キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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変わる今


ゼロ距離の威力


週末はあおいちゃんちで勉強会を開いてそのままメシ食って解散、て流れが定着し始めた頃。


「あー、ここ足し算間違えてる」
「えっ!?嘘!…5足す3は8じゃん!なんで7って書いてあるの!?」
「あおいちゃん、こういうちょいミスあるよな」
「…くぅ!」


受験する必要がないんだからそんな真面目にやらなくとも大丈夫だろう、とも思ったけど、何にでも一生懸命なところがあおいちゃんの良いところだと思う。


「そのページ終わったら休憩しよっか」
「うん」


そう提案してキッチンに向かった。
…気のせいかもしれねーが、今日あおいちゃん良い匂いしてる気がする。
シャンプー変えた、とかか?
香水って感じでもねーし、どっから匂ってるのか不思議だった。


「あと1問?頑張れ頑張れ」
「うん!」


ココアが入ってるカップをテーブルに置いてあおいちゃんを見た。
…あ、わかった、この匂いグロスだ。
今日のあおいちゃんはやたらと艶のあるクチビルをしている。
少し色もついてる物らしく、クチビル自体の色もいつもと違う。
いつものナチュラルな感じもいいけど、こーいうのも悪くない。
あー、でも俺だったらもう少し赤み抑えた色薦めるかもなー。
この色も似合わなくはないけど、もっとあおいちゃんらしさを引き立てるような色が


「んー?あれ?X=5あまり、」
「いや、それ余りでないでしょー」
「えっ?」
「大丈夫?ちょいミスしてない?」
「えっ!?」


にらめっこでもしてんのか、ってくらい百面相しながら問題に向き合うあおいちゃん。
…やべー、クチビルをガン見しすぎた。
いやだってアレなんか良い匂いするし、プルプルしてるし、絶対柔らかいし美味そう。


「こ、れ、で、どうだ!……あ!X=4!当たってる!快斗くん、出来たよ!じゃあこれで休け」


何を考えていたのかと聞かれたら、全面的に出来心でしたとしか答えられない。
ただこんなところでも嫌われたくないっていう咄嗟の思いが出てしまい、クチビルにではなく頬に口づけていた。
頬に触れたと思った瞬間、あおいちゃんの手からシャーペンが落ちる音が聞こえた。
身体を離すと目の前のあおいちゃんは問題集の方に顔を向けたまま、目を見開いていた。


「…」


そのまま固まって動かないあおいちゃん。
………やっちまった、って。
嫌われてない自覚はあるけど、そういう意味で好かれてるとも限らないのにヤラかした…、と、動かないあおいちゃんを見てそう思った。
ヤバいもう出てってとか言われるくらいなら俺から


「俺今日はもうこれで、っ!?」


そう思って口を開いた直後だった。
さっき俺がやったことと同じことをあおいちゃんがしてきて。
えっ?て思って、すぐに身体が離れたあおいちゃんを見たら、顔を赤くして、少し涙目でクチビルを噛みながら俺を見ていた。
…もう何度、この子にズルいと思っただろうか。
こんな顔をされたら、逃げられるわけもなく。


「…」


どちらからともなく顔を近づけ、そのまま何度もキスをした。


ピリリリリ


どのくらいそうしてたのか。
一瞬だったかもしれないし、5分、10分だったかもしれない。
その時電話が鳴って、あおいちゃんの身体がわかりやすくビクッと反応して身体が離れた。
…何今のやっぱりあおいちゃんのクチビルすげー柔らかいし甘いし触ってて気持ちいいしもっと触りたいし


「あーーもう!」


だめだだめだ!
これ以上ここにいたらマズい!
キスしただけで身体が反応しそうでヤバい。
さすがにそれは絶対だめだ。
今日はもう帰ろうと玄関に向かった。


「気、気をつけて、ね、」


靴を履いてる俺にあおいちゃんは声をかけてくる。
…ほんとはもっといたいけど、さすがにいきなりそれはどーかと思うし、いや待て、そもそも俺何も言ってなくねーか?でもだってどーせコクるならちゃんとそれっぽいムード作って言いてーじゃん?え?じゃあ何俺今もしかしてキスするだけして逃げ帰るサイテーヤローになってねーか?え!?そっちの方がヤバくね!?


「か、快斗くん?どうし」
「やっぱり今言う」
「えっ?」


こんな窓もない玄関で言う物じゃないことは重々承知している。
だけどこのまま帰ってあおいちゃんにヤリ逃げサイテーヤローのレッテルを貼られるくらいなら例え場所が玄関だったとしても言ってから帰る。


「ほんとはもっと、景色良い場所とか、ムードある場所とか?いろいろ考えたりもしたけど、そんなこと言ってらんねーし」
「う、うん?」
「俺、あおいちゃんのこと好きだよ」


あおいちゃんの瞳は綺麗な黒曜石のようだ。
その真っ黒い、漆黒の瞳に映っている俺が、どうか少しでもカッコ良く見えてますように。


「ちょっ、と、順番逆になっちまったけど、好きな子以外にしねーし。あおいちゃんのこと、好きだよ。だから俺の彼女になってください」
「…………よっ、よろしくお願いしますっ…!」


赤い顔して深々と頭を下げるあおいちゃんに、心の底からホッとしたなんてカッコ悪くて言えない。


「…じ、じゃあ、俺帰るから、」
「あ、あぁ、うん」


何故かちょっとよそよそしくなってるから自分でも笑える。


「快斗くん!」
「え?うわっ!?」


それに気づいたのか気づいてないのか。
あおいちゃんは帰ろうとする俺の腕を引っ張って、もう1度頬にキスをした。


「じ、じゃあ、またメールする、ね」
「…うん」
「気をつけてね」
「うん」


バイバイと赤い顔で両手を振るあおいちゃんに見送られ玄関扉の戸を閉めた。
瞬間、マンションの通路に崩れ落ちた。
…なんだあれ!?可愛いすぎねーかっ!?今の反則じゃねーのか!!?いいのかあれ!?!?
自分の気持ちを立て直すまでしばらくの間、あおいちゃんちのドアの前で蹲っていた。

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bkm

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