Attack On Titan


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ラブソングをキミに


絶望への前奏曲 4


「あ!いたいた!おーい、フィーナー!」


緩やかに、穏やかに、季節は流れていく。
また次の遠征計画が発表されたある日のこと、ハンジさんが私を呼ぶ声が聞こえた。


「はい。どう、し、」
「フィーナ。」
「マ、ママ!?」


その声に振り返ると、ハンジさんの後ろを、ママが、歩いていた。


「え、な、ど、どうしたの!?」
「村の人達とストへスに野菜を出しに行くついでにね、」
「うちに寄って新鮮な野菜を届けてくれたんだよ!」


ねー、とママと頷き合ってるハンジさん。
……………いやいや、「ねー」じゃなくて。


「な、なんでいきなり、」
「だからうちに野菜届けてくれたんだって!ありがたいことじゃないか!」


良いお母さんだね!なんて言うハンジさん。
……調査兵団に入団して早4年。
今の今まで1度もママが兵舎に野菜を届けに来るなんてことなかった(荷物として送ってくれることはあったけど)
それがいきなりこんな行動、思い当たることなんて、1つしかない。


「…少しでいいんだけど、時間取れないかい?」


…………………まず間違いなく、前回出してしまった「あの」手紙のことだ、と、思う…。


「で、でも、今から、訓れ」
「あー、良い良い!お母さんもこの後ストへスに行かなきゃなんだ。どうせ2時間も3時間も、ってわけじゃないだろう?ちょっとくらい話して来たらいいよ。」


ミケには私から言っておいてあげるから、なんて言って足早にいなくなってしまったハンジさん。
……だからですね、そのちょっとが気まずい、って言うかです、ね……。


「フィーナ。」
「…う、うん?」


たった一言返事をするだけでも、声が上ずったのが、自分でもわかった。
その声を聞いたママが、苦笑いしていた。


「…手紙、読んだよ。」
「………」
「父さんちょっと、落ち込んでた。」
「…ご、めん、なさ、い。」
「あぁ、別に責めてるわけじゃないよ。」


ママは目の前で大げさなほど、手を振った。


「…手紙を読んで、昔を思い出してしまってね。」
「え?」


ママが少し、目を細めながら言った。


「お前がいきなり高熱で倒れて…。治ったもののいつもどこか俯いてて、家族以外とは話さなくなって、本当にどうしようかと思ったけど…。」
「…」
「兵士になるって言って家を出てった後は、仲の良い友達が出来たり、信頼出来る人が出来たり…。あぁ、兵士として送り出して良かった、って、そう思った。」


ママは、私の団服の自由の翼に優しく手を触れた。


「覚えてるかい?あんたがこれを着て、初めて村に帰ってきた日のことを。」
「え…?」
「『あんたはあんたが好きな道を生きたらいい。』私は確かに、そう言った。」


ママが真っ直ぐと、私を見つめて言った。


「何も、あの日と変わらないよ。」
「…ママ…。」
「…ただ、ね。あの日も言ったと思うけど、『何度壁外へ行ったとしても、必ずちゃんと、帰ってくるんだよ』?」


ママは、そう言って優しく笑った。


「…めん、ごめんね、ママ…。」
「あぁ、ほら!あんたこの後訓練あるんだろう?泣いたらまた怪我するよ!」


ママの言葉に優しさに、視界がみるみる滲んでいった。


「スプリンガーさん!そろそろ行きますよ!」
「あ、はい!…じゃあフィーナ、またいつでも帰っておいで。」
「…うん!」


一緒に来た村の人たちがいる方へと行くママの背に手を振った。


「フィーナか?」
「え?…あ、リヴァイさん。」


ママを見送っている途中、声をかけられ振り返るとリヴァイさんが近づいてきていた。


「お前ここで何してる?訓練はどうした?」
「今、少し、だけ、抜けて、」
「抜けて、なんだ?」
「あ!そうだ、ママが美味しい野菜持って来てくれたんです。野菜スティックにしたらお酒のおつまみになりますね。」
「は?『ママ』?…なんだ、お前まだ何か揉めてんのか?」
「ち、違いますよ。…むしろ、和解できた、って、言う、か、」
「はぁ…?」




「行きますよ?」
「あの人、確か…(うちにフィーナを迎えにきたことある…)」
「スプリンガーさん?」
「そう、か…(あの子のあの顔はきっと…)」
「どうかしたんですか?」
「…すみません、行ってください(…あぁ、なら何も、心配すること、ないじゃないか)」
「えっ!?スプリンガーさん泣いてません!?ほんとにどうしたんですか!?」
「あぁやだ、年取ると涙腺脆くなって困るねぇ…。」




「まぁ、なんでもいいが、話まとまったんなら訓練に戻れ。お前の班、今日立体機動の演習だろ。」
「…………」
「なんだ?」
「もしかしてリヴァイさん、全班の訓練内容把握してるんですか?」
「………………さっさと訓練に戻れ。わかったな?」


大きくため息を吐いた後、去って行くリヴァイさんの後について私も歩き出した。

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bkm

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