Attack On Titan


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ラブソングをキミに


絶望への前奏曲 5


「あれ?フィーナ?」
「え?エルドさん?…て、リヴァイさんどうしたんですか!?」


1日の執務や訓練を終え、自室で休んでいた時、ノック無しで扉が開いたから振り返ったら、エルドさんが立っていて。
そのエルドさんはリヴァイさんを肩に担ぐように抑えていた。


「あ、あぁ。今日の立体機動を使った訓練でオルオがミスってな。それを庇った兵長がかなり上から落下したんだが、」
「怪我したんですか!?」
「いや、落下した後なかなか起き上がらないから俺も怪我でもされたのかと思ったらすごい熱で…。」
「え…?」


今まで診療室で休んでもらってたんだ、とエルドさんは言った。


「…おい、エルド。いい加減下ろせ。」
「おんぶして連れて行く、って言ってもこの調子で、仕方ないから担がせてもらった。」


下ろしますよ、と一声かけてからエルドさんは肩に担いだリヴァイさんを下ろした。
エルドさんの肩から下ろされたリヴァイさんは、確かに少しだけ、いつもよりも赤い顔をしていた。


「す、すみません、私気づかなくて、」
「え?いやなんでフィーナが謝るの?」
「だ、って…、」


今朝もリヴァイさんといたのに、と言う言葉を飲み込んだ。


「エルドよ。」
「はい?」
「コイツをナナバの部屋に連れて行け。」
「え?…いいです、けど?」
「わ、私ここにいます!」
「煩ぇ、喚くな。1人で寝てた方が治んだよ、さっさと出てけ。しばらく戻ってくんな。」
「で、でもっ、」
「エルド!さっさと連れて行けっ!」
「は、はい!行こう、フィーナ。」
「え?ち、ちょっ、リヴァイさん!」


エルドさんに腕を引っ張られ、強制的に部屋から連れ出された。
…………リヴァイさん、見るからに顔が赤いってわかる、ってことは相当熱が高いんじゃ…。
確かに1人で寝てる方が治るかもしれないけど、でも…。


「あ、の、さぁ、」
「え?」


エルドさんの手によって閉められた扉の前でどうしようか考えていた時、私を連れ出した張本人のエルドさんが声をかけてきた。


「こんな時に聞くのもどうかと思うんだが…、」
「…はい?」
「俺の勘違いだったら謝るが、」
「はい。」
「………もしかして兵長と同じ部屋で生活してるのか?」


どこか気まずそうなエルドさんの顔を見ながら、脳内でゆっくりと、今の言葉が再生された。
…………そう、だ。
エルドさん、いくら「知ってる」とは言え、シガンシナ陥落後、うちに入団したのだから、私がこの部屋にいるってことは、知らないはずだ…。


「……………あ、の、」
「あ!別に責めるとかそういうつもりじゃなく、ただこう…事実を事実として知っておきたい、と言うか…、」


躊躇いながら口を開いた私に、エルドさんが慌てて言葉を付け加えた。


「…………」


どうと言ってみようもないため、こくり、と首を縦に振った。


「で、でも、当初これには事情が、」
「いや、別にそういうの、詮索しないから!うん、ほんとに。」
「…け、けど、」
「もちろん他言もしない。ホント、事実を事実として知りたかっただけだ。」


そう言うエルドさんに背中を押され、ナナバさんの部屋まで連れてこられた。
じゃあおやすみ、と去って行くエルドさんの背に、小さくおやすみなさいと返した。




「(あの人に壮絶に不釣り合いだったスノードームがフィーナのだってことは予想出来たが、なんで自分の部屋に置かねぇのかと不思議で仕方なかったがこれで納得だ…。そりゃ飾るわなぁ、あの小綺麗な部屋の1番よく見える場所に…。それを片付けないで飾らせてるあたり、)兵長もつくづく…。」




「フィーナ、どうしたー?また喧嘩でもしたの?」


ナナバさんの部屋の前まで来たものの、やっぱり心配だし、とどうしようかと思っていたら、お風呂に行っていたらしいナナバさんが私を見つけて苦笑いしながら部屋に戻ってきた。


「喧嘩、じゃ、ないです、けど、」
「うん?」


ナナバさんにさっきの出来事を伝えた。


「へー、リヴァイが熱?鬼の霍乱だね。」
「…ナナバさん…。」
「あ、ごめんごめん。」


鬼の霍乱、て、いや、そんな感じの人だけど…。


「んー…、でもそうやって一方的に言われるのは、ねぇ?」


フィーナも心配だろう?と言うナナバさんの言葉に、こくり、と頷いた。


「オッケー。じゃあ見てきてあげるよ。」
「え?」
「だってこのままじゃ、フィーナいつまで経っても部屋で休めないだろう?」


そう言ってスタスタとリヴァイさんのいる部屋に歩き出したナナバさん。


「な、なんだかすみません、」
「あぁ、いいのいいの。事が大きくなる前にどうにかした方が私のためでもあるから。」
「え?」
「と、フィーナはここで待っててね。………リヴァイ?いるんだろう?」


数回ノックした後、室内に入っていったナナバさん。
ドアを少しだけ開けていてくれたので、そこから静かに、聞き耳を立てていた。




「なんの用だ?」
「んー?熱出したって聞いたから手ぶらでお見舞いに。」
「邪魔だ、帰れ。」
「…………本気でシンドそうに見えるけど?」
「そう思うならさっさと出て行け。」
「フィーナに看病してもらえば?なんなら呼ん」
「連れてくんじゃねぇっ!」
「…なんで?ただの風邪なら看病してもらえばいいじゃない。」
「…………」
「………あんたもしかして風邪じゃなくて、最近街で流行ってる熱病?」
「…………」
「なら尚の事、看病する人間がいた方が」
「絶対ダメだ。この部屋に近寄らせるな。」
「だからなんで?そんなんじゃフィーナも納得するわけないだろう?」
「………お前、」
「何?」
「…アイツが7年前の流行病で倒れた話は知ってるか?」
「7年前?うちに入団する前じゃないか。知るわけないだろう。それが何?」
「…その流行病でぶっ倒れて、目が覚めたらそれ以前の記憶がなくなっていたらしい。」
「…は?」
「全てってわけじゃないようだが…、少なくとも俺と会った時はあのど田舎出身者が乗馬の仕方も知らず、自分の名前すら読み書きが出来ない程度は記憶障害を起こしていた。」
「……」
「7年前のそれと俺のコレは違うが、1度そういうことが起こった奴だ。次もならないと言う確証はない。だから絶対にここには連れてくるな。」




ナナバさんはリヴァイさんのその言葉に、2人の話をドアの隙間から聞いていた私の方を振り返り、どこか呆れたように、困ったように、笑っていた。

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bkm

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