キミのおこした奇跡ーAnother Blue


≫Clap ≫Top

怪盗vs高校生探偵


犯罪記録


キッドはまた私が先にマンションに入るように促した。
たぶん私が戻るまでキッドも帰らないだろうから、今日はもう帰ろうといそいそとトランペットを仕舞っていた時、


「確認なんですが」
「はい?」
「あおい嬢は私のライバルになり得る人物よりも、私の応援をしてくださるんですか?」


キッドが不意に尋ねてきた。


「私、は、」


キッドに、快斗くんには勝ってほしい。


「怪盗さんには、勝ってほしいと思います」
「あなたは警視庁側の人間より、私の味方をしてくださると?」


…でも、新一くんにも負けてほしくない、って言うのは、調子が良すぎるのかな。


「正直な話し、6対4…7対3くらいで、勝ってほしいかな…」
「なるほど?4か3は警視庁側の人間の味方なわけですね」


ふむふむ、とキッドは言う。
…これ、快斗くんだって知ってる上でこんなこと言ったってバレたら、大変なことになるかもしれないならないかもしれない。


「なら私の目下の目標は、その数字を2ないし1にするることですね」
「え?」
「もちろんゆくゆくは0にするつもりでいますけど」


私は欲張りなので、とキッドは言う。


「怪盗さんは」
「はい?」
「私に味方になってほしいんです、か?」


私の言葉にキッドは一瞬目を見開いたものの、すぐに柔らかく微笑んだ。


「おや、まだあなたに伝わっていない?」
「え?」
「私はあなたに味方になってほしいわけじゃない。私はね、あおい嬢。あなたの全てがほしいんです」
「……えっ!?」


そう言ってキッドは私の手を取り、


「言ったでしょう?私は欲張りなんです」


手の甲にちゅっと音を立ててクチビルを落とした。


「い、いいいいいいいいやいやいやいや!おおおおお落ち着いてくださいっ!!!」
「私はいつでも冷静ですよ」


ニッコリと笑うキッド。
…待って待って待って待って!
だって今これキッドだよ?ねぇ、快斗くん、今キッドなんだよ!?快斗くんじゃないんだよ!?なのに「私の全て」!?!?待ってよそれどっちが言ってるなんのことなのっ!?!?


「ふはっ!」


うぇあー!ってなった私を見て、キッドは快斗くんがよくする笑顔で笑った。


「あなたはからかい甲斐がありますね!」
「……か、からかったんです?」


笑顔のキッドにちょっとムッとして言ったら、手袋越しに左頬をツンと人差し指で突かれた。


「あなたは百面相がお上手なので」


くくっと喉を鳴らすキッドに、さらにムムッとなった。


「さて、冗談はこのくらいにして、そろそろシンデレラは戻る時間なのでは?」


話しを変えたキッドにムーッとした顔のまま、トランペットケースを持って去ろうとした。


「犯行予告日、テレビ中継もするそうなんで見てくださいね」
「…テレビ中継は見ません。お気をつけて…!」
「ははっ!」


そう言って屋上から立ち去った私。
私はテレビ中継は見ない。
だって警視庁のヘリから見ることになるから。
それが快斗くんにとって良いことなのか悪いことなのかわからないけど…。
でも見ると決めたからにはしっかり見届けようかと思ってる。
そして犯行予告当日。


「あぁ、工藤くん。こっちだ」
「目暮警部!無理言ってすみません」
「その子が追加の同乗者かね?」
「はい。同級生なんですけど、例のコソ泥のファンらしいんで、今日捕まえるところを最前列で見せてやろうと思って」
「なるほど。…おや?君はどこかで…」
「ほら、アメリカ行きの機内で殺人事件があった時一緒に乗ってた奴ですよ」
「あー!あの爆睡していた子か!どうりで見たことがあるわけだ」


目暮警部に挨拶する前に、目暮警部は私のことを知っていた。
おっと、知らねーうちに有名になっちまったぜ、とか新一くんみたいなことは言わない。
あの数時間の爆睡を覚えられてるとか、私そんな寝方酷かった!?って方が気になって気になって…。


「犯行予告自体が深夜だから、高校生の君たちをつきあわせるのは忍びないが、」
「大丈夫です。なぁ?」
「は、はいっ!大丈夫です!」


話を振られて大きく頷いた。
でもそうなると時間までどうしようか?ってなった時、


「あ、それなんですけど今日のコソ泥の犯罪記録見せてもらえませんか?」
「犯罪記録?」
「えぇ。過去の犯罪傾向からある程度逃走経路とか絞れると思うので」


そう言う新一くんに、目暮警部は快く資料、保管室に案内してくれた。
門外不出とかの注意事項を言われた後で、じゃあ時間近くなったら呼びに来ると言って目暮警部は去っていった。
…ものだから、私もキッドの犯罪記録を調べなくちゃいけなくなってしまった…。


「この棚だな。あおい!オメーも資料見つけたら持ってきてくれ」


新一くんは目についたファイルを片手に、机のある方へと消えて行った。
残された私は、再び棚に目を移し怪盗1412号の犯罪記録があるファイルに手を伸ばした。


「…これ…」


たまたま手に取ったのは、今から8年前の怪盗キッドの犯罪記録…快斗くんのお父さんの、記録だった。
犯行に至るまでの経緯、狙われた宝石、逃走経路、警備配置とか、詳しく写真つきで書かれたそのファイルの最後に、当時のキッドの姿を捉えた防犯カメラの映像から切り取った1枚の写真が貼られていた。
…荒い画質でもわかる。
同じ衣装、同じ姿だけど、やっぱり違う。
快斗くんの方がもっと華奢で小柄だ(私から見たら2人とも十分大きいけど!)
これは見る人が見たらすぐに今の怪盗キッドが2代目って言うのがわかるんじゃないかな…。
それがバレてもいいことなのか悪いことなのかわからないけど、あまりバレない方がいいような気はする。
そう思った私は、快斗くんのお父さんの犯行が記録されているファイルをソッとしまい、自分の記憶の中にある今のキッドの記録が書かれているファイルを新一くんに持って行った。

.

prev next


bkm

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -