キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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卒業までの過し方


見えない何か


あおいちゃんとつきあうようになったとしても心配事は尽きないもので。
やっぱり1番の目ざわ…心配事は、なんと言っても工藤新一のことだ。


「話した?アイツに」
「あ、いや、なかなか話す機会なくて」


そう聞いたのはつきあい始めて1週間くらいのこと。
あー、やっぱりまだ言わねーのか、ってちょっと凹んだ。
…の、翌日に、


「新一くんに、話したよ。彼氏できた、って」


あおいちゃんがそう言ってきた。


「なんて言ってた?」
「『へー』って」


あのクソ野郎らしい返答だ。
別に驚いてもいねー、ってことは、この1週間であおいちゃんの変化に気づいてたってことだろう。
ザマァみやがれ!


「あ、それで快斗くんに伝言?があって、」
「なにー?」
「新一くんとは『家族』だから、彼氏がいたとしても今まで通りご飯食べるって話になって、」
「…」
「『家族の時間邪魔するな』的なこと言ってくれ、って」
「ハッ!『家族』?」


よっく言うぜ。
家族だなんてカケラも思ってねーくせに!
てかアイツ、諦める気ねーのかよ!
相変わらず腹立つ奴だ。


「あおいちゃん」
「うん?」
「ルール決めようぜ」
「ルール?」


あんニャローが今後も今まで通り接するつもりなら、こっちも考えがある。


「家に俺以外の男入れちゃダメ」
「…え、あの、すっごいたまにだけど、博士が心配して見に来てくれるのは、」
「ダメなものはダメ」


え、とも、う、とも言えないような声をあおいちゃんは出した。


「メシ、は、まぁ…、事情が事情だから仕方ねーけど、7時前には帰宅すること」
「7時!?え、早くない?ご飯作って食べたら片づける時間もなく」
「じゃあ一緒に食べないで」
「え、ええー…」
「2択だぜ?メシ食って7時前に帰るか、メシ食わずに家に直帰するか」
「う…ん…、わかっ、た」


すっげー腑に落ちてなさそうな声を出したあおいちゃん。
ほんとは工藤新一に関わることは禁止、ってくらいにしたいところだけど、だいぶ譲歩してんだからこれ以上は譲れない。
素直な子だから1度した約束は守るだろうし、工藤新一的にもこの子が「家族」として信頼を寄せてる以上、無理やりどーとかはないだろう。
でもこれだけじゃまだ弱い。
どーすっかなー、と思ってた数日後のことだった。


「快斗くん」
「なにー?」


有効な手立ても思いつかないままな俺にあおいちゃんが不意に口にした。


「私、家に快斗くん以外の男の人、入れないよ?」
「うん?」
「新一くんとご飯食べても7時前には帰る」


俺が一方的に言ったルールを復唱するあおいちゃん。
瞬時に、あ、これ俺も何かルール作られる奴だ、って感じた。
まぁそりゃそうだろう、と。
あおいちゃんにだってルールを作る権利はある。
…ただとんでもねーこと無茶ぶりされたらなー、とは思っていた。


「だから、」


思っていたんだが実際は、


「快斗くんが寂しくなったら、会いにきてくれなきゃイヤだよ」


とんでもなく可愛い、ルールなんて言えない、強いて言うならお願い事だった。
…この子実はすっげー殺傷力高ぇ見えない何かを持ってて、俺のこと撃ち殺す気なんじゃねぇの?
あぁ、それなら納得だ。
しかも弓道やってたから命中率クソ高ぇぞ、それ。


「俺今から行こうか?」
「…えっ!?」
「今からだと8時にはそっち着けるし」
「い、いやいやいやいやいやいや、明日学校あるでしょ!?」
「だいじょーぶ!何度も言うけど俺優秀だって言っ」
「受験生だよ!?ダメだって!!」
「江古田高なら別に大丈夫だって!」
「だ、ダメダメ!内申点に響くから、」
「内申点低くても当日トップの成績なら落ちねーよ」
「そんなの何があるかわかんないんだからダメだってば!」


しばらくの押し問答の末、引き下げることにした。
俺の言葉を聞いたあおいちゃんがホッとした息を漏らしたのが聞こえた。


「いっとくけど、」
「うん?」
「俺はいつでも会いたいって思ってるし、会いに行くつもりでいるからな」


そう言った俺にあおいちゃんは、


「快斗くんとお話してると、ちょっと擽ったい」


と言って笑った。
…あ、俺また撃ち抜かれた。
めちゃくちゃ殺傷力高ぇわ、やっぱ。
工藤新一のことは未だ問題だ。
でも今はまぁ様子見ってことにしといてやる。
そう思いながら通話を終えた。

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bkm

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