キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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文化祭!


お嬢様の値踏み


文化祭当日。
クラスの模擬店の準備も終わった頃、タイミングよくあおいちゃんから電話がかかってきた。
今回はあおいちゃんだけじゃなく、蘭ちゃん園子ちゃんがいる(特にナンパされクイーンの蘭ちゃんがいるってのは要注意だ)
変な奴らに声かけられないとも限らないから校門前まで迎えに行った。


「あおいちゃーん!いらっしゃい!」
「快斗くん!お迎えありがとう!」
「園子ちゃん、蘭ちゃんも、この間ぶり!」
「今日はよろしく!」
「こんにちは」


とりあえず無事合流できたし、校内入ってさぁどーする、ってなったら恐らく今日のメインイベントになるであろうことから、だよな。


「んじゃまぁとりあえず、俺のクラスがやってるとこ行く?」


俺があおいちゃんと手を繋いで歩いて、その後ろを園子ちゃんと蘭ちゃんが歩いていて。
後ろを振り返って、園子ちゃんに確認するように聞いた。


「行く行く。何やってんの?」
「ドリンク販売だよ。普通の奴からいわゆる『映える』グラデーションドリンクまで扱ってんの」
「へー!じゃあそれ買って写真撮ろーよ!」


園子ちゃんが頷いたことで、うちのクラスの模擬店の方へ歩いて行った。
ところで、


「快斗いたー!思ったより客足よくないから宣伝してきて!」


売上を心配した学級委員の青子が、俺のところにやってきた。
…の、瞬間、あおいちゃんが繋いだ手をスッと離そうとしたのがわかった。
やっぱそうだろうなー、とは思った。
もちろん離させねーけど。


「あ!あおいちゃんだ!こんにちは!…時計台のイベントの時ごめんね。青子たち、あおいちゃんが逸れたの気づかなくて…」


青子たちにはうっかり逸れちまったと伝えたことで、疑うことなくそう思っていた。
その事が意外だったのか、チラッとあおいちゃんがこっちを見たのがわかった。


「黒羽くんのクラスメイト?」


ほーら、きたきた。
今日のメインイベント、園子ちゃんの値踏み。
ここはもう流れに身を任せて俺は黙っていようと思った。


「ごめんねー、クラスの出し物手伝わなきゃいけないんだろーけど、黒羽くん嫁が好きすぎて私らだけで回るの反対みたいなのよねー」


だからお前は黙ってろ、って言う園子ちゃんの圧を感じたわけだが、


「えっ!?快斗そうなの!?」


青子には伝わるわけもなく。


「そーそー。わざっわざ校門前まで出迎えに来てくれたものね?」
「園子ちゃーん?そろそろ口閉じよっかー?」
「口閉じるも何も事実でしょ事実!」


このままだと暴走しかねないと思って止めに入ったけど、全く意に返さないあたりが園子ちゃんだ。


「でもさすがにそれじゃあ悪いから、グラデーションドリンク売ってるんでしょ?私らが買って、飲み歩きついでに宣伝するわね」
「ほんとに!?園子ちゃんありがとう!!」


しかも最後青子を丸め込みやがった…。
コイツ案外人心掌握うめーな。
将来鈴木財閥の経営にも食い込んだりしてな。
その後、焼きそばやら唐揚げを買いつつ体育館まで行ったところで、園子ちゃんがチラッと俺を見た後でトイレタイムと言ってきた。
…これ絶対呼び出しじゃねーか。


「じゃあさー、食い物もあるからそこら辺に座って待ってて。俺近くのトイレまで案内して来るから」
「うん、わかった」
「悪いわねー。あ!私の分も残しておいてよ?」
「わかってるー!」


頷く2人を残して園子ちゃんと校舎の中に入った。


「で?園子ちゃん的にはどーだった?」


途端にそう口にした俺に、園子ちゃんはニヤッと笑った。
…のも束の間、


「アレは駄目ね。あおいと合うわけないわ」


はっきりとそう言った。


「あおいはねー、鈍くさいのよ」
「うん?」
「間抜けなところがあって人より出来ることが限られてんの」
「…貶してる?」
「事実よ、事実。…だからあおいは、いわゆる『優等生』や『委員長』みたいな『デキる女』タイプが1番苦手なのよ」


そこで園子ちゃんが言わんとすることが伝わった。


「青子は典型的な学級委員タイプだな」
「でしょ?それでも蘭みたいに控えめなタイプなら上手くいくんだろーけど、アレは駄目。あおいが勝手に劣等感抱くタイプよ」


園子ちゃんの値踏みは、なかなか的を射ているように感じた。


「良く見てんね」
「あったり前でしょー。ただ遊びに来たわけじゃないんだからね」


胸を張って言う園子ちゃんを見て、自然とため息が出た。
合わないのはわかってはいた。
けどそうか、「勝手に劣等感を抱く」と言う言葉が酷くしっくりときた。
ならやっぱり、青子に近づけるのはアウトだとそう再認識した。


「あ、木村さん!木村さんて、他校に彼氏ほしーって言ってなかったっけ?」
「え?言ってた、けど…?」
「だよね。て、ことで園子ちゃん、この子中道に紹介してやって」
「「はっ?」」


たまたま通りかかった隣のクラスのおっぱいこと木村さん(顔はそこそこの普通よりややデカめおっぱい、一部の噂じゃすぐヤラせてくれるらしい子だからウィンウィンだろう)を捕まえて、園子ちゃんと強制的に連絡先を交換してもらった。


「これで中道との約束もチャラな」
「おっけー。黒羽くんが約束守る男だった、って伝えとくわ」


そんなこと言いながらあおいちゃんたちの方へ戻ったんだけど、


「紅子オメー何勝手にあおいちゃんに近づいてんだよ!」


江古田で近づいてほしくない人間ベスト5に入る小泉紅子に絡まれていた。


「ダイジョーブ?変なこと言われてねーか?」
「人を変質者みたいな言い方しないでくれる?…それより黒羽くんたら、随分変わった生き物を連れてるのね」
「俺の彼女だっ!」


この女、今あおいちゃんのこと生き物って言わなかったか!?


「彼女?………あなたの手に負えないと思うけど?」
「オメーには関係ねぇだろ!!コイツいるなら場所変えようぜ。こっち来て」


そう言って移動しようとしたら、いつの間にか紅子はあおいちゃんの隣に来ていて何か話してるように見えた。


「だーーっ!!!紅子!!近寄るんじゃねぇよっ!!あおいちゃん!こっち!!」


紅子は俺を怪盗キッドだと言う。
そんなんあおいちゃんに言われてみろ!
全くそんなこと思ってもいないのに、そんなこと言われたらこの子のことだ、真に受けて絶対怪しんでくるに違いない。
そんなことになってたまるか!


「ほんとに何もされなかったか!?変なこと言われたりとか、」
「何そんな慌ててんの?そもそも変なことってどんなこと言いそうなのよ?」


て言う思いから慌ててた俺に、園子ちゃんが冷静に絡んできた。


「いや、なんかアイツやたらと絡んできてさ、」
「へぇ?絡む?なんのために?」
「えっ、なんの!?し、知らねーよ、そんなの!」
「…あおいが問いつめないからって調子乗ってんじゃないでしょうね」
「何の話だよ!?」
「まだ他に女隠してんじゃないのかって聞いてんのよ!」
「浮気してるみたいな言い方してくんじゃねーよ!」
「だったら慌てる必要ないわよね?」
「べ、別に慌ててなんかいねーだろ!」
「怪しいわね…」


なんて会話を園子ちゃんと繰り広げていたら、あおいちゃんと蘭ちゃんが紅子について語りあっていた。


「あ、ううん…。なんか…綺麗で、不思議な人だったな、って」
「あー、わかる。ちょっと…ミステリアスって言うのかな?そんな感じな人だったよね」
「近寄んないで。マジで近寄んないで。アイツほんとに変わってっから」
「だいたい彼女誰なのよ」
「あー…紅子って言う、夏休み明けに転校してきたクラスメイトなんだけど、」


そこから紅子の話をしたわけだけど(キッドどーのに関することは丸っと省いて)まー、園子ちゃんからの疑いの目がうぜぇうぜぇ。
コイツはもう絶対うちの学校には呼ばねーと心に決めた日だった。

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bkm

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