キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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New York Case


Magician


「あおいちゃんは大丈夫?」


ホテルに着いて、蘭を医者に診てもらって。
注射もしたからこのまま寝かせてあげましょー、ってなった頃、有希子さんがホテルに到着した。


「はい!無傷で元気です!」


(ない)力こぶを有希子さんに見せたら、笑っていた。
蘭をベッドルームに寝かせて、私たちは1度リビングルームに行くことにした(ちなみに新一くんは男の子、ってことで別の部屋を取ってる)


「蘭ちゃんはこのままこっちで寝ててもらうとして、ねぇ、あおいちゃん?」
「はい?」
「それでもちろん聞かせてもらえるのよね?彼のこと」


にっこり、って笑ってるはずなんだけど…有希子さんがちょっと怖かった…。


「どこの誰で何をしてる馬の骨なのかしら?」


微笑む有希子さんは綺麗なんだけど、…なんか、怖い気がするのは気のせいかな…。


「馬の骨じゃなくて、マジシャンの骨です!」
「マジシャン?マジシャンなの?あおいちゃんの彼」
「あ、いや、学生なんですけど、」
「あおいちゃん」
「はい」
「最初からわかりやすくきちんと説明してちょうだい」


にっこり、と音が出た。
たぶん音だけ出た。
…やっぱり今日の有希子さんは、ちょっと怖い。


「って、わけでして、」


一通り(出逢いからだから本当に一通り)快斗くんのことを有希子さんに話したんだけど。


「ねぇ…」
「はい?」
「もしかしてその彼、…黒羽盗一さんの息子さん?マジシャンの、」


有希子さんが神妙な顔で聞いてきた。


「そ!そうですそうです!私は会ったことないけど、有名なマジシャンの」
「やっぱり!あおいちゃんの彼って、盗一さんのお子さんだったのね!!」


有希子すっきり!!って言う、今日1番の良い笑顔で有希子さんが笑った。


「いったいどこの誰がって思ったけど、そう、盗一さんの」
「知ってるんですか?快斗くんのお父さんのこと」
「知ってるも何も、彼は私が出会った7人の騎士の1人よ。昔コラムにも書いたくらいお世話になったの」


パチン、と有希子さんは綺麗にウィンクをした。


「え、ええええ!?」
「世の中狭いわねー。あの盗一さんのお子さんとあおいちゃんが…」
「狭すぎじゃないです!?」
「そうよねー。盗一さんのお子さんだったらそりゃあ新ちゃん負けちゃうわね」
「え?新一くんがどうしました?」
「ううんー!それで彼とはどんな感じなの?」


そこから有希子の耐久女子トークが開催された…。
園子が大人になったらこんな感じになると思う!
いや、おもしろいし楽しいからいいんだけどさ。


「そういえば有希子さんはシャロンと友達なんですよね?」


有希子さんがキャッキャ聞いてくれるから、すっかり快斗くんとの惚気話を聞いてもらった私は、話しが途切れたところで、気になったことを聞いた。


「えぇ、そうだけど、シャロンがどうかした?」
「シアターでちょっとだけ、話すことが出来たけど、あの人のエンジェルに会えたかな、って」


蘭をエンジェル、って気づいたのかな、って。
少し、気になった。


「なーに?シャロンたら天使に会ったの?」
「あ、いえ、それはわからないけど…。神様を信じない人だから、せめて天使に会えたらな、って」
「…そうねー。みんなに天使が現れたらいいわね」


綺麗に笑いながら有希子さんが言う。
有希子さんが言う天使と、私の言う天使はきっと違うけど。
そうだな、って。
みんなにそれぞれの形で天使が現れたら、きっとみんな幸せなのに。


「でもね、あおいちゃん」
「はい?」
「神様も天使も、みんなが会えるわけじゃないかもしれないけど、この世の全ての人が魔法使いには会えるのよ」


ニヤリ、と、有希子さんは鮮やかに笑う。


「まほうつかい…」
「えぇ!…この世にはね、見てるみんなを驚かせて笑顔にしてくれるとびきりの魔法を使える人がいるの!」


パチン、とまた有希子さんは綺麗にウィンクをする。


「きっとあおいちゃんの彼もそうなるんじゃない?」
「…それ、って…」
「この世でみんなが会える、マジシャンと呼ばれる魔法使いにね!」


あぁ、そうか、って。
この世に神様も天使もいなくても、誰もが会うことのできる魔法使いはいる。
…もうすぐ、世界を魅了する白い魔法使い…。
有希子さんの言葉に、もしかしたらここに来て初めて、彼のもう1つの姿に思いを馳せた。

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