キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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年末年始の過ごし方


それは同情なのか


「ハーイ!快斗、寂しかったー?お母様のお帰りよー!」


修学旅行も終わってもう少しで12月って時、騒々しいしくお袋が帰ってきた。


「おー、お帰り。いつまでいんの?」
「んー?今回はこのまま年明けまでいるつもりー!掃除とかもしちゃいたいしね」


一体この人は普段どこで何をしているのか。
それは息子の俺にもわかんねーけど、こうやって定期的に帰ってくるだけまぁマシか、なんて思って深くは聞かないようにしてる。
それはきっと他人から見たら変わってるんだろう。
でもうちはもうこれが当たり前になっていた。
…ただ、お袋が年明けまでいるってことは、その間あおいちゃんはうちに来れないわけで。
一応伝えておくかと電話した。
ついでにあおいちゃんの年末年始の予定も聞いとくか。


「年末年始ってさー、特番がすごい充実してるんだよね。去年は見そびれちゃったんだけど、今年こそ紅白見たり年末特番のドラマ見たりして過ごすよ!」


いいでしょー!みたいなノリで言うあおいちゃんに咄嗟に言葉が出てこなかった。
例えばの話し、俺で言う青子みたいな奴とか。
そういうのがいて、号令出してみんなでクリスマスパーティするとか、初詣行くとか。
そういう返事を想定してたわけだけど、あおいちゃんが言ったそれはつまり年末年始を家で1人で過ごすってことで。
…マジで?


「冬休みはどうすんの?」


俺の周りの親はまぁ…極々一般的な中小企業のサラリーマンが多い。
だから冬休みに入っても親が仕事で家にいないからその間に遊ぶとか。
そういうのが普通だったわけだけど、帝丹て金持ち多いから専業主婦だったり、早めの仕事納めになるとこやそういう役職だったりで親が家にいて遊ぶどころじゃない奴が多いのかもしれない。


「今年の汚れは今年のうちに、って、お母さんも言ってたし!」


この子は本当に親を亡くしているんだろうか。
そう思ってしまうくらい、明るく親の話しを出すあおいちゃん。
5年近く前に亡くなった親の言いつけ、今も守ってんのか、とか。
そんなこと思ったら、


「俺さー、お袋帰ってきてて何もしなくていいから暇なんだよねー。毎日米花町に行けるくらいは暇!」


そう口走っていた。
可哀想だと思ったから?
手を貸してやらなきゃと思ったから?
俺はやっぱり、同情でこの子といるのかもしれない。


「冬休みの課題!帝丹はうちより量多そう」
「あ、うん、まぁ…、そこそこ出る、けど?」
「よし、じゃあ一緒に課題しようぜ」


でも例え同情だったとしても、1人でいたくない時は、あるんじゃねーか、って。
それは完全に俺のエゴ。
でも今、あおいちゃんを突き放すことはできずにいた。


「私なん、ていう、かな…勉強は…ちょっと…あんまり…」


俺の誘いにあおいちゃんは躊躇いがちにそう言ってきた。
…あ、うん。そんな気してた。
とは、さすがに本人には言えなかった。
そして俺があおいちゃんちに毎日押しかけるってことで話しはまとまった。
と、言うことは、だ。
クリスマスも一緒に過ごす、ってことで。


「どーすっかなー」


まさか手ぶらで行くわけにはいかねーし。
プレゼント…プレゼント…。
ううーん、と悩んでいた時青子が目に映ったから、


「ちょうど良かった、おい、青子」
「なにー?」
「オメーならクリスマスプレゼント何がほしい?」


思わず青子に聞いていた。


「えっ!?めっずらし!快斗、青子にプレゼントしてくれるの!?」
「なんでオメーにプレゼントしなきゃなんだよ!一般論聞かせろ、って言ってんの!」


そう言った俺に、青子はニタァと笑った。


「あー、青子わかったー!他校の彼女のプレゼント悩んでるんだ?」
「だーから彼女じゃねえって言ってんだろ!」
「んー…そうだなー…その子がどんな子かわからないから難しいけど、青子今ならあったかグッズほしいかなー」


俺の話しを全く聞いていない青子が天井を仰ぎながらそう言ってきた。


「あったかグッズ?」
「そう!寒いでしょ、最近!だからー例えば手袋とか?ほしいかなー」


青子だったらね、とつけ加えて言った。
…なるほどな、手袋か。
あおいちゃん、冷え性ってわけでもないだろうけど寒がりなイメージは確かにある。
帰りにちょっと見に行ってみるか。


「…んだよ」


俺の顔をニヤニヤした顔で見てきた青子。


「喜んでもらえるといいねー、快斗の好きな子に!」
「…はぁ!?そんなんじゃねぇから!」
「はいはい、そーですねー」
「オメー信じてねーな?」
「信じてる信じてる!…でもきっと、その子は快斗の『トクベツ』になるよ。だから頑張れ頑張れ!」
「…ったく!」


そんな悪態つきつつ、あおいちゃんのクリスマスプレゼントを見に行った。
頭の中では手袋のつもりで行ったけど、途中で白くてふわふわなニット帽子を見つけて、目についた瞬間に手を伸ばしていた。
そしてプレゼントも用意できて後は当日を待つばかり、って時、あおいちゃんにイブのケーキバイキングに誘われた。
なんでも友達の親の会社が主催するホテルイベントの招待券を貰ったそうで。
…なるほど、財閥の人間が友達にいるならそりゃあハワイに連れてってもらえるよな、なんてすげー納得した。


「んー!!美味しいっ!!」


一口食べた直後、フォークを持ったまま興奮してそう言ったあおいちゃん。
…ほんっとすげー美味そうに食うよな。
この子の食べてる姿見るとすげー優しい気持ちになれるってくらい、美味そうに食べる。
そりゃ財閥のお友達も招待券送りたくなるよなー。
そして一通り食べてひと息ついたところでプレゼント交換した。
あおいちゃんがくれたのはタオル。
あ、これ良い奴だ…って思うくらいの気持ちいい肌触りのものだった。
そしてあおいちゃんに、俺があげた帽子を被ってもらった。
思った通り、黒髪に映える。
…と、その時、


「…っ」


キッと何もない空間を睨みつけるようにして涙を堪えているのがわかった。
…頼りなさそうだし、すっげー泣き虫だし、ほんっと今までどーやって生きてきたんだよ。
そう思いながら目元を拭ってやったら、


「…ありがと、快斗くん」


そう言って目を赤くしたままあおいちゃんは笑った。
…あぁ、やっぱりこれやって正解だ。
小さくて目が赤くて、まるで白いウサギのようだって思ったことは言えずにいた。

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bkm

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