Attack On Titan


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ラブソングをキミに


「リヴァイ兵士長」 2


「エルヴィンさん、て、」
「なんだ?」
「やっぱりすごい人、ですよ、ね…。」


壁外遠征から帰還した日の夜。
久しぶりにゆっくりとリヴァイさんと2人きりで過ごせる時間。
フッと、遠征中にエルヴィンさんから聞いた言葉を口にした。


「なんの話だ?」
「…特別にどう、って、ことじゃないんです、が、」
「あ?」
「発想が、人と違う、と、言うか…。」
「あぁ…。」


リヴァイさんは、その言葉に納得したような素振りを見せた。


「アイツは俺たちが考えもしないようなことを考えてるんだろうよ。」
「…リヴァイさんは、」
「なんだ?」
「…エルヴィンさんのこと、信頼してるんですね…、すごく。」


それは調査兵団の兵士としては、当然のことだけど…。


「お前は違うのか?」
「や…、違わない、です。」


エルヴィンさんのことは、もちろん私も信頼してる。
…けど、だからこそ…。


「…どうした?」
「…」
「何かあったのか?」


リヴァイさんは、ベッドの上で蹲って座る私の方に近寄り、私の右腕を掴んだ。


「…………おい、お前泣いてるのか?」
「………」
「エルヴィンに何か言われたのか?」
「………」
「…なんだ?黙っててもわかるわけねぇだろ。」


ただ黙って俯き首を振り続ける私に、リヴァイさんが大きくため息を吐いた。


「何があったか知らねぇが、」
「……」
「そうやって泣いてても解決しねぇだろ。」


呆れた声を出しながらもリヴァイさんは私の隣に座り、蹲る私を抱き寄せた。


「リヴァイさん、」
「なんだ?」
「……私、怖いんです。」
「何が怖い?」
「イルゼさんの話を聞いてから、ずっと、怖いんです。」
「…」
「何かが、少しずつ、変わっていって、取り返しのつかないことになりそうで、怖いんです。」


たった1人、壁外から勇敢にも壁を目指し進んだイルゼさん。
でもそのイルゼさんの前に現れたのは、今まで目にすることのなかった、知性巨人と言う名の、新しい絶望。
それは、小さな存在である私たちには、食い止めることすら出来ない、大きな流れな気がしてならなかった…。


「もし、」
「あ?」
「また…、壁が破られたら…。」


人口の少ないウォール・マリアだったから、「あの」奪還作戦を用いることが出来た。
けど…。
もし、今度壁が破られたら、マリアの時のようには、決していかないだろう…。
それは誰しもが思って、誰しもが口にしないであろうこと。


「結局のところ、」
「…」
「お前は起きもしていない未来について嘆いてるだけなんだな?」


まるで心配して損した、とでも言うように先ほど以上のため息を吐いたリヴァイさん。


「もし壁が破られたら、」
「…」
「その時は、その時考えりゃあいいだろ。」


「今」どうこう考えても意味ねぇじゃねぇか、と言うリヴァイさん。


「それは、」
「あ?」
「…リヴァイ、さん、が、強いから、そう、言えるんです、よ。」
「…………」


誰よりも、強いから…。


「もし、ローゼまで壊されたら…、」
「…」
「少なくとも、私は、普通じゃ、いられない、と、思います。」


ウォール・ローゼに巨人が現れた時。
それはつまり、……ラガコ村の、パパやママたちまで、危なくなる、ってことだ。
私は、「兵士」として、いつか死ぬのは、仕方がない。
けど……。
「兵士」としての私より、「1人の女性」としての私を案じてくれたパパとママは…。


「安心しろ。」
「…」
「駐屯兵も馬鹿の集まりじゃねぇんだ。」
「…」
「あのジィサンがもうろくしねぇ限りそう簡単に破られやしねぇよ。」


そう言いながら、リヴァイさんが私の目尻に唇を落とした。
…確かに、ピクシス司令がいるなら…。
それでも……。


「もし、」
「今度はなんだ?」
「…私が、イルゼさんのように壁外で行方不明になって、…帰還出来なくなっても、リヴァイさんが見つけにきてくださいね。」
「…………」


仮に、イルゼさんのように、私が壁外で1人になったとして…。
やっぱり私1人では、壁に辿りつくことは不可能だろう…。
ならばせめて、その亡骸くらいは、見つけてもらいたいと思う。
…けど、


「断る。」


リヴァイさんはあっさり私の意見を却下した。


「いちいち捜してられるほど、暇じゃねぇんだ。」
「…」
「俺に見つけてもらいてぇなら、俺に見える範囲で死ね。」


…………なんだか一気に涙が引っ込んだような気がする。
あぁ、うん、リヴァイさんだ。


「……そんなこと言うから、」
「あ?」
「『素直にならなければ嫌われますよ』って部下に言われるんですよ?」
「……………」


苦笑いしながら言う私に、明らかにリヴァイさんがムッとしたのがわかった。


「お前だんだんその2に似てきたんじゃねぇか?」
「その2?………もしかして、リコちゃんのことですか?」
「あぁ、あの口汚ぇクソメガネのことだ。」
「…………リヴァイさん、」
「あ?」
「リコちゃんのこと、言えない、って、わかってます、よ、ね…?」
「……………」


私の言葉を聞いたリヴァイさんが、グィ、っと、私をベッドに押し倒した。


「お前、俺に向かって随分な口を聞くようになったじゃねぇか。」
「……や、べ、つに、私、は、」
「そういう態度はどうなるか、身をもって知るべきだ。違うか?」
「…………」
「あぁ、返事がねぇなら同意だな?」
「え、ち、ちょっ、」


首を横に振った私に、リヴァイさんはさもおかしそうな声色で唇を落としてきた。
リヴァイさんが怒っていないことなんて、百も承知だ。
ただこうして、傍にいること。
ただこうして、冗談めかして笑うこと。
ただ、こうして、肌を重ねると言うこと。
信頼に足る仲間、同志に囲まれ今まで当たり前のように過ごしてきた日常。
…この日常が終わりを告げ、この部屋で2人、穏やかに過ごす最後の時になるだなんて知る由もなく、ただただ、触れるリヴァイさんの温もりを感じていた。

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bkm

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