かっている時、壁門前広場だった場所に佇んでいるリコちゃんを見つけた。


「良かった!無事って聞いてたけど、やっぱり心配で、」
「…………」
「……リコちゃん?」


リコちゃんは私の言葉に反応せずに、ただ一点を見つめていた。
その視線の先を辿ると、


「……イ、アン、さん……?」


首から下を失くし、薄目を開けてこちらを見ているかのようなイアンさんの頭部が転がっていた…。


「馬鹿げてるよな?」
「…」
「アレしか残ってないなんて…。あぁなってしまったら意味がないだろう?」
「リコちゃん、」
「部下を守るために、自分から食われにいくなんてっ、馬鹿げてる…!」


二次被害を起こさないため、上が決定したことは理解出来る。
だけど…。
泣く時間すら、与えられないなんて、そんなの間違ってる。
目に涙を溜めながら歯を食いしばり、ただただ、イアンさんの頭部を見つめているリコちゃんに、かける言葉が見つからなくて…、私もただ黙って、リコちゃんの背中を摩りながら、二度と光を宿すことはないイアンさんの冷たくなった瞳を見つめていた。

.

prev next


bkm

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -