Attack On Titan


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ラブソングをキミに


「リヴァイ兵士長」 6


「な、なんてことだ…!!」


それは誰の言葉だっただろう。
トロストの壁門が見えた、と思った直後の悲鳴にも近い声だった。


「やはり破壊されていたか…。」
「団長!次々と中へ入っていってます!」


5年前、私たちが到着した時はすでに事は起こり、終わった後だった。
でも今回は、壁はまだ破壊されて間もないようで、今もなお、巨人が群がり壁内へと入ろうとしていた。
その時だった。
傾きかけたえんじ色に燃えるような陽の光の中で、黄色の煙弾が上がったのが見えた。


「団長!黄色の煙弾です!」
「駐屯兵か…。…全員、馬を捨て立体機動に移れ。壁伝いにトロスト区内に入る!」
「「「はっ!!」」」


エルヴィンさんから指示が下され、全員大穴が開いた壁門を避け、立体機動を用いて壁を登った。
私たち一般兵に先駆け、リヴァイさん、そしてリヴァイ班はじめ精鋭が、先にトロスト区内へと向かっていた。




「おい、ガキども。これはどういう状況だ?」
「あ、あなたは、リヴァイ、兵士長…!」
「…り、ばい…?」
「エレン!しっかりっ!!」
「おい、さっさと答えろ!」
「5年前現れた超大型巨人が再びトロスト壁門を破壊!」
「お前…、」
「ドット・ピクシス司令の命により我々駐屯兵団および訓練兵団は全戦力で唯一巨人化に成功した人間104期訓練兵エレン・イェーガーの協力を得て、大岩を用い開いた穴を塞ぐことに成功、今はその後始末ですっ!」
「…リコ…。」
「我々はエレン・イェーガーが任務遂行するにあたり全戦力で護衛にあたりガスもブレードも尽きようとしています!『リヴァイ兵士長』あなた方の力をお借りしたいっ!!」
「……エルド、グンタ、オルオ、ぺトラ!聞いた通りだ!お前ら早急に付近にいる駐屯兵の救援に当たれ!!」
「「「「はっ!!」」」」
「おい、リコ。お前はガキども連れてさっさと上に登れ。そろそろ上に着くだろうエルヴィンにも今の話を伝えろ。」
「はっ!」
「あとそこの寝てるガキ。104期と言ったな?お前らも104期か?」
「は、はいっ!僕たち3人とも104期です!」
「ならばコニー・スプリンガーの安否は知っているか?」
「え?コニー…、です、か?い、いえ、僕たちとは任務が違ったので、」
「少なくともこの作戦前は生きていたと言うことか?」
「は、はい!この作戦開始前にはいるのを確認しました。」
「ならいい。お前らは行け。」
「はいっ!(…でもなんでリヴァイ兵士長がコニーの名前を…?)」
「アルミン、エレンは私が担ぐ。ので、大丈夫。」
「え?あ、あぁ…。」
「おい、お前たち!…ミカサにアルミンだったか?『リヴァイ兵士長』の指示だ。壁の上に行きな!」
「はいっ!」



「兵長!近くにいる駐屯兵のところに救援に回ってはいますが、」
「(時すでに遅し、か…)他の駐屯兵やうちの人間も降りて来はじめた。救援はそっちに任せて、俺たちは本来の仕事、巨人討伐に回る。」
「「「「はいっ!」」」」
「2人1組で動け。ここの中にいる巨人どもを一体残らず始末するだけの話だ。無茶はするな。」
「兵長はどうされるんですか?」
「…俺は討伐しつつ一旦エルヴィンの元に行く。何かあったら俺の指示を待つより独自の判断に任せる。…あと、」
「はい?」
「…これは命令ではないが、104期のコニー・スプリンガーと言うガキの生存がわかったら教えてくれ。」
「コニー・スプリンガー、です、か?」
「……絶対数は決まっている。1体ずつ減らしていくだけだ。無茶はするな。」
「「「「はいっ!」」」」
「…………ねぇ、エルド。『スプリンガー』って、」
「あぁ。…フィーナの弟だ。」
「兵長に気にかけてもらえるとは何という生意気なガブッ!」
「オルオ、討伐前に自分から怪我するなよ…。」
「……でもエルド、『104期』ってことはもしかしたらもう…、」
「あぁ…。『その可能性』については、十分わかってると思う。兵長も、…何よりフィーナ自身も。」
「…」
「と、おしゃべりはここまでだ。さっさと巨人全て討伐するぞ!」




「ゲルガーさん!!」
「………っぶねー!!サンキュー、フィーナ!」


トロスト区内は混沌と化していた。
トロスト区にいた住民は全て避難が済んだようだったけど、多くの兵士の命と引き換えに、穴を塞いでいた…。


「あと何体だって?」
「…………少なくとも、この近辺には8体はいるかと…。」
「おいおい、まさか寝ずに討伐させる気じゃねぇだろうなぁ…。」
「でも、」
「あ?」
「…暗くなって巨人の活動が鈍ったところを一気に叩く方が楽な気が…。」
「お前頭良い!おい、そうしようぜ!!ミケ、エルヴィンに言って、」
「ダメだ。エルヴィンからは『1秒でも早く壁内にいる巨人を討伐し、二次災害を防ぐべく犠牲となった兵の確認、回収作業に当たれ』とのことだ。すぐにサボろうとするな。」
「…だとよ、フィーナ。すぐサボろうとするな。」
「お前のことだ、ゲルガー。」


ミケさんとゲルガーさんのいつも通りのやりとりに、どこかホッとした。




「見ろよ、あれリヴァイ兵長だ…。」
「…意外と小さいな…。」
「おい、そこのお前。」
「(聞こえた!?)は、はいぃっ!?」
「訓練兵だな?コニー・スプリンガーはどうした?」
「え?コ、コニー、です、か?コニーなら、」
「お兄さん!!!」
「お、(兄さん?)」
「姉ちゃんは!?姉ちゃんは無事ですかっ!!?」
「………『姉ちゃん』なら今、下で討伐に当たってるはずだ。」
「無事なんですね!良かったぁ…!…まぁ、お兄さんがいるから大丈夫だろうとはどぅわっ!!?」
「………誰がいつテメェの兄貴になった?気色悪ぃ呼び方してんじゃねぇ、バカガキ。」
「いたたぁ…。」
「お前ら104期はもう撤退命令出てるだろ?命令通りさっさと動け。」
「……………おい、コニー!!お前、リヴァイ兵長と知り合いなのか!?」
「え?あぁ、あの人、…………俺の兄ちゃん?(になる予定?)」
「…………はっ!?」
「いや俺だって嫌だよ、あんな猛獣っ!でもアレが良いって言うんだから仕方ねぇだろ!?身長的にはうちに入っても違和感ねぇしさぁ!…ったぁ、足払いされたところが痛ぇんだけどっ!」
「コニー…。」
「ついに本格的にイカれたか…。」




「くっそー!数は増えるわけねぇのに、倒しても倒してもなっかなか減らねぇじゃねぇか!」


何体目かの巨人を討伐した時、ゲルガーさんがそうボヤいた。
…減らないんじゃなく、トロストに入ってきた巨人が多すぎなんだ…。
そう、まるで…、まるで「巨人の群れを率いて」トロストに侵攻してきたかのような量だ…。


「フィーナ!」


その時、オルオとペアで討伐にあたっていたぺトラが声をかけてきた。


「兵長からの伝言!『弟は無事だ』って。」


ぺトラのその言葉に、一気に肩の力が抜けた気がした。


「おい、ぺトラ!補佐手伝え!!」
「わかってるー!…じゃあ、伝えたからね?」
「ぺトラ!」
「うん?」
「ありがとう…!!」


私のその言葉に、ぺトラは一瞬、目を見開き、柔らかく笑った。


「それは兵長に言うべき言葉だよ?」
「ぺトラ!早く!!」
「わかったって!!…じゃあ、あとでね!」


そう言ってオルオの補佐として上空を駆けて行くぺトラ。


「…俺たちもさっさと終わらそうぜ!」
「はいっ!」


それまでよりも、肩の力が抜けた私は、より集中して討伐に当たることが出来た。
……そして、


「フィーナ!ここにいたんだ?さっきリヴァイから『弟は無事』って伝言をね、」

「おいフィーナ!リヴァイからで『お前の弟は無事だ』って言付かってるぞ!」

「あー、いたいたフィーナ!リヴァイが探してたんだけど、コニー無事だって!」


リヴァイさん、一体何人に伝言頼んだんですか?って聞きたくなるくらい、会う兵士会う兵士にコニーの無事を聞かされた…。
……………本当にありがたいんですよ。
ありがたいんですけど、


「震えてないで、声に出して笑っていいんですよ…?」
「いやいやいやいや!アイツも良いとこあるじゃねぇか!なぁ、フィーナ?」


今にもお腹を抱えて笑いそうなゲルガーさんの前に、すごく肩身の狭い思いをした…。

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bkm

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