キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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New York Case


Sweet Little Demon


「ねぇシャロン?もしかして気づいていたんじゃないの?ローズがあの後、何かしでかす、って」
「ええ。そういう感は昔から働くのよ。まさか人殺しをするなんて思わなかったけど」
「そう言えばあおいちゃんがあなたのこと心配してたわよ?」
「え?」
「『神様を信じないなら、せめて天使に会えたらいいな』ですって」
「残念、天使には会えなかったわ」
「そうなの?」
「えぇ。私が出逢ったのは天使なんて品行方正な子じゃないわ。私が出逢ったのはSweet Little Demon」
「…小悪魔ちゃん?」
「男だけじゃなく、人を魅了し振り回す小悪魔ね」
「へぇ?」
「有希子、あなたもきっと魅了されるわよ」
「あら怖い」



そんな会話を有希子さんとシャロンがしていたなんて知る由もない私は、体調が落ち着いた蘭と新一くんと共に、ホテルの近くを軽く散歩することにした。
あまり無理はできないし、そもそも今回の目玉はシャロンに会うことだったわけだし(有希子さん的には違うだろうけど)
なら無理をすることもないな、って観光はまた今度ってことになった。
そして帰国する日。
その前に念の為、ってことで蘭を医者に診てもらってる時。


「オメーさぁ、なんかあったのか?」


一緒に待たされてた新一くんが私に聞いてきた。


「なにか、って?」
「ん?んー…、トロピカルランドに行った時とは違うけど、またなんか悩んでんのかな、って思ってさ」


新一くんは洞察力というのがずば抜けてると思う。
だからこその、探偵なんだろうけど。


「悩んでるとかじゃないけどね、」
「なんだよ?」


なんでそれを聞いたのかって聞かれたら、たぶんこう答える。
この人は必ず、答えを出してくれる人だから、って。


「人が死ぬ、ってことと、消滅する、ってこと、どう違うのかな、って思ってさ」
「…はぁ?映画かなんかの話しか?」
「まぁ…、そんなとこ」


私の言葉にちょっと訝しそうな顔をした後、ふむ、と考え始めた新一くん。


「俺が思うに、人が死ぬって言うのは、その人が生きて過ごした時間が終わる、ってことだと思う」
「うん」
「それに対して消滅ってのは、その物事の存在が無かったことになる、ってわけだから、」
「…わけだから?」
「たぶん、周りの記憶からもなくなるんじゃねーかな?」


俺の考えだけどな、と言う新一くん。
…でも、新一くんの言うことだからそれはきっと、そうなんだと思う。


「みんなが覚えてないなら、それはそれでいいのかもね」
「俺なら絶対ぇ嫌だけどな」
「え?」
「そこに存在してた奴のこと、記憶からも勝手に消されるとか俺はごめんだな」
「…新一くんらしい」
「俺だけじゃなくて、」
「うん?」
「…たぶんアイツも、そういうタイプだと思うぜ?」
「快斗くんのこと?」
「そんな名前の奴」


新一くんはどーしても快斗くんの名前を呼びたくないんだな、っていうのは伝わる。


「あ、そういえば」
「うん?」
「私、快斗くんに新一くんと2人きりになるなって言われてたんだ」


マズいマズい、と新一くんと距離を取る私。


「オメーさぁ、マジでそんな男のどこがいーんだよ?」
「え?全部」
「…」
「だいたいね、新一くんは快斗くんをもっと見習った方がいいよ!」
「あ?」
「快斗くんみたいにもっと紳士にならなきゃ!快斗くんは料理も出来るし、優しさプライスレスって感じだし、快斗くんみたいにいったーーい!!」
「クロバがどーしたって?」
「ち、近寄らないでっ!!」
「人をバイキンか何かみたいに言うんじゃねぇよっ!!」
「いひゃいいひゃいいひゃいいひゃい」
「あおい、新一、お待たせー、って何やってるの!?」
「コイツがいちいちうるせーからだよ!!」
「い、いたかった…」
「あのねー、新一。そういうところが、」
「うるせーな!だいたいコイツが、」


引っ張られた頬を擦りながら、蘭と新一くんを見る。
私がニューヨークに来たかった理由。
それはこのお話が、私が知っている物語の中で1番最初に起こる事件だから。
本当に、事件は起こるのかどうか。
本当に、蘭はそう行動するのかどうか。
本当に、シャロンは新一くんや蘭を助けてくれる存在になるのかどうか。
そもそも本当にここは、私が知っている「名探偵コナン」という物語の中なのかどうか…。
いろんな「本当に?」という言葉を確信に変えていくための最初の事件がこれだったから。
だから、蘭と新一くんにとっては、いてはいけなかったかもしれない。
でももし新一くんが言った通り「周りの記憶からも消える」ならば。
2年後、今日の私の行動もみんなの記憶からなくなるのなら。
そこに正解はないのかもしれない。
でも、今ここで起こす私の行動も2年後には全てなかったことになるのなら、自分の思うように振る舞ってみようか、って。
そんな決意にも似た思いが胸を埋め尽くした。

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