キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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高校生活スタート


将来の夢


「高校生、って言ってもほぼほぼメンツ変わらないから新鮮味ないねー」
「まぁ8割近くが内部進学だしね」


私もついにJK生活が始まる!
なんて思っても、周りは中学からの持ち上がりだから変わり映えすることもなく学生生活は続く。
あ、でもセーラーからブレザーになったからちょっと気持ちが変わったし、快斗くんが見たいって言うから写真も送った(可愛いって言われた!)


「あおいは部活入らないの?」


蘭はやっぱり空手部。
園子も中学校の時と同様にテニス部。
でも新一くんは帰宅部になった。


「うん。弓道もいいけど…時間がもったいないな、って思って」


そして私も帰宅部にした。
快斗くんが弓道を続けないってこともあるけど…、あと2年なら、上手く時間を使わないといけないから、部活に時間を取られるわけにはいかないと思ったからだ。


「時間がもったいない、って、何かしたいことでもあるの?」
「バイクの免許取るの!」
「バイク?あおいがバイク!?」
「うわぁ、その反応、新一くんと全く同じー…」
「えっ!?ご、ごめん、でもだって、」


新一くんの名前を出したら、蘭はちょっと顔を赤くした。
…蘭、が、本当に恋心を自覚したのかまだわからない。けど…。
たまに新一くんを目で追いかけるような、そんな姿をみるようになったから、きっとたぶん…。


「免許取ったら快斗くんとツーリングするんだー!」
「黒羽くんもバイクの免許取るの?」
「うん。一緒に取ろうって言われたけど、私絶対時間かかるから別々に取ることにしたの」
「なるほど」


緩やかに始まった学生生活。
特に際立ったような変化もなく、かと言って変化がないわけでもない。
不思議な感覚だった。


「高校、慣れた?」


週末、誰に憚ることもなく、快斗くんとデートする。
それが今の楽しみだ。


「慣れた、っちゃー慣れたけど、結構顔見知り多いし、あんまり新鮮な感じもしねぇけどなー」


快斗くんは中学校の学区内にある高校に進学したから、同じ中学の子が多いそうだ。
そこにはきっと、中森さんもいる。
でも快斗くんはあの日から中森さんの話をしない。
「聞きたくない」って言ったのは私。
でも言われなかったら言われなかったで、ちょっと気になるのも事実で。
乙女心はフクザツって奴だと思う。


「快斗くん、誕生日どうする?」


緩やかに時は流れる。
GWはここぞとばかりに自動車学校に通いづめて、後は誕生日を迎えての卒業検定試験を待つばかり、くらいになった(私水準による)


「あー…、俺誕生日は、さ、」


そんなこんなで5月も終わりに近づいたある日。
快斗くんの誕生日はずっと知っていたわけだけど、まさかいきなり誕生日をお祝いすることなんて出来るわけない私は(お前いつ俺の誕生日を知ったって問題が勃発しちゃうから)おつきあいするようになってからさりげなーく快斗くんの誕生日を聞き出して、今年こそはお祝いしよう!って心に決めていた。
の、だけど、快斗くんにその事を振ると物凄い歯切れが悪くなった。
あ、これは…、って言うそれはもう感覚で思ってしまった。
中森さんと過ごすんじゃないかな、って。


「あ、ごめん。予定あるなら、うん…」
「待って、違うから!いや、違わねぇけど違うんだって!」


快斗くんの歯切れの悪さに察した私と、私が「何を察したか」を察した快斗くんは、主語を語ることなく、話しを否定した。


「俺の誕生日の3日後なんだよ、親父の命日」


快斗くんが、言いにくいそうに話を切り出した。


「本当は去年が七回忌なんだけど、出来なかったから今年やろうってことになってさ。で、今年俺の誕生日がちょうど週末で学校休みだし、お袋が、もうその日でいいだろ、ってなったんだよ」


だから誕生日はちょっと、と快斗くんは言う。


「お父さんの…」
「うん。ごめんな」


申し訳なさそうに言う快斗くん。
でもそれは仕方のないことだし、そっち優先してほしいし、優先しなきゃいけないことだと思う。


「どんな人だった?」
「え?」
「快斗くんのお父さん!」


私の言葉に快斗くんは一瞬驚いた顔をした。


「実はね、有希子さん…新一くんのお母さんとちょっとお話ししたんだけど。有希子さん、知ってたんだよ快斗くんのお父さんのこと!」
「え?マジで?」
「うん!有希子さん、すごっい有名な女優さんだったんだけど、その時に会ってたんだって、快斗くんのお父さんに」
「世間狭くね?」
「それ私も思ったー!」


快斗くんはお父さん子だと思う。
お父さんのために、お父さんの仇を討つために、怪盗キッドになったくらいなんだから。


「俺はさー、今も世界一のマジシャンは黒羽盗一だと思ってるんだけど、」


改めてお父さんの話を快斗くんの口から聞くと、あーやっぱり大好きなんだなー、とか。
快斗くんもお父さんみたいなマジシャンになりたいんだろうなー、とか。
そんなこと思った。


「快斗くんの将来の夢はお父さんみたいなマジシャン?」
「あー…、どうだろうな」


あまりにも嬉しそうに、楽しそうにお父さんの話をするから、気になって聞いてみた。


「マジックってさ、1度見せたものを何度も見せれないわけ」
「うん?」
「『親父のような』だと、観客も飽きるだろ。…黒羽盗一は今も昔も世界一のマジシャンだ。超えられるなんて思ってねぇけど、親父を超えるようなマジシャンになることが俺の目標だな!」


そう言って快斗くんはすごくキラキラした顔で笑った。
きっと快斗くんなら、それを叶えられると思う。


「あおいちゃんは?」
「え?」
「将来の夢!なんかなりたいものとか、したいこととかあるの?」


快斗くんの言葉に、思い出すのは、やっぱり命の期限のことで。


「…一生懸命生きること?」
「ぶはっ!なんだそれ!あー、でもあおいちゃんドジなとこあるから確かに一生懸命生きねぇとだな!」


快斗くんは笑う。
その笑顔を2年後、最期の時も見ていたいなぁ、って思うのが私の夢です。
…なんて、言えるわけないことを思っていた。



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bkm

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