キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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年末年始の過ごし方


すき焼きvs手巻き寿司


「さぁ!あおいちゃん、食べて食べて!」


快斗くんちは大晦日すき焼きが定番らしく、本日もすき焼きを用意してくれていた。


「私、大晦日にすき焼き食べることなかったんでなんだか新鮮です!」
「そなの?うち毎年コレだぜ?」
「うん。うちは手巻き寿司だったよ!」


私の言葉に快斗くんはスーッと目を逸らし、お母さんはニヤァと笑った。


「そうよねー?私も手巻き寿司がいいんだけど、」
「美味しいですよね!」
「…」
「根強い反対意見があって、うちの食卓にお寿司やお刺身上がらないのよ」
「え?」


そう言ってお母さんは快斗くんを見た。
…あぁ、そう言えば快斗くん魚嫌いだったな、って。
でもそれは「魚」であって、お刺身はほら、もう魚の形してないわけだし?


「お刺身嫌い?」
「…」
「あおいちゃんも嫌よねぇ?好き嫌いする器の小ちゃい男なんて!」


ね?とお母さんは言う。
…ううーん、嫌いとかそういうことよりも、


「美味しいのにもったいないなぁ、と思います」
「だ、そうよ?」


片手の甲で軽く顎を支えて、チラリと快斗くんを見ながらお母さんは言う。
…綺麗な人だとこういうポーズもサマになる!


「………ら、来年、は…?」
「はいっ、言質取ったー!来年は魚料理づくしよ!!」
「なんでだよっ!?今大晦日の話ししてただろ!?」
「そんな1年先の不確かな予定よりも、着実な一歩でしょ!」
「ふざけんなよ!?そんなん食ってられっか!」
「あんたに合わせてたら料理が限られてくるのよ!」
「だから俺が作るって言ってんだろ!?」
「毎日毎日脂っこい肉料理ばっかり食べられるわけないでしょ!?」
「ぷっ!」


2人のやり取りに思わず噴き出してしまったから、快斗くんとお母さんは言い争いを止めて私の方を見てきた。


「あ、す、すみません!仲良い親子だなぁ、って思って、」


快斗くんはきっと本当に魚が嫌いなんだろうと思う。
でもお母さんの魚料理食べてほしいって気持ちもわからなくもない(だってお肉ばっかりだと身体に悪そうだし!)
それをこうやってポンポン言い合えるのは仲が良いからこそだと思う。
ちなみに私の場合はお肉料理?わーい!だし、魚料理?ふーっ!ってなるからどっちも大歓迎だ。


「とにかく!来年の大晦日は手巻き寿司に決定だから!あおいちゃんも楽しみにしててね!」


パチン、とお母さんは綺麗にウィンクして言った。
…それって来年も快斗くんちにお邪魔させてもらえる、ってことなわけで…。


「当たり前じゃん!俺たぶんほとんど食わねぇから、あおいちゃんに頑張ってもらわねぇとだし!」
「へー?あんた自分の食べ残しを女の子に食べてもらうわけ?」
「そんなこと言ってねぇだろ!?」


来年もここに来ていいんだ、なんて思ったら、胸の中がフワーッとしてきた。
快斗くんのお母さんは、快斗くんのお母さんなだけあってすごく優しい人だ。
片づけ手伝います、って言ったら、ここは大丈夫だから先にお風呂に入ってきてって言われて。
…快斗くんが使ってるお風呂に!?って大興奮で1番風呂に入らせてもらった。
お風呂に入ったら、もちろん快斗くんが使ってるソープがあるわけで。
これは…!って思いと、でも…!!って思いがせめぎ合った結果、私にはまだ快斗くんの匂いは早いな、って判断したから、お泊まりセットに忍ばせた携帯用マイソープを使った。


「お風呂お先にありがとうございました…!」


リビングに行くと、快斗くんしかいなかった。
なんでもお母さんはちょっと買い出しに行ったそうだ。
こんな時間に?って思ったけど、お酒の買い出しだそうだから、こんな時間になんだな、って思った。


「それパジャマ?」


リビングでテキトーにテレビでも見てて、と言われた後で快斗くんが聞いてきた。


「そう!これサンリオコラボで、友達と一緒に買ったの!友達がキティちゃんとクロミーで、私がシナモン!」


パーカーにはちゃんとシナモンの耳が着いていて、それを被ってシナモンだとわかるように耳を引っ張りながら、快斗くんに見せた。


「…俺じゃあ風呂行ってくるわ」


快斗くんはポンポン、と頭を撫でた後で部屋から出て行った。
…もしかして子供っぽすぎた!?
私が持ってる中で1番可愛い奴持ってきたんだけどダメだった!?
快斗くん大人っぽいのが好きなのかも!!
うえぇぇ、ってなってる時にお酒の入った袋片手に帰ってきたお母さんに、あらあおいちゃんすごく可愛い服ね、似合ってるわよ、って言われてなんとか気持ちを持ち直した。



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bkm

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