Attack On Titan


≫Clap ≫Top

ラブソングをキミに


「リヴァイ兵士長」 3


「もうすぐ終わるね、訓練兵団。」


次の遠征計画が発表された数日後、久しぶりにコニーと2人で話でもしようかと会いに来た。


「なーんか、3年、なんてあっという間なもんだなぁ!」
「ふふっ、そうだね。」


コニーが兵士になるためにこっちに来た時は、どうなるかと思ったけど…。


「…このままいけば、間違いなく上位10人に入るって聞いたよ?」
「おぅ!!」


コニーは当初の宣言通り、上位10人にのみ許される権利…、憲兵団入りをその手にしようとしていた。


「やっぱり憲兵団?」
「あったり前だろ!入る前から言ってたじゃねぇか!俺は絶対憲兵団入って、姉ちゃん救い出してやる!って!!」
「…………それ、」
「うん?」
「…まだ思ってたんだ…。」


コニーは(コニーだけじゃない気もするけど)私が調査兵団にいることがおもしろくないらしく、訓練兵入団前から、自分が憲兵団入りしたら調査兵団から私を救い出すと豪語していたわけだけど…。


「なに?嘘だとでも思ってたわけ?」
「そう、いう、わけじゃない、けど、」
「俺言っただろ?姉ちゃんには内地勤務の将来安泰な男を紹介する、って!!」
「…ママから何も聞いてないの?」
「は?母ちゃん?何、なんかあったの?」


コニーは目を丸くして私を見てきた。
………ほんとに、何も聞いていないんだ……。


「…ママにはもう言ったんだけど、」
「うん。」
「私、すごく大切な人が出来たの。」
「う……………んっ!!?」
「兵士としても、1人の人間としても、とても大切な人。だからその人が調査兵でいる限り、私も調査兵団は辞めない。」


パクパクと、まるで金魚か何かのようにコニーは口を動かした。


「だからコニーが憲兵団に行くことは自由だけど、」
「ちょっと待ってっ!!!」
「…………なに?」


ようやく声が出たと思ったらコニーはガシッ!と私の両肩を掴んできた。


「それ誰!?俺の知ってる人っ!!?」
「え?あ、うん、知ってる人で、」
「ちょっと待てってっ!!もしかしてあのヅラのおっさんっ!!?」
「え?ヅラ…って、エルヴィンさん?違うよ、エルヴィンさんじゃ、」
「違うのっ!?あの人団長で1番『まとも』でしょっ!!?あの人以外に誰がいるのっ!!!?」
「…コニー、その言い方、」
「そりゃー、姉ちゃんとヅラのおっさんだったら年も離れてるし、頭も心配だし、どうかと思う部分もあるけど、それでもあの人だったらちゃんと姉ちゃんのこと任せられそうなのにっ!!!違うのっ!!!?」


じゃあ誰!?と叫ぶコニー。
…今、さりげなく仮にも一兵団の団長をしているエルヴィンさんに対して酷いこと言ったってこと、気づいていないんだろうか…。


「あ!じ、じゃあ、あの人だ!ほら、俺が初めて調査兵団の食堂行った時にいた金髪!!」
「…………エルドさんのこと?」
「そう!!あのちょんまげのお兄さん!!あの人なら優しそう!!」
「まぁ…、確かに、エルドさんは優しい、けど、」
「だろ!?そうだろ!?その人じゃないのっ!!?」
「違う。」
「違うのかよっ!!?じゃあ誰っ!!!?」
「…て、ゆうか、」
「何っ!!!?」
「…なんでそんなに必死なの?」


どちらかと言うと大人しいとはかけ離れた位置にいる子ではあったけど、今日は拍車をかけて…騒がしい…。


「なんで!?なんでってなんで!!?姉ちゃんが俺に向かってそんなこと言うなんて、そりゃあもうそれ相応のおつきあいってのしてる相手なんでしょっ!!?」
「…………まぁ、そう、なの、か、なぁ?」
「これが必死にならずにいられるかよっ!!!」
「…だからなんで?」
「一歩間違えたら俺の義兄ちゃんになるかも知れねぇんだぞ、ソイツ!!!」
「………もしかして、」
「何!?」
「その人と私が、結婚する、ってこと言ってるの?」


