キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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突撃お家訪問!


お家訪問!(される方)


「あい、」
「あ、悪ぃ寝てた?今マンション前に着いたんだけど、」


大掃除が完全に終わった午前6時前。
え?私これ寝たら快斗くん来ても起きなくない?って思ってしまって、フラフラになりながらとりあえず映画でも…と観ていたはずなんだけど、いつの間にか寝落ちしてしまったらしく、着信音で目が覚めた。
万が一の時のために音量最大にしてた昨日の私(いや、すでに今日の私だったかも?)エラい!と心の中で思った。


「かいとくん、おはよー…」
「すっげー寝起きだね。おはよ!」


部屋番号を教えて上がってきてもらったんだけど、声も掠れてフラフラな私に快斗くんは苦笑いした。
…こんな、こんなだらしない寝起き姿を快斗くんに見せるなんて…!!
なんてことにも頭が回らないくらいボーッとしてたんだけど、


「でもあおいちゃんは寝起きも可愛いね」


キラキラキラーと快斗くんから後光が指してるのがわかった。
…くぅっ!!今日もかっこいい!!!
寝ぼけた頭でもそこだけははっきりとわかった。


「テキトーにいろいろ買ってきたけど、とりあえずキッチン借りるぜ?」
「うん…?」
「もう昼になるし、俺作るからあおいちゃんまだ寝てなよ」
「…うんっ!?」


買い物袋から買った物をゴソゴソと出しながら、快斗くんがキッチンにある物を確認していた。


「快斗くんが作るの!?」
「え?そうだけど?あ、もしかして嫌だった?」
「えっ!?嫌じゃない嫌じゃない!」


いきなりの爆弾発言に、一気に、そして今度こそ本当に目が覚めた。


「この前も言ったけど、俺こう見えて自炊歴長ぇから普通に食えるの作れるぜ?」


いや、そこを疑っているんじゃないんです。
そういうことを疑ってるんじゃなくて、「あの」快斗くんが、わざわざ「私のために」ご飯を作ってくれるんですか?ってことを聞いてるんです。


「もしかして信じてない?」
「そんなことないよっ!」
「そ?まぁ終わったら呼ぶから、休んでて」


そう言ってシンク台の方を向いた快斗くん。
…休む?
この状況でどこで何を休む??
え?ここはどこ?
ほんとに私の家なの??
なんで私の家で快斗くんが料理してるの???


「…」
「…」


なんて思いながらジーーっと快斗くんを見ていたら、不意に快斗くんがこちらに振り向いた。


「こーら。見過ぎだぞ」


それはまるで語尾にハートがついているような。
そんな言い方で。
今までの快斗くんの笑顔とはまた違う、ニヤリと言う言葉がピッタリな顔で笑いながら言った。


「ごっ、ごごごごごめっ、」
「ははっ!まぁ待ってなさい、って!」


快斗くんはそう言ってまたシンク台に向き直った。
…ひーーっ!!
快斗くんがっ!快斗くんがうちのキッチンで料理してるっ!!!
私っ!!
昨日眠い身体に鞭打って念のためって、キッチン周りやトイレ、お風呂場もすっごい力込めて掃除した甲斐あった…!!
神様、ありがとうございますっ!!!


「どしたー?」


快斗くんが私のために!作ってくれる料理をそんなこんな寝起きで迎えられない、って立ち上がったところで快斗くんに呼び止められた。


「ちちちちちょっと顔洗ってくる」
「あ、もしかして起きる感じ?じゃあ冷蔵庫の中にテキトーに買ってきた飲み物もあっから、飲んでー」
「う、うん。ありがと」
「いえいえー」


いそいそと洗面所に向かうけど、洗面所のドアを閉めたところで、危うく崩れ落ちそうになった。
…もうっ!!
あの人マメすぎるっ!!
かっこいい上、優しくて気が利くとか何なんで今まで彼女いなかったの江古田の女ども見る目なさすぎなんじゃないのおバカじゃないのこんなに良い男全人類ふるいにかけても5人もいないと思うよっ!?!?!?


「…と、とりあえず顔洗お」


パシャパシャと顔を洗って、ふぅ、と一息吐いた。


「よ、よしっ!」


気を引き締めてドアを開けると、すでにほんのり良い匂いが室内に漂っていた。
快斗くんは手際良く、レシピなんて見ずにパパッと動いていて。
快斗くんが動くたびに、美味しい匂いがまた1つ室内に広がっていって。
…あ、むり。


「あおいちゃーん!そろそろ出来る、って待って!?なんで泣いてんのっ!?」


手に持っていたタオルで顔を覆って蹲ってる私のところに、快斗くんが駆け寄ってきた。


「だ、だって、」
「うん!?」
「うっ、う゛れ゛し゛く゛て゛ぇぇぇ」


だってそうでしょう?
この世界に来たいと願ったきっかけの人が、今自分の目の前で自分のためだけに美味しいご飯作ってくれてるんだよ!?
そんなの感動するなって方が無理に決まってるじゃんっ!!!


「俺の作った物で良けりゃ、いつでも作ってやっから。とりあえず泣き止んで、メシ食おうぜ?」


ぽんぽん、と私の頭の撫でる快斗くんの手は、男の人と言うにはまだどこか幼さが残るようなそんな感じがした。

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bkm

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