キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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怪盗vs高校生探偵


犯行現場、上から見るか下から見るか


それは帝丹も江古田も、文化祭が終わり、季節は秋から冬へ向かおうとする頃のことだった。

月が満ちる土曜の夜
零時の鐘と共に
天高き時計を頂きに参上する

キッドが江古田の時計台を盗む犯行予告を出したと各メディアが騒ぎ始めた。
…快斗くんはやっぱり、あの時計台を守ると決めたんだ。
それでいいと思う。
それが、いいんだと思う。


「そ、そう言えばさぁ、」
「あ?どーした?」


いつものように工藤家でのお夕飯の時のこと(それでもだいぶ回数は減った)
快斗くんが、怪盗キッドが、江古田の時計台を盗むと予告を出した、ということはですよ?


「新一くんは、怪盗キッドについてどう思う?」
「は?キッド?」


対戦相手が現れるってことじゃないですか!


「ほ、ほら!最近園子もきゃーきゃー言ってる大怪盗で、」
「ただのコソ泥だろ?」
「…まぁ…うん…泥棒なんだけど、さ…」
「泥棒に興味ねーし!」


バサッ!と新一くんはこの会話を切り捨てた。
…え、えぇー…。
確かにキッドは泥棒だよ?
泥棒なんだけどさ。
この人なんでキッド追うようになったんだっけ?


「なんだよいきなり。その泥棒がどうかしたのか?」
「え?どうか、って言うか、今度の満月の夜に犯行予告出したってテレビで言ってて、」
「犯行予告ぅ?愉快犯じゃねーか」


ゴニョゴニョと言い出した私に、新一くんは再びバサッと切り捨てた。


「ちっ、違うよ!キッドは愉快犯なんかじゃないって!」
「あ?」
「キッドはみんなのために江古田の時計台を守ろうとして、」
「は?江古田?なんで今江古田?」
「え?だから犯行予告が出てるって言ったじゃん」
「だから俺コソ泥に興味ねーから知らねーんだって。それで江古田がどーした?」


新一くんは、快斗くんのことがあってからか「江古田」という言葉にわりと敏感に反応する(気がする)
だからか今も片眉を上げて私を見下ろしてきた。


「…江古田のシンボルの時計台がテーマパークに移築するって話で、市民の間ではあの場所にあってこそだからって反対意見があるの」
「へー。それで?」
「そ、それで移築する前にキッドが時計台を盗むって言ってて、」
「そもそもさー」
「う、うん?」
「そのコソ泥が盗めるようなサイズなのか?シンボルの時計台って言われてるくらいなのに!」


盗めるわけねーだろ、みたいに言う新一くん。
…ほんとこの人どうやってキッドとライバルポジになったんだっけ!?


「キッドはビッグジュエルを狙う怪盗で、江古田の時計台の針についてる宝石を狙ってるって話だよ」
「あー、なるほど。それなら納得だ。時計台じゃなくて、その宝石狙いなわけね」


ふむふむと頷く新一くん。
…この人、ほんとに怪盗キッドについて知らないんだな…。


「それで?」
「え?」
「園子がきゃーきゃー言ってるみてぇに、オメーもソイツ応援してるってことか?」
「応援してる、っていうか…」


応援してるどころか、全力で協力する心積もりでいつもいるよ!
…なんて言えるわけないから、どう言ってみようもなかった。


「あおい」
「なに?」
「オメーほんっっっと!男見る目なさすぎじゃね?」


ヤレヤレと首を振る新一くんに、ちょっとだけいらっとした。


「別に見る目なくなんてないし、」
「あ、」
「え?」


あんなカッコよくて、高校生なのに大怪盗なんてやれる人他にいないよ!?
高校生探偵なんてそこら辺ゴロゴロいるけど高校生怪盗なんて他にいないよっ!?
なんて思ってた時に、新一くんがそう言えば、って感じに声を出した。


「そーいや、俺今度警視庁のヘリ乗せてもらう約束なんだけど、」


その言葉にピクッと身体が反応した。


「どーせなら現場視察兼ねて乗るかって言われてて、何のことかと思ったけど、もしかしてソレのことか?」
「ソレだ!」
「え?」
「ソレだよ!ヘリで現場視察!!」


そうか、そういう流れで新一くんはヘリで登場するんだ!


「キッドの現場に行くんだよ!乗ろう!警視庁のヘリに!!ね!?新一くん!!」
「…いやまだどこに連れてかれんのかわかんねーけど」
「生で見たら新一くんもキッドのこと『コソ泥』なんて言えなくなるんだから!」
「…は?」
「いくら新一くんでもキッドは捕まえられるわけないからね!」
「…」
「いいなー、キッドの犯行現場行けるのかー。私も園子誘って行こうかな…」
「…………あ、もしもし?目暮警部?」


あのシーンが再現されるなら、私はどこから観戦しようかって思っていたら、新一くんが突然電話をかけ始めた。


「先日のヘリの件なんですが…えぇ、視察を兼ねてって奴、あれ江古田ですよね?…あぁ、やっぱり。それなら1つお願いがありまして。…はい。ヘリに乗る人間1人追加して頂けませんか?」


淡々と電話で目暮警部と話す新一くん。
えぇ、とか、はい、とか、普段絶対私の前では言わない口調で話していた。


「ではそういうことで、よろしくお願いします。……って、ことでオメーを最前列に連れてってやるよ」
「……え?」
「ヘリの上から俺がそのコソ泥とっ捕まえてやるから、まー期待してろよ」
「えっ!?」


そう言って新一くんは食べた食器を片づけ始めた。
…えっ?私もしかしてヘリの上から快斗くんの犯行現場見るってこと?えっ!?待ってあれ確か新一くんに追いつめられてかなり苦戦したんじゃなかった!?しかも最後ちょっと…中森さんといい感じに終わる話じゃなかったっけ!?!?待って無理なんだけど、どうしたらいいの邪魔したらいいの?それはどっちの何を邪魔すればいいの!?
新一くんの投げた一言にうぇあー!!って頭が爆発しそうになりながら、帰り道についた。

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bkm

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