■埋まる予定
「昨日急にお袋帰ってきて、このまま年明けまでいるってさ」
園子にけしかけられて、快斗くんの年末年始の予定聞いてみようかな、なんて思ってたら、タイミングよく快斗くんが年末年始の話題を出しくれた。
…お母さんが帰ってきて、年明けまでいるってことは、しばらく快斗くんと会うことがなくなる、ってこと。
なんだかそれはそれでちょっと…とても…すごく…残念だけど、クリスマスとか、私から誘わなくても他の子と過ごしたりしないんじゃないかなって思ったら、ちょっとホッとしてしまった自分もいた。
「あおいちゃんは年末年始どーすんの?」
「年末年始ってさー、特番がすごい充実してるんだよね」
「…うん?」
「去年は見そびれちゃったんだけど、今年こそ紅白見たり年末特番のドラマ見たりして過ごすよ!」
「………」
去年はうっかりロスに行ってしまって、紅白?私の心が紅白!みたいな年末だったから、今年こそは去年思ってたことを実行したいと思ってそう口にした。
「冬休みはどーすんの?」
「え?冬休み?…冬休みは入ったらすぐに大掃除かなー?」
「大掃除、って、あおいちゃんち綺麗じゃん」
「んー…でも今年の汚れは今年のうちに、ってお母さんに言われてたし!」
「……」
うっかりこの前、快斗くんが初めて我が家に来る時に大掃除な勢いで掃除したけど、それとは別にやっぱり大掃除はしないと、って。
そう思って言ったんだけど。
「俺さー、」
「うん?」
「お袋帰ってきてて何もしなくていいから暇なんだよねー。毎日米花町に行けるくらいは暇!」
「…えっ!?」
快斗くんが不意にそんなこと言ってきた。
「手伝いに行こうか?大掃除!」
「えっ、やっ、」
「あおいちゃん電気とか届かなそうだし!」
ちっちゃいからねー、なんて笑う快斗くん。
……えっ?なんで待って掃除ってなんでなんでなんで
「で、でも、さ、」
「うん?」
「べ、つに、広くないからすぐ終わる、よ?」
「課題はー?」
「え?」
「冬休みの課題!帝丹はうちより量多そう」
「あ、うん、まぁ…、そこそこ出る、けど?」
「よし、じゃあ一緒に課題しようぜ」
「………えっ!?」
今電波に乗って快斗くんのマイナスイオンが私の部屋に充満した…!
それくらい爽やかな声で快斗くんは言ってきた。
「俺こう見えて勉強そこそこデキるから」
存じております。
そこそこどころか、めちゃくちゃ頭いいですよね?
何それ謙遜?
こんなところで謙遜しちゃうの?
そんな謙遜したところで私からの好感度しか上がらないよ??
「で、でもさー、」
「うんー?」
「私なん、ていう、かな…勉強は…ちょっと…あんまり…」
快斗くんの実際の成績はわからないけどさ。
でも原作の快斗くんはすごく頭が良かったし、料理の時と同様に早めに自己申告した方がいいかなって思った私は言葉を濁しながら言った。
「帝丹の方がうちより進み早ぇと思うけど、参考書見せてくれたら俺きっと教えられるから大丈夫!」
だから一緒にしよー、ってなったんだけど。
…普通ちょっと参考書見たくらいじゃ、他人に教えることなんて出来ないと思うからやっぱり快斗くんめちゃくちゃ頭良いんだと思った。
「つまり?」
「うん」
「クリスマスどーのじゃなくて、冬休み中はずっと掃除と勉強ってこと?」
「…なの、かな…?」
その翌日、で?誘ったの?って園子が言ってきて。
それが実は…って園子に聞いてもらった。
私の話しを聞いて、
「あんたの周りの野郎どもはどーしてどいつもこいつも…」
大きなため息を吐きながら頭を抱えた。
「で、でもさ、とにかく年末年始は快斗くんと、」
「それだけじゃ甘いの!!いい?とりあえずあんたはクリスマスパーティするくらいな心づもりでいなさいよ!?プレゼントなしとか絶対ダメだから!!」
「え、でも、」
「プレゼントとケーキ用意するだけでそれっぽくなるから!とりあえずせっかく2人で過ごすんだから、部屋磨くだけで終わらせるんじゃないわよ!?わかった!?」
園子に指差されながら言われた私は、今度はプレゼントとケーキどうしようって悩むことになった。
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bkm