私の言葉に、何言ってんの、と言うコニー。


「なら大丈夫。」
「何が!?」
「その人と、そう、いうことには、ならない、と思う、し。」


調査兵団を離れると言うこと。
それはリヴァイさんの傍を離れるということ。
そんなの今の私には考えられない。
だけど…。
傍にいるから、って、今以上の…確かな絆、とでも言うのか…、それを求めることも、考えられずにいた。


「姉ちゃんもしかして、」
「うん?」
「………ソイツに弄ばれてるんじゃ…。」
「え?」
「そうなんだなっ!?誰だよっ、ソイツ!!!俺が殴りに行ってやるっ!!!」
「…無理だと思うよ?」
「俺こう見えても訓練兵の中でトップ10入りする実力だぜ!?そんな男、」
「相手は『人類最強』って言われてる人だし。」
「ぶっ飛ば、し、て、…………えっ!!!?」


コニーはようやく、私が言った「大切な人」が誰のことか、わかったようだった。


「も、もしかして、」
「うん。」
「あの、小さいお兄さん…?」
「…うん。」


ぷるぷると震わせた指先で私を差しながら聞いてくるコニーに、頷きながら答えた。


「なんでっ!!!!!?」
「え?」
「なんでそっちいっちゃったんだよっ!!!!?」
「え?そっち?」
「もっとマシな奴いただろっ!!!!ヅラさえ目瞑ればあのおっさんでも良かったじゃねぇかよっ!!!なんだってよりにもよってあの猛獣みたいなちっさいおっさんにっ!!!」


うわぁぁぁ、と叫ぶコニー。
……コニーも何度かリヴァイさんと会って直接交流はしてるけど、1度目は強制的に気絶させられ、2度目は号泣する中私と引き剥がされたあげく家に向かって投げ飛ばされ、3度目はご飯食べてる時に椅子の脚折られたんだから…。
こうなっても、仕方ない、の、かも、しれない……。


「なんで、って、言われても困るけど…、」
「けど何!!?」
「…気がついたら?」
「姉ちゃん、しっかりしてっ!!!」


もうだから俺が早く憲兵団に入って、とぶちぶち言い始めたコニーに、苦笑いするしかなかった。


「…でも、」
「何?」


コニーは見るからに、そしてその声色でもはっきりわかるほど、拗ねた。


「あの人の『良さ』は、一緒にいたらきっと、コニーにもわかるよ。」
「…………」


チラリ、と、私を横目で見た後でコニーが盛大にため息を吐いた。


「あーあ!俺があと1年早く訓練兵に入れてりゃ姉ちゃん助けてやれたのに!!」
「あ、それも無理だったと思うよ。」
「なんで!?」
「『親しい仲』になって、もう、3年だし。」
「………俺が訓練兵になった年からじゃねぇかよっ!!!」


くっそ!あのおっさん!!と、コニーが頭をガシガシと掻いていた。
コニーにはこの事は他の人には秘密、と念を押したけどそれすら腑に落ちないようだった(秘密=人には言えない問題ある関係、と、取った気もしなくもない…)
そしてその日、コニーとの別れ際。


「ごめんね、コニー。コニー私のためにって、頑張ってくれてたのに…。」
「…いーよ、もう別に。」
「でも、」
「うん?」
「…だから、今度は自分のために、頑張ってね。」
「…あぁ。」


コニーは最後まで拗ねた顔をしていたけど…。


「姉ちゃんも!」
「うん?」
「あのちっさいおっさんになんかされたらすぐ言えよ?その時はミカサがおっさん投げ飛ばしに行くからっ!!!」
「…コニーが来るんじゃないんだね…。」
「俺が適うわけないじゃんっ!!」


あの人人類最強なんでしょ!?と言うコニーはやっぱり、憎めない子なんだろうなって思う。


「じゃあ、次に会う時は、」
「おぅ!104期憲兵コニー・スプリンガーだ!」
「…うん。頑張ってね。」
「姉ちゃんもな!!」


コニーは本当によく笑う子だ。
見ているこっちまで、楽しくなってくるような笑顔で。
そのコニーと私が、掛け値なしに笑い合えた。
これが最後の時だった。

.

prev next


bkm

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -