キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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卒業までの過し方


2度目の年末年始


快斗くんとつきあい始めて、初のクリスマス!
なにしよう、どうやって過ごそう、とかいろいろ考えていた。
の、だけ、ど…。


「クリスマスに列島全域を襲う大寒波は」
「出かけたいところですが、今年のクリスマスは家で過ごしましょう」
「皆さん、クリスマスの不要不急の外出は控えて」


なんで今年に限ってそうなのか、日本列島を○十年に1度の大寒波がクリスマスピンポイントで襲ってくるらしく。
すでに計画運休だー、とか、少し早い仕事納めだー、とか。
連日テレビから聞こえてくるニュースに、何かあったら怖いし、今年はクリスマスは快斗くんと会わないで過ごすことになった。


「博士の家に?」
「そ!オメー1人だし、万が一停電とか断水とかあったら大変だろ?だから寒波が過ぎるまであおいとうちにいたらどーだ?って言ってくれてさ。博士の家で過ごそうぜ」


クリスマス暇になっちゃったなー、って思ったら、新一くんが心配して博士にアポを取ってくれた。
確かに自然災害時に1人でいるのもちょっと怖い。
だから甘えさせてもらうことにして、今年のクリスマスは私、新一くん、博士っていうちょっと不思議な組み合わせで過ごした。
そして大晦日。


「お、お世話になります…!」
「はいはーい!いらっしゃーい!」


去年言ってたように、今年も快斗くんちにお呼ばれした。


「今年は約束通り手巻き寿司だからね」


じゃーん!と、ところ狭しと並べられたお刺身たちがテーブルの上に踊ってた。


「美味しそう!」
「でしょー?あおいちゃんもいっぱい食べてね!」
「はい!」
「快斗もね!」
「いってぇな!」


そう言ってお母さんは、テーブルに並んだお刺身たちを見てから口を閉ざしていた快斗くんの足を蹴った。


「大丈夫?」
「……………最善は尽くす」


手巻き寿司を食べるだけなのに、快斗くんはまるで死地に行くかのように青い顔して席についた。
じゃあ頂きます!って手巻き寿司に手を伸ばし始めた。


「美味しー!」
「あおいちゃんは本当に美味しそうに食べるわね」
「だって美味しいですから!」


うふふ、って笑ってる私とお母さん。
の、隣で、ずーーーーーーーっと何かを噛んでる快斗くん。
しばらくしてゴクン、と水と共に飲み込んだ…。


「だ、大丈夫?」
「…」


目をギュッと閉じてる快斗くん。
目尻は薄っすら涙が滲んでた…。
私はあんまり好き嫌いないけど、好き嫌いあるとこんなに大変なんだ、って快斗くんをみて思った。
もうこれからは絶対すき焼きにしてもらおうと思った。


「快斗くん大丈夫ですかね?」
「大丈夫よ、死にはしないから!」


ちょっと食べた後で快斗くんは立ち上がり、先に風呂入ってくると去って行った。


「まぁまぁ、あんな情けない奴放っておいて、食べましょ食べましょ」


さぁさぁ、とお母さんに薦められて、あ、じゃあ…ってそのまま手巻き寿司を食べさせてもらった。


「ん?あ!あおいちゃん、それ私のグラス」


食べつつ空いたお皿片づけつつ、なんてしてたからか、うっかりすっかりお母さんのグラスと間違えて飲んでしまったようで。
一口飲んで、身体がカッと熱くなったのがわかった。


「あちゃー…。大丈夫?それ度数かなり高いんだけど、」
「…なん、か、ぽーって、します…ひっく…」
「だ、だよねー…」


身体がカーッと熱くなったと思ったら、ちょっとふわふわっとして、身体だけじゃなくて、心もちょっとふわふわっとして。


「ね、ねぇ、あおいちゃん。とりあえずお水飲もっか?」


グラスを私に差し出してきたお母さんの手を握った。


「おかあさん!わたし、おかあさんに、いいたいことがありますっ!」
「えっ!?な、なに!?」
「おかあさんは、ほんとうにきれいれ、『おかあさん』だとおもえません!!」
「あ、ありがとう?」
「うちのおかあさんは、おなかでてたし、そんなきれいじゃなかったれすっ!」
「…お母様のこと覚えてるのね」
「おぼえてますよー、わすれるわけないじゃないれすか」
「そう、ね…」
「うちのおかあさんとちがって、おかあさんはほんとにきれいで、あーかいとくんのおかあさんらな、って、」
「そう?ありがとう」
「…かいとくん、も、」
「うん?」
「おかあさんっ!」
「え!?今度はなに!?」
「わたし、おもうんれす」
「う、うん?」
「かいとくんもしかして、おうじさまなんじゃないかって、」
「ぶふっ!…な、なんですって?」
「らって、かんがえてみてくらさい。あんなにやさしいし、カッコいいんれすよ?きっとおうじさまれす」
「そ、そう…」
「かいとくんをうんでくれたおかあさんには、いっぱいありがとうなんれす」
「あおいちゃん…」
「…」
「… あおいちゃん?」
「なん、か、」
「うん?」
「…………ねむい」
「あ、ちょっ、あおいちゃん!」


最後にお母さんの声が聞こえたような気がした。

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bkm

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